誰にでもできる異世界救済 ~【トライ&エラー】と【ステータス】でニートの君も今日から勇者だ!~

平尾正和/ほーち

4-3 薔薇の戦士エリック・エイタス

 冒険者エリック・エイタス。
 50年ほど前に活躍した伝説的な冒険者だ。
 通称『薔薇の戦士エリック』
 なぜ彼が薔薇の戦士と呼ばれているかというと、彼が『薔薇の戦士連隊』というところに所属していたからだ。

 薔薇の戦士連隊
 創設者:エリック・エイタス
 連隊長:エリック・エイタス
 隊員:エリック・エイタス
 入隊資格:エリック・エイタスであること
 以上

 そう、このおっさん、アホなのだ。
 しかし冒険者としての腕前は超一流で、噂によると《水》と《風》の魔法・・を操り、さらに剣術にも長けた魔法剣士だったとのこと。
 だったら二つ名は魔法剣士とかでよさそうなもんだが、ある日突然、

「この度私は薔薇の戦士連隊を創設し、その連隊長に任命された。故に今後私のことは薔薇の戦士と呼ぶように!」

 と吹聴して回ったので定着したとか。

 なぜ薔薇なのかは不明。
 とくに薔薇愛好家というわけではなく、装備品や所持品に薔薇をモチーフにしたものはなかったという。

 数々のダンジョンを制覇し、難関依頼を達成していったエリックだが、10年前、ネスノラ州エイラン地区にある深淵のダンジョンへ潜ったのを最後に、行方がわからなくなった。
 深淵のダンジョンは未制圧のため管理が行き届いておらず、人の出入りを把握するのは困難なため、エリックがダンジョンを出たのかどうかすらわからないらしい。
 10年たっても音信がないため一応死亡扱いとなり、遺族の依頼により邸宅の調査に入ったというわけだ。

 この邸宅というのもまた厄介で、トセマから南へ1時間ほど歩いたところの草原にポツンと立っている。
 その辺りはステップハウンドという犬型の魔物が群れで生息しているため、素人がホイホイ訪ねることができないのだ。
 そんなわけで冒険者ギルドに依頼が回ってきた、と。

 俺がこの依頼を受けた要因の9割以上はデルフィーヌさんだが、魔法剣士エリックに興味があった、という部分もなくはない。

 今回の依頼は、遺品の中に価値のありそうなものがあったら引き取る、というもの。
 依頼のため、一時的に不動産屋所有の収納庫を使えるようにしてもらっており、そこへめぼしい物をどんどん《収納》して行く、という比較的簡単なお仕事。
 ただ、《収納》で保管できる最大容量は、収納庫の大きさに依存するが、ひとつあたりの収納物の大きさは、術者の魔力に依存する。
 武器防具とちょっとした小物や素材の出し入れで精一杯、という術者は意外と多い。
 少なくとも俺はいままで《収納》で出し入れできなかったものはないし、デルフィーヌさんも魔力には自信があるようで、大型家具でも《収納》できることがわかった不動産屋は、小躍りしてた。

 邸宅内にゴーストが出現するのも障害といえばそうなんだけど、俺にとってはご褒美だしな。
 ただ、ほとんどの敵を彼女が魔術を乱射して倒してしまうので、意気込んで習得した《聖纏剣》の存在意義が問われているような気はするなぁ。

**********

 扉を開けて部屋に入る。
 おそらく書斎と思われるこの部屋には、手紙の入った封筒が20通ほど散らばっていた。
 どれも封が開いていたので、試しに拾ってみた。

――連隊長、いよいよ明日です。
宛先:エリック・エイタス
差出人:エリック・エイタス

「……ねぇ、なんなの、この人?」

 ここまで来るとゴーストやこの廃墟の雰囲気にも慣れたのか、デルフィーヌさんも適当に手紙を読んでいた。
 呆れているということは、似たり寄ったりの内容なんだろう。

「ただのアホなんでしょうねぇ」

 とりあえず手紙類はひとまとめにして《収納》する。
 しかし、さすがSSランク冒険者だけあって、調度品や食器の類は高価そうなものばかりだった。
 大きい家具類もどんどん《収納》していく。

 大人数用のテーブルや柱時計になると、俺の魔力じゃ無理だったが、デルフィーヌさんはあっさり《収納》してしまった。

 うーん、この人の魔力量、侮りがたしだな。

 ただ、壁や床に建てつけてあるものはさすがに《収納》できないので、転写機で写真に納めておく。

 ひと通りめぼしいものを《収納》し、最後に書斎をひと回りした際、1通の封筒を見つけた。
 これまでのものと違い、宛先は「ここを訪れたものへ」となっている。
 封はされていないようなので、中身を出してみた。

――――――――
君がこの手紙を読んでいるということは、
私は既にこの世にいないということだろう。
――――――――
 なんだろう。
 このオッサン死を予感していたのだろうか?
 決死の覚悟で深淵のダンジョンに挑んだとかか?
 しかし、その文章のあとはなんの記載もない。
 ただ、手紙は3枚綴りになっているようで、2枚目を見ると続きがあった。

――――――――
という書き出しの手紙を一度は書いてみたいと思っていたが、
実際書き始めてみると、自分の死ぬ姿というのが想像できないのでやめた。
――――――――
 ……やっぱアホだな。
 一応3枚目もみとくか。

――――――――
追伸
この机の2段目の引き出しは二重底になっている。
そこに魔法剣に関する所見を記しておく。
欲しければ持っていけ。
――――――――

 イベントアイテム……キター!!
 いやいや、これめっちゃ重要じゃね?
 早速引き出しを開けると、手紙の通り二重底になっていた。
 そこから一冊の書物を取り出す。

「……いや、鍵かかってんじゃん」

 その書物は錠でロックされ、開くことができなかった。

 いろいろ探してみたけど結局鍵が見つからなかったので、机の上に置いて一緒に《収納》しておいた。

「……帰ろっか」
「そうね……」

 なんだかデルフィーヌさんもおつかれのようだ。
 俺たちはエリック・エイタスの邸宅を後にした。

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