ユニークチート【恋の力】は確かに強いけど波乱を巻き起こす!?
二人の思い
(どうしてこうなるの!どうして!)
ヘレナは迷宮内を全力で駆け抜けながら涙を流す。
(私達が何をしたの?ただ幸せに暮らしていたいだけなのに!)
ヘレナの願いは一つ。平和に皆で幸せに暮らしていたいだけだった。
なのに、ヘレナには不幸ばかりが訪れる。
七年前の出来事、マリアの右腕を失い、挙句に今もアルフがサイクロプスに襲われて、戦っている。
だが、不幸は止まらなかった。
「......ふざけないでよ!あと少しなのに!」
それはヘレナが二階層まで上がった事によって、またしても魔物が現れたのだ。
ワンラビットが一体。普通なら倒して進むところだが、ヘレナは戦闘をしたことはない。更に武器も持っていない。
ヘレナが取れる選択は走って逃げる事しか出来ない。
全力で走るが、それでも背後からワンラビットが付いてくる。
我慢できなくなったヘレナは自分が先程残したプチ肉を一つワンラビットに投げつける。
だが、それがワンラビットの怒りを覚えたのか、ワンラビットは瞬発力を活かし、ヘレナの腕に角が当たる。
「――――っつ!」
だが、日頃痛みを分かっていないヘレナには相当な激痛のようだ。
しかし、悲しい涙を流していたが、次は痛みで涙を流しそうになるのを歯を食いしばって耐えて走る。
(だから冒険者なんて辞めろって言ったのに)
こんな時でもヘレナはアルフの心配をしている。
ヘレナがアルフに対し、日頃言っている冒険者を辞めろという発言。そこにはヘレナの大事な思いがあった。
どうしてヘレナが冒険者に関して詳しかったのか。それはアルフが冒険者をすると言った時に勉強していたからだ。
アルフが命を賭けてまでやるべき事なのか?それを判断する為に勉強した。それも踏まえて、ヘレナはアルフに対して冒険者を辞めろと言ったのだ。
(私はアルフに守って貰わなくてもよかった。だけどそれが本人からしてみれば無理な話なのかもしれない。だから私は強くは言えなかった。だけどそれでもただ、私は平和な日常が欲しかった)
ヘレナは心の中で自分の願望を吐露する。
そうする事で、ここを乗り越えれば自分が望んでいる物が待っていると信じているから。
だが、ヘレナの体はボロボロだった。
何とかワンラビットの攻撃を致命傷を避けているが、それでも腕や足からは血が出ている。
今は二階層の半分といった所だろう。これからワンラビットから逃げることは不可能と言ってもいい。
そんな中乗り切るとしたら、
「誰かいませんか!誰か!助けてください!」
ヘレナはもう希望に賭けることにした。
誰か来ることを願って。だが、それは難しいだろう。ここは初心者迷宮だ。例外が無い限り、絶対に来ないと断言出来るだろう。
「あっ」
ヘレナは地面にある石に躓いて、コケる。
「.....ごめん、アル。私無理だった」
ヘレナの顔に一粒の涙が浮かぶ。そして次に何が起きるのか、それから目を逸らすかの様に、目を瞑るが、ヘレナには何も起こらなかった。
ヘレナが恐る恐ると言った形で目を開けると、
「大丈夫?」
そこには見知らぬ女性が三人、ヘレナの前に立っていた。
その内の大剣を両手に二刀を持っている女性がヘレナに手を差し出す。
「君が先程叫んでたんだよね?大丈夫?」
どうしてここに人がいるのかヘレナにも疑問が浮かぶだろうが、ヘレナはそんな事はどうでもよかった。
「助けてください!仲間が、家族が戦ってるんです!」
ヘレナは自分が助かった事よりも、アルフの事を伝える。ヘレナの役目は助っ人を呼ぶことだ。それを全うしようとしているのだ。
「戦ってるってここ『初心者迷宮』だし、大丈夫じゃないの?」
ヘレナに手を差し伸ばした女性は背後にいる二人に確認を取るが、
「確かにそうね。ここ『初心者迷宮』。だけど無事でいられるのは私達だからじゃない?他の人は違うんじゃないの?」
「そうですね。他の人にはきついのかもしれません」
三人はどうするか、考えているようだが、ヘレナは手を差し伸ばしてくれた女性にしがみつく。
「サイクロプスがいるんです!」
ヘレナの目から大量の涙が流れていく。今もアルフが戦っているから焦っているのだ。もしもの事を考えると涙が止まらないのだろう。
だが、三人は驚愕の表情を浮かべる。
「ちょ、ちょっと、サイクロプスってこんな所じゃ出ないのよ?ゴブリンキングと間違ったんじゃない?」
一人の女性が疑問に思うのも仕方ないが、
