同世界転生の最強貴族

夜谷 ソラ

第十四話 謁見と褒美

    ギルドの人から貰った転移石を使って、瞬時に街の前へと戻る。すると、先程まで上の空だった衛兵がこちらに気付いた。

「・・・・衛兵さん。ちょっと、通して貰えますか?」

「貴方様とその御二方は・・・・まさか!公爵家の御二方と、王女様では御座いませんか!おい!すぐに門を開けよ!」

    どうやら、俺らの事はかなり知られているらしい。まあ、最上位とも呼べる公爵家の者と王家の者だ。知らないはずはない。
    そして、一人の衛兵が開門の指示を出してから、一分もしない内に門が開く。

「では!お気を付けてください!!」

    そして、門の開いた先を見ると、見た事のある紋章の付いた馬車が数台止まっている。嫌な汗が背中を伝う。

「あの馬車ってもしかしなくても、俺らの親の馬車だよな・・・・」

    目の前に見えている紋章は、七本の聖剣に刺された龍の紋章の《ジルク公爵家》、国旗にもなっている、左から赤・黒・白のタペストリの紋章の《リムスニア国王家》、黒い太陽(日蝕をモチーフにした太陽)の描かれた紋章の《エッセル公爵家》である。
    こう見ると、実に壮観ではあるが、市民からしたら恐怖でしかない。と、ここで喋り始めたのはジルク父様だった。

「何で俺らがここに居るか、言わなくてもわかるよな?ゼクロイド」

    その他の馬車から降りて来ていた、女王様とエッセルさんと思われる人は、無言の圧力を掛けてきている。

「承知しております。ジルク父様」

「承知しておりますだと!?我が娘をよくも危険に晒してくれたな!?お前なんか死刑だ!!とっとと消えてしま───」

「黙りなさいエッセル!!」

    エッセルさんもビックリしているが、俺も実質かなり驚いた。一見温厚そうに見えるので、余計に怖い。
    と、まだ女王様に言い訳を言う。流石にこれは、往生際が悪いの一言しかない。

「ですが女王さ───」

「黙らなければ貴族位を剥奪ですよ!!」

「・・・」

『流石に国内権力ナンバー2の女王様の言葉には逆らえないか・・・・・』

    だが、あからさまにエッセルさんはこちらを睨んで来ている。

「今回の件については、冒険者ギルドの方から聞いております。そこで、貴方には王女と公爵令嬢を助けた褒美と、誘拐される原因などの心当たりなどの事で、王城に来て頂くよう私の夫・・・・つまり国王から受けております」

『まさか国王様から、直々にお呼び出しされる日が来るとは・・・・・。まあ、半分俺に原因があって悪いんだし、喜べる事では無いが』

「分かりました。では、一度家に戻って支度をしてからもう一度王城に参りま───」

「そのままで来なさい。これは女王命令です」

    流石に女王命令、と言う言葉には逆らえない。いや、逆らうことは出来るのだが、そうなれば後が怖い。

「分かりました・・・・」

    馬車に揺られて、約十五分。王城の巨大な門の前に来た。その圧巻の門に、思わず開いた口が塞がらない。

「クルフィン。貴方は国王にもうすぐ謁見に行くと伝えなさい」

「ははっ!女王様っ!!」

    クルフィンと呼ばれていた白髪の男性は、すぐに走り出す。そして、三秒もし無いうちに、帰って来た。

「時間系統の魔法ですか.....」

    鑑定しなくても、時間魔法だと言う事は分かった。多分だが、国王様の居る所までの道の時間を超加速させたのだろう。

「そうです。よく分かりましたね。・・・・・っと、国王様がお会いになるそうです」

「分かりました」

    その後クルフィンと呼ばれていた白髪の男性について行く。

    そして今現在、城の一階、謁見の間に来ている。どうやらまだ国王様は来ていないらしいが、周りには父様やエッセルさん達など、貴族の当主達がいる。

「国王様が入られます。忠義の姿勢になりなさい」

    忠義の姿勢、つまり右膝を地面に着き、頭を下げた状態の事だ。
    忠義の姿勢をしていると、隣を国王様が通り過ぎていく。

「表を上げよ。昨年からこの国の国王をやっている、リムスニア・フィフティーンセカンド=イノルガンである」

    顔を上げて、国王様の顔を見てみると、とても驚いた。国王とは思えない若さで、歳は20程に見える。そして、金髪に赤眼で美形と言う感じの男だった。
    もっと老けているかと思っていたので、正直かなり驚いている。

