誰にでもできる異世界救済 ~【トライ&エラー】と【ステータス】でニートの君も今日から勇者だ!~
4-22 吸血リラクゼーション
高速夜行馬車に揺られること、約10時間。
俺とガンドルフォさんは、タバトシンテ・ダンジョンにやってきた。
このあたりはエムゼタシンテ・ダンジョン周辺の集落よりも、はるかに栄えている。
「集落っていうより、街ですよね? トセマより栄えてません?」
「ダンジョン街なんて言い方もあるな」
とはいえ、行政区分的には集落になるのだそうな。
うむ、よくわからん。
馬車を降り、ガンドルフォさんにつれられて歩く。
そして1件のカフェに入ると、そこには見知った顔があった。
「やぁ、おふたりさんお元気そうで」
「よく来たな」
ギルド受付のフェデーレさんと、弓術教官のクロードさんだった。
「なんだ、フェデーレも来たのか」
「昨日の手紙取り次いだの、僕だからね。休みも被ったしちょうどいいと思って」
「人の手紙読むんじゃねぇよ」
「いや、読まれたくなかったら、封筒に入れなよ」
「ま、そりゃそうか」
この世界には、《収納》を利用した遠距離通信の技術がある。
残念ながら遠隔地との音声通話の技術はないみたいだが、収納庫を共有しておけば、お互い離れた場所にいても、《収納》を使って書面や荷物のやり取りができるから、問題ないんだろう。
各地のギルド支部や出張所間で、手紙やちょっとした荷物のやり取りが、遠隔地であっても即時できるのは非常に便利だ。
どうやら昨日ガンドルフォさんは、トセマにいるクロードさん宛てに、手紙を書いていたらしい。
取次の際、紙っペラに『明日の朝タバトシンテ・ダンジョンに集合』と書かれているのを見たフェデーレさんが、これに便乗した、ということだ。
「まぁ、人数が多少増えたところで問題はねぇがな。じゃ先生、お願いします!」
と、ガンドルフォさんがクロードさんにわざとらしく頭を下げる。
「うむ。ではショウスケ」
クロードさんが厳かに口を開く。
「はい」
「君はアレか、連続攻撃は得意なほうか?」
「いえ、基本的には単発です」
「ふむ。回復は早いほうか」
「できれば1日は置きたいところです。頑張れば半日ほどでもいけますが」
「よし、プランは決まった」
**********
4人が訪れたのは『吸血鬼の館』という、ゴシック調の建物だった。
これは、アレをナニする行為を、吸血に見立てての表現だろうか。
それともこのファンタジー世界のことだから、本物の吸血鬼がいるのだろうか。
なんだか流されるまま来てしまったけど、先に進んでもいいのかな……。
「ショウスケ、君はヴァンパイアとの経験はあるか?」
おおう、マジでいるのかヴァンパイア。
「いえ、ないです」
「だと思ったよ。せっかくここに来たのだから、単発で終わるのはもったいない。ここならそれとは関係なく楽しめるからな」
「は、はぁ」
ヴァンパイアとなにをするんだろう?