「違います!間違える訳がない!本当にいたんです。......助けてください!.....私は....もう家族を......失いたくない!もう二度と......大切な人を失う怖さを知りたくない!」
ヘレナは助けてくれた女性に懇願する。
その女性はヘレナの手に自分の手を重ねる。
「任せて!私が助けてあげる!」
助けてくれ女性は笑顔を見せて、残り二人は溜め息をつきながらも反対はしないようだ。
(待っててアル。もう少しで行くから)
ヘレナは未だ戦っているアルフの生存を願いながら、三人の女性について行く。
一方その頃アルフとサイクロプスの戦いは激戦を繰り広げる。
アルフは片手剣を用いて、サイクロプスの腕を斬る。
だが、サイクロプスの皮膚は固く、冒険者支援ギルドの支給品である剣では斬ることは出来なかった。
(問題は剣だ。これじゃあ斬れない)
アルフは万事休すであった。
剣も通らない。そんな状況でどう倒すのか。
だが、アルフは攻めることを止めない。何度もギリギリでサイクロプスの攻撃を避け、攻める。
しかし、戦いではアルフがサイクロプスよりも優位に攻めることが出来ていた。
「ウオオオ!」
だが、その状況が変わる。
サイクロプスが自分の攻撃が当たらないストレスか、アルフに斬られながらも怯まず攻めてきた。
アルフがサイクロプスの横から斬った所で、サイクロプスは一回転するように棍棒を振り回す。
その攻撃が予測出来ていなかった、アルフに避ける術はなかった。
「―――っつ!」
アルフがとった手段は腕に付いている防具を盾に後ろに少し下がることしか出来なかった。
だが、サイクロプスの攻撃を食らい、壁まで吹き飛ばされる。
アルフがとった行動は受け身というものだが、本人は無自覚でやっているようだ。
だが、受け身をもってしても、ダメージはある。
更に、壁に頭を叩きつけられ、血が大量に出て、ポーションもその威力で瓶が壊れ、中身が出てしまっている。
絶対絶命。その言葉が似合う状況だ。
(強いな。まだまだ、俺が勝てる相手じゃない)
諦めの言葉を心の中で吐露してしまうアルフであったが、目は死んでいない。
(だからこそ今勝てないと無理だよな。限界を超えるなんて)
アルフがそう思うのは、冒険者支援ギルドでの出来事だ。
二時間前。
アルフはヘレナを外で待たせ、冒険者支援ギルドの中に向かう。
今日は、昨日しなかったステータスを更新する事に決めたらしい。
「ケイシ―さん。ステータス更新しに来ました」
「了解です。それじゃあ水晶に手を当ててね」
ケイシーに言われた通りにアルフは水晶に手を当てる。一瞬、眩く光ると同時にケイシーの腰辺りから一枚の紙が落ちる。
ケイシーがステータスの紙を見て、唖然とし、
「はああああ!?」
冒険者支援ギルド全体に聞こえるぐらいの大声をあげる。
「どうしたんですか!?」
「ちょっと来て!」
アルフはまたしても、中級冒険者以上が愛用している個室へと連れて行かれる。
「.....あの、本当に場違いな気がするんですけど」
アルフは個室に委縮しているが、
「アルフ君。座ってこれを見て」
ケイシーはアルフに一枚の紙を見せる。
「......これ本当ですか?」
「本当よ」
そこに書かれていたのは、
Lv.10 名前 アルフレッド
年齢 15
種族 人族
力 6000 A
敏捷 6870 A
器用 4750 B
知力 6100 A
耐久 1800 C
運 8000 A
魔力 5 D
こんな形で書かれている。
「能力は無いんですよね?」
「え、うん、無よ!」
ケイシーは若干戸惑いながらもきちんと否定する。
(ケイシ―さんが言うんならあってるんだろうけど、どうしてこんなにも急に上がってるんだ?前までレベル四で困っていたのは馬鹿らしく見えてくるぞ)
アルフの急成長には【最強願望】の能力が、関わっていた。
【最強願望】には自分より強い敵と戦う時、強くなることが出来る。だが、それだけでなく成長も促すのだ。
だが、ここでアルフの成長は一旦止まる。
「これって限界突破しないとレベル上がらないんですよね?」
「そうね。大体限界突破出来る時は自分より強い敵と戦って勝つことで上がる事が多いね」
レベル10ごとに、成長が止まり、更なる成長をするには、限界突破をするしかないのだ。
即ち、普段の成長とは比べ物にならない成長をするしかない。
「ただ、こんなにも成長出来て嬉しいのも分かるけど、無理だけはしないでね?」
ケイシーは心配そうに言う。
「安心してください。絶対に無茶はしませんから」
アルフはそう笑顔で言い、外で待っているヘレナの元に向かった。
