誰にでもできる異世界救済 ~【トライ&エラー】と【ステータス】でニートの君も今日から勇者だ!~

平尾正和/ほーち

2-6 基礎魔道講座 前編

 これから基礎魔導講座に進むってことは、昨日のアレはなんだったんだ?

「あの、魔道講座って、昨日やったやつじゃ……?」
「魔力感知と魔力操作については、教わらなくてもできる人が多いのよね。だから、アレはおねーさんからの特別サービスよ、ウフフ」

 ハリエットさんはそう言うと、パチリとウィンクしてくれた。
 ちょいちょいエロいな、この人。
 ありがとうございます。

「基礎魔道講座っていうのは、魔法や魔術の原理を理解してもらうための、座学なのよ。まあ知らなくても魔術は使えるのだけど、知って理解しておいたほうがいいのよね。人によっては、魔術効果が上がることもあるようだし」
「なるほど。じゃあお願いします」
「そしたら、あのおじーちゃんについていってちょうだい」

 ハリエットさんが視線で示した先に、ヨボヨボのじいさんが立っていた。

「おい、用がすんだならさっさとどけ」

 不意に、うしろから声が掛かる。
 誰か並んでるのは気付いてたけど、いきなり威圧的な声かけられると、ちょっとビビるわ。

 振り向くと、そこには男が立っていた。
 なんか気難しそうな顔してんなぁ。
 鷲鼻が立派な、イケメンっちゃあイケメンだけど……目つきがなんかヤバい。

「はいはい、どうぞー」

 関わるとやばそうだから、さっさと退散しよう。

「ハリエットさん! 今日は貴女あなたに似合う花を持ってきました!!」
「あのね、ヘクターさん。そういうのはいいから、ダギジリの根とか持ってきて下さいな……」
「あのような無粋なもの、貴女には似合いませんよ!!」
「はぁ……」

 なんか大変そうだな、ハリエットさん。
 まああれだけ美人なら、ファンのひとりやふたり、いてもおかしくないか。
 ちょっと心配になって彼女を見ていると、俺の視線に気付いたのか、ハリエットさんはチラリとこちらを見たあと、苦笑を浮かべて肩をすくめた。
 よくあることだから気にするな、と言われたような気がして、俺が軽く会釈をすると、彼女も再び目の前の男に向き直ったので、俺もじいさんのほうを向いた。
とりあえず俺は、この無害そうなじいさんの世話になろう。

「よろしくのう、シュウスケくん。ふぉふぉふぉ」
「えーっと、ショウスケです」
「おお、そうかそうか、すまんのキョウスケくん」
「えーっと……」

 ま、いいか。

**********

 じいさんに連れられて入ったのは、20人くらいが入れる教室みたいなところだった。
 生徒は俺ひとりだったけど。
 じいさん、俺の名前は覚えないくせに、授業は結構分かりやすかった。

 この世界の魔法ってのは、ファンタジーものでよくあるように、いろんな属性が力の源になっている。
 その属性ってのが、まず基本四元素である《地》《水》《火》《風》。
 そして比較的新しく提言された空間を司る新属性の《空》。
 原初属性といわれる《光》と《闇》。
 そしてどれにも属さない《無》。
 この8属性からなる。

 で、この8属性の力をいろいろ組み合わせつつ、魔力を動力源としてなんらかの現象を起こすことを、魔法と言うんだそうな。
 さらに複数の属性を組み合わせた、複合属性ってのもある。

 たとえば《火》×《風》=《炎》とか《水》×《火》=《氷》、《地》×《水》×《風》=《雷》みたいな感じ。

 他はわかるけど、なんで《火》と《水》で《氷》? って思ったら、《火》には熱を操る力もあるんだとか。
 なるほどねー。

 ただ魔法ってのは習得するにせよ使用するにせよ、気が遠くなるような修行が必要らしい。
 そこで魔法効果をある程度限定させることで覚えやすく、使いやすくしたものを魔術という。
 これら魔法や魔術を総合して魔道というんだと。

「さて、いっきに詰め込んでもしんどいじゃろうし、このへんでいっちょう休憩としようかの、シュンスケくん」
「ショウスケです」

 そうだな、ちょっと早いかもしれないけど、休憩ってのは賛成だ。

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