まぁ、せっかく異世界に来たわけだし、ヴァンパイアがいるってんなら、見るだけは見てみたいかも。
「ヴァンパイアかぁ、久しぶりだなぁ」
「へっへっへ。俺はここ来たら必ず寄るけどな!!」
フェデーレさんもガンドルフォさんも、なんか嬉しそうにしてんな。
クロードさんについてお店に入る。
なかは高級ホテルみたいな、洗練された空間だった。
「あら、クロードちゃんご無沙汰」
受付で迎えてくれたのは、黒いドレスを身にまとったお姉さんだった。
「うむ、久しぶりだな。今日は新人を連れてきた。かわいがってやってくれ」
と、クロードさんが俺の背中を軽く押す。
「ど、どうも」
「うふ、かわいい」
受付のお姉さんが、妖艶という表現が似合う笑みを向けてくれた。
長い犬歯が印象的だけど、彼女はヴァンパイアなんだろうか。
「エルバ、案内してあげて」
「はい」
「うわぁ!!?」
気がつけば俺のすぐ後ろに、女の人が立っていた。
特に警戒してた訳じゃないにしろ、〈気配察知〉や〈魔力感知〉に反応しないってのはすごい。
エルバさんは黒髪ストレートのおかっぱで、目は薄い青。
全身をマントで覆っているので、スタイルはわからないけど、少なくとも美人であることは確かだ。
身長は俺よりちょっと低いくらい。
「どうぞ」
俺はエルバさんに連れられて、個室に入った。
6畳くらいの部屋には、座り心地のよさそうなリクライニングシートと小さめのサイドテーブル、その上に水差しとグラスがふたつ以外、これといったものはないが、壁紙やら調度品やらがおしゃれなので、殺風景というよりはシンプルで洗練された空間、って感じだ。
「初めてですの?」
「ええ、まぁ」
「ふふ、緊張しなくてもだいじょうぶですよ。ではそちらへおかけになって」
「は、はい……」
とりあえずリクライニングシートに座る。
まだなにをされるかよくわからないので、とりあえず指示に従った。
もし俺にとってサービスが過剰なようなら、勇気を持ってお断りしよう。
「では、失礼致します」
そういうとエルバさんは、俺の首のあたりに顔を埋める。
なんじゃこりゃあああぁぁぁ……。
なんか頭がふわふわしてきた……。
あー、これ血ぃ吸われてんなぁ。
やっべぇ、チョー気持ちいい……。
…………………………。
……………………。
………………。
………。
「お客様、お時間ですよ」
なんかあのあと、30分くらい天国みたいな気分が続いて、意識を失ったみたい。
なんというか、純粋に気持ちよかっただけで、やましさみたいなものがないのは、俺にこの世界の常識がないからだろうか。
リラクゼーションの究極版、みたいな?
なんにせよ、貴重な体験だったよ。
「ありがとね。またおいで」
受付のお姉さんに見送られて、館を後にした。
「どうだった?」
「いや、ヤバかったっす」
「だろう?」
とドヤ顔のクロードさん。
とりあえず休憩がてらカフェで一服していると、遅れてガンドルフォさんとフェデーレさんがやってきた。
「しかし、ヴァンパイアに血を吸われるって、大丈夫なんですか? 隷属化とかそういうのは……」
ってことでいろいろ質問してみたんだが、ファンタジーものにありがちな、吸血行為で隷属化とか眷属化とかそういうのはないみたい。
ヴァンパイアも種族が違うだけのれっきとした人間なので、繁殖方法もヒトと同じ。
いまは人血の代用品があるので、わざわざヴァンパイアが血を吸う必要はないとのことだが、吸われるほうにニーズがあるので、こういう商売が成り立っているんだとか。
さて、吸血の原理だが、これは蚊が血を吸うのと同じで、痛みを和らげるのと血を固まらないようにするための体液をまず流し込んで、そのあと血を吸う。
蚊の場合は注入された体液に、アレルギー反応が起こって痒くなるんだが、ヴァンパイアの場合はそれが痒みじゃなく、快楽に繋がるってわけだね。
吸血行為で隷属云々って誤解も昔はあったんだが、これまた蚊と同じく、病気を媒介することがあったから。
『アイツに血を吸われてからこの子はおかしくなったんじゃあ!!』
みたいな?