現在。
アルフが、今日は絶好調と言ったのは、迷宮に潜る事だけではなかった。自分の急成長も関わっていたのだ。
(やるしかない)
アルフは自分の手に拳を作り、覚悟を決める。
「サイクロプス。お前には恨みもあるけど、感謝するよ。ようやく気付けた」
喋っても答えてはくれないと分かっていながら、アルフは言葉を紡ぐ。
「俺は弱い。【英雄アレン】みたいに強くも無い。今まで適当に冒険者をやってた。だけどもうそんな事は辞める。ここから始める」
己の弱さを認め、己の愚かさを認める。
果たしてそんなことがどれだけの人が出来るだろうか。
アルフは今まで適当に冒険者をしてきた。どんな敵も何とかなる。前衛、後衛も関係ない。ただ、適当にやっていた。
だが、最近はどうだろうか?あまり得意でもない本を見て勉強し、迷宮に行くにもしっかり準備をしていた。
【最強願望】。その能力によってアルフは身体は成長しても、心は変化はしているかもしれないが、それ程成長はしていなかった。
だが、今変わろうとしている。
今、アルフの心は更なる成長を見せる。
「だから、カッコ悪くても、情けなくてもお前には絶対に勝つ」
勝つつもり、ではなく絶対に勝つ。アルフはそう宣言し、片手剣を構える。
今、本当の意味でアルフは冒険者になり、勝負は本番を迎える。
ヘレナは迷宮内を全力で駆け抜けながら涙を流す。
(私達が何をしたの?ただ幸せに暮らしていたいだけなのに!)
ヘレナの願いは一つ。平和に皆で幸せに暮らしていたいだけだった。
なのに、ヘレナには不幸ばかりが訪れる。
七年前の出来事、マリアの右腕を失い、挙句に今もアルフがサイクロプスに襲われて、戦っている。
だが、不幸は止まらなかった。
「......ふざけないでよ!あと少しなのに!」
それはヘレナが二階層まで上がった事によって、またしても魔物が現れたのだ。
ワンラビットが一体。普通なら倒して進むところだが、ヘレナは戦闘をしたことはない。更に武器も持っていない。
ヘレナが取れる選択は走って逃げる事しか出来ない。
全力で走るが、それでも背後からワンラビットが付いてくる。
我慢できなくなったヘレナは自分が先程残したプチ肉を一つワンラビットに投げつける。
だが、それがワンラビットの怒りを覚えたのか、ワンラビットは瞬発力を活かし、ヘレナの腕に角が当たる。
「――――っつ!」
だが、日頃痛みを分かっていないヘレナには相当な激痛のようだ。
しかし、悲しい涙を流していたが、次は痛みで涙を流しそうになるのを歯を食いしばって耐えて走る。
(だから冒険者なんて辞めろって言ったのに)
こんな時でもヘレナはアルフの心配をしている。
ヘレナがアルフに対し、日頃言っている冒険者を辞めろという発言。そこにはヘレナの大事な思いがあった。
どうしてヘレナが冒険者に関して詳しかったのか。それはアルフが冒険者をすると言った時に勉強していたからだ。
アルフが命を賭けてまでやるべき事なのか?それを判断する為に勉強した。それも踏まえて、ヘレナはアルフに対して冒険者を辞めろと言ったのだ。
(私はアルフに守って貰わなくてもよかった。だけどそれが本人からしてみれば無理な話なのかもしれない。だから私は強くは言えなかった。だけどそれでもただ、私は平和な日常が欲しかった)
ヘレナは心の中で自分の願望を吐露する。
そうする事で、ここを乗り越えれば自分が望んでいる物が待っていると信じているから。
だが、ヘレナの体はボロボロだった。
何とかワンラビットの攻撃を致命傷を避けているが、それでも腕や足からは血が出ている。
今は二階層の半分といった所だろう。これからワンラビットから逃げることは不可能と言ってもいい。
そんな中乗り切るとしたら、
「誰かいませんか!誰か!助けてください!」
ヘレナはもう希望に賭けることにした。
誰か来ることを願って。だが、それは難しいだろう。ここは初心者迷宮だ。例外が無い限り、絶対に来ないと断言出来るだろう。
「あっ」
ヘレナは地面にある石に躓いて、コケる。
「.....ごめん、アル。私無理だった」
ヘレナの顔に一粒の涙が浮かぶ。そして次に何が起きるのか、それから目を逸らすかの様に、目を瞑るが、ヘレナには何も起こらなかった。
ヘレナが恐る恐ると言った形で目を開けると、
「大丈夫?」
そこには見知らぬ女性が三人、ヘレナの前に立っていた。
その内の大剣を両手に二刀を持っている女性がヘレナに手を差し出す。
「君が先程叫んでたんだよね?大丈夫?」
