誰にでもできる異世界救済 ~【トライ&エラー】と【ステータス】でニートの君も今日から勇者だ!~

平尾正和/ほーち

4-13 新スキル習得

 9階層初回攻略時点でまだ昼前だったけど、換金やらなんやらを済ませた俺は昼食をとることにした。
 いつものように屋台で串焼きなんかを食べてたら、デルフィが来た。

「やあ、おつかれ」
「ふー……。さすがにちょっと疲れたわ」

 ちょっととは言ってるが、かなりお疲れのようだ。
 無理してないかい?

「俺は一応9階層まで攻略出来たけど、そっちは?」
「ふふん、じゃあ追いついたわね」

 おお、さすがは森の民。

「だいぶ無理したんじゃない? ちょっと休んどいたほうがよさそうに見えるけど」
「……私に先を越されるのが嫌なんでしょ?」
「いやいや、そこを競うつもりはないよ」

 正直、このまま無理して死なれでもしたら困るんだよな。
 ダンジョンは入るたびにスタート地点が更新されるから、下手すりゃ手遅れになるかも知れないし。
 え、デルフィが死んだら俺も死ぬのかって?
 愚問だね。
 なんにせよデルフィはちょっと抜けてるから、無理してコロッと死ぬとか、全然ありそうなんだよね。
 なので、ちょっと牽制させてもらおう。

「デルフィさぁ、10階層のマップって、買った?」
「マップ? そんなもの必要ないわよ」
「ふーん」

 俺はわざとらしい笑みを浮かべながら、懐から10階層のマップを取り出してデルフィに見せる。

「これ見ても同じことが言えるのかなぁ?」
「な、なによこれ?」

 マップをみて呆然とするデルフィ。

「ちなみに100G」
「高っ!」

 これだけハイペースで攻略を進めてるんだ。
 俺よりも稼ぎは少ないだろうから、こないだのローン返済に加え、ちょっと高い宿代なんかを考えると、懐事情は寂しいはずだ。
そこを突いてでも、休憩はとってもらうよ。

「あと4時間くらいで攻略出来ると思うんだよね。そしたらこのマップ譲ってもいいけど?」
「ホントに?」

 一瞬嬉しそうな顔をしたデルフィだったが、すぐに表情が曇る。

「……なに企んでんのよ?」

 別に企むとかじゃないんだけどな。

「忘れてるかもしれないけど、俺ら一応パーティーでしょ? メンバー同士協力するのは、その、当たり前……かなって」
「そ、それもそうね。そうよね、私たちパーティーだもんね」

 デルフィ、嬉しそうにしてるな。
 彼女ぼっちっぽかったし、相手はともかくパーティーを組めるってのが嬉しいんだろう。

「というわけで、デルフィはこのまま宿にいって休憩してね。終わったら知らせるから」
「わかったわ」
「あ、ちゃんと回復設備がある寝台を使うんだよ?」
「わ、わかってるわよ!」

 あー、こりゃケチろうとしてたな?
 ってことで、宿屋までデルフィを送り、回復機能つき寝台の受付を見届けてから、俺はダンジョンへ向かう。

 さて、ここでダンジョンへ潜る前に、ひとつやっておきたいことがある。

 いよいよアレをやる時がきた。
 今日の探索で、無事SPが目標値に達したんだよねー!!
 ってなわけで、以前からずっと狙ってたやつ、いくぜ。

《スキル習得》
〈多重詠唱〉
〈詠唱短縮〉

 これだよこれこれ!
 これがずっと欲しかったんだよ!。
 ほんとは〈多重詠唱〉だけのつもりだったんだけど、9階層攻略時点でSPが70,000を超えたから、ついでに〈詠唱短縮〉も覚えたよ。
 内訳は〈多重詠唱〉が50,000、〈詠唱短縮〉が20,000だった。

 なになに、〈多重詠唱〉はLv1だとふたつまで魔術を同時に発動できるんだな?
 〈詠唱短縮〉は詠唱時間を1割削減か。
 これは素晴らしいな。

 ちなみに〈多重詠唱〉のレベルアップには、SPが100,000必要らしい。
 これはレベル上げるたびに、倍々で増えていきそうだ。
 どうやら〈詠唱短縮〉も倍々パターンみたいで、次のLvアップには40,000必要みたいだ。
 他のスキルは習得にごっそりSPを要求されるんだけど、このふたつはそうじゃないから、特殊みたいだな。
 さすがは魔術関連スキルだ。

 とにかく、これで魔術の連続使用ができるようになったわけだ。
 詠唱後の待機を上手く使えば、《魔刃》と《魔槍》を4秒ちょいに1回撃てるわけだな。
 つーか《矢》系はほぼ連射に近い形で使えるのか。

「よーし、じゃあサクッとミノタウロスを倒しに行きますか!」

 最悪剣術で敵わない場合は、魔術でフルボッコにしてやればいいのさ。

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