病気については医学やらなんやらが発展して、いまじゃそんな心配は一切ないんだと。
もちろん快楽の虜になるってことはあるけど、それは吸血行為に限った話じゃないもんな。
このヴァンパイア風俗のいいところは、女性も等しく楽しめるところ。
特に性行為があるわけじゃないから、パートナーからの理解も得られやすいってのもある。
むしろカップルや夫婦で楽しむ人も、多いのだとか。
麻薬みたいな常習性もないから、安全かつ健全に快楽を得られるってわけで、やっぱり俺が感じたリラクゼーションの究極版っていう感覚に間違いはなかったようだ。
「よし、じゃあ次行くか」
頼もしいクロード先生とともに、俺たちは次なる目的地を目指した。
俺とガンドルフォさんは、タバトシンテ・ダンジョンにやってきた。
このあたりはエムゼタシンテ・ダンジョン周辺の集落よりも、はるかに栄えている。
「集落っていうより、街ですよね? トセマより栄えてません?」
「ダンジョン街なんて言い方もあるな」
とはいえ、行政区分的には集落になるのだそうな。
うむ、よくわからん。
馬車を降り、ガンドルフォさんにつれられて歩く。
そして1件のカフェに入ると、そこには見知った顔があった。
「やぁ、おふたりさんお元気そうで」
「よく来たな」
ギルド受付のフェデーレさんと、弓術教官のクロードさんだった。
「なんだ、フェデーレも来たのか」
「昨日の手紙取り次いだの、僕だからね。休みも被ったしちょうどいいと思って」
「人の手紙読むんじゃねぇよ」
「いや、読まれたくなかったら、封筒に入れなよ」
「ま、そりゃそうか」
この世界には、《収納》を利用した遠距離通信の技術がある。
残念ながら遠隔地との音声通話の技術はないみたいだが、収納庫を共有しておけば、お互い離れた場所にいても、《収納》を使って書面や荷物のやり取りができるから、問題ないんだろう。
各地のギルド支部や出張所間で、手紙やちょっとした荷物のやり取りが、遠隔地であっても即時できるのは非常に便利だ。
どうやら昨日ガンドルフォさんは、トセマにいるクロードさん宛てに、手紙を書いていたらしい。
取次の際、紙っペラに『明日の朝タバトシンテ・ダンジョンに集合』と書かれているのを見たフェデーレさんが、これに便乗した、ということだ。
「まぁ、人数が多少増えたところで問題はねぇがな。じゃ先生、お願いします!」
と、ガンドルフォさんがクロードさんにわざとらしく頭を下げる。
「うむ。ではショウスケ」
クロードさんが厳かに口を開く。
「はい」
「君はアレか、連続攻撃は得意なほうか?」
「いえ、基本的には単発です」
「ふむ。回復は早いほうか」
「できれば1日は置きたいところです。頑張れば半日ほどでもいけますが」
「よし、プランは決まった」
**********
4人が訪れたのは『吸血鬼の館』という、ゴシック調の建物だった。
これは、アレをナニする行為を、吸血に見立てての表現だろうか。
それともこのファンタジー世界のことだから、本物の吸血鬼がいるのだろうか。
なんだか流されるまま来てしまったけど、先に進んでもいいのかな……。
「ショウスケ、君はヴァンパイアとの経験はあるか?」
おおう、マジでいるのかヴァンパイア。
「いえ、ないです」
「だと思ったよ。せっかくここに来たのだから、単発で終わるのはもったいない。ここならそれとは関係なく楽しめるからな」
「は、はぁ」
ヴァンパイアとなにをするんだろう?