「私はジルク公爵家、次男のゼクロイド・ジルク・リムスニアでございます。以後お見知り置きを」

「はっはっはっ!本当にジルクさんに似て、強いし礼儀正しいな!」

「は、はぁー?」

『ジルクさんと呼ぶという事は、仲が良いのか?と言うよりも、意外にラフな性格なのかも知れない』

「まあ、そういう話はよしてだ・・・・・今回の四大幹部の一人とエンシェントドラゴンの討伐ご苦労だった。そして、ここに呼んだのは他でもない。褒美の事でだ」

「存じております。ですが国王様。私はエッセル公爵家の公爵令嬢に、第四王女であるエリス様も危ない目に遭わせてしまった大罪人。罰せられる事はあれど、褒美を与えられる事は無いと思いますが?」

    疑問に思った事を口にする。自分は二人ともを危ない目に遭わせてしまった大罪人なのだ。罰せられる事はあっても、褒美を与えられる事は何も無いのだ。

「お前に一つ言っておこう。実はこの中の誰かが、魔族に情報を渡していてな・・・・国も四大幹部の奴らに狙われて来ててんだよ(小声」

    急に近ずいてきて、耳元でコソコソと言われた。それもそのはずだ。この中にいるかもしれないのに皆に聞こえる声で言ったら、ただの馬鹿だ。
    そして、そんな事は置いておき、初耳だったので、かなり驚いている。だが、言われてみれば確かに狙われやすい国だろう。国家戦力はまあまあだが、資源が豊富なこの国の事だ。魔族からだろうと、人間からだろうと、狙われるものは狙われるだろう。
    と、そんな風に考えていると、やはりこういう場合は褒美をなにか適当に貰うことにしようと思った。

「なるほど・・・・そういう訳で私に褒美を渡したいという事ですか。ですが、一つ伺ってもよろしいしょうか?」

「良いぞ。言ってみろ」

「褒美を貰う事に関しては願ったり叶ったりですが、流石に何か罰を与えて頂かなくてはなりませんが、それはどのようにお考えなのですか?」

    その質問に、国王様は少し悩んでいるようだ。それも、褒美を与えると言っているのに、罰のことについて聞かれたのだ。困るのは当然だろう。

「じゃあ分かった。渡すはずだった優良な領土を、ある問題だらけの領土にしよう。これで、お前への負担が大きくなるはずだ。支援もしない物とする。これで良いな?」

「分かりました。国王様」

「それでは褒美の話だ」

『褒美の話とは何だ?領土だけが褒美なのでは無いのか?』

    そんな事を思っていると、まるで心を読んだかのように、ニマリと笑顔を零す。

「何の事だろう?と思っただろう。まあ、説明をすると今回の事は、国の存亡に関わっている事だ。だからお前には感謝してもしきれないほどなんだ。だから他にも褒美を与えようと思っておる」

『この国王様ってもしかしなくてもエスパーか何かなのか?』

「確かにその理由なら分からないこともありませんね・・・・多分(小声」

『きっと聞こえていないだろうが、多分と言ってしまったな・・・・。大丈夫だろ。きっと』

「多分と言うのが聞こえたが、まあ良い。今回の褒美は、金貨3枚と次男だが、独立した貴族位を持つ事を許可し、領地を与える物とする。なお、独立した後の貴族位は、伯爵からだ」

『フラグ回収までおよそ3秒・・・・早すぎるだろ』

    まあ、あまり気にしていない様子なので、こちらも気にしないでおくことにした。それと、御礼の言葉を言っておく。

「はっ!有り難き幸せ!」


──こうして、深淵の魔染域での死闘については、もう話題に上がる事は無くなることとなった。だが、この時はまだゼクロイドは知らなかった。本当の恐怖はこれからだということを。



◇?????視点◇

「それで?お前らはなぜ始末をしないで帰って来たのだ?それに、ロデリウスはどうした?答えよ。フローラ」

「フィンガル様。ロデリウスは始末する対象に殺されてしまいました・・・・。その為、戦うと、無駄に死んでしまうと思ったので、帰って参りました。流石にあの化け物には、フィンガル様以外は勝てないかと思われます」

魔王 フィンガル
「ふむ・・・・お前らはもう休め。ロデリウスが亡き今、お前らは前よりも数倍重要な戦力だ。だから早く休んで回復させておけ」

「「「はっ!!!」」」

    元気の良い返事を返して、自室に戻ってった。

「はー・・・・そろそろ俺が×××の×を演じて、機会を伺うのも限界か・・・・・。まあ良い。来月の十五日。紅い月が登る時に彼奴を殺す。で無ければ、邪神様の復活の儀式を行う前に、俺らが滅んでしまう」


───こうして、誰も居ない所で、イノルガンの生死を決めるものが決定していくのだった。

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