同世界転生の最強貴族

夜谷 ソラ

第三話 森の脅威Ⅰ

    ギルドカードを使い、王都の門を潜り抜けてレノリアの森へ続く、整備された街道を歩く。今日はかなり晴れており、とても暖かい日なので、そよ風がとても心地良い。

    歩くこと15分。目の前には広大な森が広がっている。森の中を見ると、薄暗く、あまり入りたくない雰囲気をかもし出している。
    これが、レノリアの森と呼ばれる森だ。別名『永遠とわの森』とも呼ばれる。そう呼ばれる理由は、あまりにも広大過ぎて、少しでも奥に踏み入れば、永遠に彷徨さまよい続けなければならない程だからだ。
    そんな、恐ろしいとされている森の中を一際の畏怖い ふを抱かず、堂々と森の中を歩く。途中で、魔物(スライムやゴブリン等)が出たりしたが、そこまで苦ではならなかった。

「ここらでひと休みしようかな・・・・・だがどうするか・・・。そうだな。土魔法で空間を作るか」

    魔法は、体内魔力を変換する為に詠唱が必要なのだが、土魔法はあまり詠唱しないので、どんな詠唱かは忘れてしまった。だが、昨日勉強し直していたので、なんとか思い出した。

「『我が土の魔力に応じて、我を囲う物へと変わりたまえ。"土壁硬間アースルーム"』」

    詠唱が終わると同時に土が隆起して、土の部屋が出来た。魔力操作は得意なので、壁にはでこぼこがひとつも見受けられない。
    その壁を試しに殴ってみるが、あまりの硬さに自分の手がとても痛い。ヒリヒリと痛む手を水属性魔法で冷やす。

「『我が水の魔力に応じて、我を冷やす物へと変わりたまえ。"冷流水れいりゅうすい"』」

    何を馬鹿な事をしているのか、とも思うかもしれないが、実質かなり痛いので仕方ないだろう。

「痛たたた・・・・・取り敢えずこの中に居れば安心だし、仮眠でも取ろうかな」

    そう喋ってまぶたを閉じる。すると、段々と意識が無くなっていく。
    ちなみに、この魔法が解けない理由は、詠唱の媒体ばいたいとして、土属性魔法のルーンの書いてある魔石、つまりは魔力があれば何度でも詠唱無しに魔法を撃てるようになった魔石を使っているので、解けることは決してない。細かく言うなら、術者の魔力が切れるか、術者が自分の意思で停止させるかでしか止められなくなっているからだ。

    そして、暫く眠っていると、何かの気配を察知した。それも、危険だと判断できる程の魔力量を持ったモンスターだ。
    更に精神を研ぎ澄ますと、そのモンスターの姿が完全に見えてきた。

「あれ?ここは森に入ってすぐの筈なんだけど・・・・・なんでフォレストウルフが居るんだ?しかも・・・・少なくとも20匹は居るな・・・・・」

    その異変に気付いたので、気配察知を最大にして見てみる。すると、フォレストウルフのいる方角に、何かが走っているのを見つけた。
    もう少しだけ集中する。すると、フォレストウルフの方角に走っている集団は、上位小鬼ハイゴブリン小鬼ゴブリンの集団だった。

「これは・・・・・ヤバくないか?このままだとフォレストウルフが街道に出て、大騒ぎになりそうだな・・・・止めに行くか!『我が深淵の魔力に応じて、我が体の糧とせよ!"身体強化ディベルアーマー" 』」

    強化魔法である、身体強化ディベルアーマーを使い、走る速さを格段に上げ、更に空気に対する抵抗を少なくする。これは、魔力を使って細かく設定した物だ。

    そして、しばらく走っていると、ようやく集団が見えてきた。集団の攻撃対象を俺に変更する為に、攻撃魔法を唱える事にした。

「『我が風の魔力に応じて、目の前の物を切り裂く刃と成れ!"大気風刃ウィンドカッター" 』」

    魔法陣を空中に大量に展開する。そして、その魔法陣から出た透明な風のやいば小鬼ゴブリンの集団に襲い掛かる。勿論小鬼ゴブリンは為す術無く、奇声を上げて切られていく。

「ギエェェェエエ!!!」

「ウォォーオオ!!」

「ギャャァァァア!!」

「キシェェェエエ!」

    小鬼ゴブリン達は、奇声を上げてそのまま倒れて行く。その為悲鳴は止んだが、木の裏に隠れていたと思われる小鬼ゴブリンが出て来た。

    今度は渡されたショートソードを使い、首を跳ね飛ばす。小鬼ゴブリンはもう倒し終えた。次は上位小鬼ハイゴブリン達の方へと走る。だが、予想外の事が起きた。

「ぐあっっ!!!」

    完全に油断をしていた。気付いたら後ろに回られていて、巨大な棍棒で背中を殴られた。
    ヤバい。殴られた所・・・・脊髄せきずいに衝撃が走った事で起き上がれない。その為、声も発する事が出来ない。

『ヤバい・・・・このままでは死んでしまう・・・』

    そんな時だった。最後の力を振り絞って気配察知を発動すると、もうすぐ近くまで来ている人間が見えた。

『この人が最後の望みだ・・・・』

「そこの少年!今助ける!」

    誰かの声が聞こえた。助けると言う言葉が聞こえた為、安心した。そして、そこで意識を失ってしまった。

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