まぁ、せっかく異世界に来たわけだし、ヴァンパイアがいるってんなら、見るだけは見てみたいかも。
「ヴァンパイアかぁ、久しぶりだなぁ」
「へっへっへ。俺はここ来たら必ず寄るけどな!!」
フェデーレさんもガンドルフォさんも、なんか嬉しそうにしてんな。
クロードさんについてお店に入る。
なかは高級ホテルみたいな、洗練された空間だった。
「あら、クロードちゃんご無沙汰」
受付で迎えてくれたのは、黒いドレスを身にまとったお姉さんだった。
「うむ、久しぶりだな。今日は新人を連れてきた。かわいがってやってくれ」
と、クロードさんが俺の背中を軽く押す。
「ど、どうも」
「うふ、かわいい」
受付のお姉さんが、妖艶という表現が似合う笑みを向けてくれた。
長い犬歯が印象的だけど、彼女はヴァンパイアなんだろうか。
「エルバ、案内してあげて」
「はい」
「うわぁ!!?」
気がつけば俺のすぐ後ろに、女の人が立っていた。
特に警戒してた訳じゃないにしろ、〈気配察知〉や〈魔力感知〉に反応しないってのはすごい。
エルバさんは黒髪ストレートのおかっぱで、目は薄い青。
全身をマントで覆っているので、スタイルはわからないけど、少なくとも美人であることは確かだ。
身長は俺よりちょっと低いくらい。
「どうぞ」
俺はエルバさんに連れられて、個室に入った。
6畳くらいの部屋には、座り心地のよさそうなリクライニングシートと小さめのサイドテーブル、その上に水差しとグラスがふたつ以外、これといったものはないが、壁紙やら調度品やらがおしゃれなので、殺風景というよりはシンプルで洗練された空間、って感じだ。
「初めてですの?」
「ええ、まぁ」
「ふふ、緊張しなくてもだいじょうぶですよ。ではそちらへおかけになって」
「は、はい……」
とりあえずリクライニングシートに座る。
まだなにをされるかよくわからないので、とりあえず指示に従った。
もし俺にとってサービスが過剰なようなら、勇気を持ってお断りしよう。
「では、失礼致します」
そういうとエルバさんは、俺の首のあたりに顔を埋める。
なんじゃこりゃあああぁぁぁ……。
なんか頭がふわふわしてきた……。
あー、これ血ぃ吸われてんなぁ。
やっべぇ、チョー気持ちいい……。
…………………………。
……………………。
………………。
………。
「お客様、お時間ですよ」
なんかあのあと、30分くらい天国みたいな気分が続いて、意識を失ったみたい。
なんというか、純粋に気持ちよかっただけで、やましさみたいなものがないのは、俺にこの世界の常識がないからだろうか。
リラクゼーションの究極版、みたいな?
なんにせよ、貴重な体験だったよ。
「ありがとね。またおいで」
受付のお姉さんに見送られて、館を後にした。
「どうだった?」
「いや、ヤバかったっす」
「だろう?」
とドヤ顔のクロードさん。
とりあえず休憩がてらカフェで一服していると、遅れてガンドルフォさんとフェデーレさんがやってきた。
「しかし、ヴァンパイアに血を吸われるって、大丈夫なんですか? 隷属化とかそういうのは……」
ってことでいろいろ質問してみたんだが、ファンタジーものにありがちな、吸血行為で隷属化とか眷属化とかそういうのはないみたい。
ヴァンパイアも種族が違うだけのれっきとした人間なので、繁殖方法もヒトと同じ。
いまは人血の代用品があるので、わざわざヴァンパイアが血を吸う必要はないとのことだが、吸われるほうにニーズがあるので、こういう商売が成り立っているんだとか。
さて、吸血の原理だが、これは蚊が血を吸うのと同じで、痛みを和らげるのと血を固まらないようにするための体液をまず流し込んで、そのあと血を吸う。
蚊の場合は注入された体液に、アレルギー反応が起こって痒くなるんだが、ヴァンパイアの場合はそれが痒みじゃなく、快楽に繋がるってわけだね。
吸血行為で隷属云々って誤解も昔はあったんだが、これまた蚊と同じく、病気を媒介することがあったから。
『アイツに血を吸われてからこの子はおかしくなったんじゃあ!!』
みたいな?
病気については医学やらなんやらが発展して、いまじゃそんな心配は一切ないんだと。
もちろん快楽の虜になるってことはあるけど、それは吸血行為に限った話じゃないもんな。
このヴァンパイア風俗のいいところは、女性も等しく楽しめるところ。
特に性行為があるわけじゃないから、パートナーからの理解も得られやすいってのもある。
むしろカップルや夫婦で楽しむ人も、多いのだとか。
麻薬みたいな常習性もないから、安全かつ健全に快楽を得られるってわけで、やっぱり俺が感じたリラクゼーションの究極版っていう感覚に間違いはなかったようだ。
「よし、じゃあ次行くか」
頼もしいクロード先生とともに、俺たちは次なる目的地を目指した。
「ファンタジー」の人気作品
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