どうしてここに人がいるのかヘレナにも疑問が浮かぶだろうが、ヘレナはそんな事はどうでもよかった。
「助けてください!仲間が、家族が戦ってるんです!」
ヘレナは自分が助かった事よりも、アルフの事を伝える。ヘレナの役目は助っ人を呼ぶことだ。それを全うしようとしているのだ。
「戦ってるってここ『初心者迷宮』だし、大丈夫じゃないの?」
ヘレナに手を差し伸ばした女性は背後にいる二人に確認を取るが、
「確かにそうね。ここ『初心者迷宮』。だけど無事でいられるのは私達だからじゃない?他の人は違うんじゃないの?」
「そうですね。他の人にはきついのかもしれません」
三人はどうするか、考えているようだが、ヘレナは手を差し伸ばしてくれた女性にしがみつく。
「サイクロプスがいるんです!」
ヘレナの目から大量の涙が流れていく。今もアルフが戦っているから焦っているのだ。もしもの事を考えると涙が止まらないのだろう。
だが、三人は驚愕の表情を浮かべる。
「ちょ、ちょっと、サイクロプスってこんな所じゃ出ないのよ?ゴブリンキングと間違ったんじゃない?」
一人の女性が疑問に思うのも仕方ないが、
「違います!間違える訳がない!本当にいたんです。......助けてください!.....私は....もう家族を......失いたくない!もう二度と......大切な人を失う怖さを知りたくない!」
ヘレナは助けてくれた女性に懇願する。
その女性はヘレナの手に自分の手を重ねる。
「任せて!私が助けてあげる!」
助けてくれ女性は笑顔を見せて、残り二人は溜め息をつきながらも反対はしないようだ。
(待っててアル。もう少しで行くから)
ヘレナは未だ戦っているアルフの生存を願いながら、三人の女性について行く。
一方その頃アルフとサイクロプスの戦いは激戦を繰り広げる。
アルフは片手剣を用いて、サイクロプスの腕を斬る。
だが、サイクロプスの皮膚は固く、冒険者支援ギルドの支給品である剣では斬ることは出来なかった。
(問題は剣だ。これじゃあ斬れない)
アルフは万事休すであった。
剣も通らない。そんな状況でどう倒すのか。
だが、アルフは攻めることを止めない。何度もギリギリでサイクロプスの攻撃を避け、攻める。
しかし、戦いではアルフがサイクロプスよりも優位に攻めることが出来ていた。
「ウオオオ!」
だが、その状況が変わる。
サイクロプスが自分の攻撃が当たらないストレスか、アルフに斬られながらも怯まず攻めてきた。
アルフがサイクロプスの横から斬った所で、サイクロプスは一回転するように棍棒を振り回す。
その攻撃が予測出来ていなかった、アルフに避ける術はなかった。
「―――っつ!」
アルフがとった手段は腕に付いている防具を盾に後ろに少し下がることしか出来なかった。
だが、サイクロプスの攻撃を食らい、壁まで吹き飛ばされる。
アルフがとった行動は受け身というものだが、本人は無自覚でやっているようだ。
だが、受け身をもってしても、ダメージはある。
更に、壁に頭を叩きつけられ、血が大量に出て、ポーションもその威力で瓶が壊れ、中身が出てしまっている。
絶対絶命。その言葉が似合う状況だ。
(強いな。まだまだ、俺が勝てる相手じゃない)
諦めの言葉を心の中で吐露してしまうアルフであったが、目は死んでいない。
(だからこそ今勝てないと無理だよな。限界を超えるなんて)
アルフがそう思うのは、冒険者支援ギルドでの出来事だ。
二時間前。
アルフはヘレナを外で待たせ、冒険者支援ギルドの中に向かう。
今日は、昨日しなかったステータスを更新する事に決めたらしい。
「ケイシ―さん。ステータス更新しに来ました」
「了解です。それじゃあ水晶に手を当ててね」
ケイシーに言われた通りにアルフは水晶に手を当てる。一瞬、眩く光ると同時にケイシーの腰辺りから一枚の紙が落ちる。
ケイシーがステータスの紙を見て、唖然とし、
「はああああ!?」
冒険者支援ギルド全体に聞こえるぐらいの大声をあげる。
「どうしたんですか!?」
「ちょっと来て!」
アルフはまたしても、中級冒険者以上が愛用している個室へと連れて行かれる。
「.....あの、本当に場違いな気がするんですけど」
アルフは個室に委縮しているが、
「アルフ君。座ってこれを見て」
ケイシーはアルフに一枚の紙を見せる。
「......これ本当ですか?」
「本当よ」
そこに書かれていたのは、
Lv.10 名前 アルフレッド
年齢 15
種族 人族
力 6000 A
敏捷 6870 A
器用 4750 B
知力 6100 A
耐久 1800 C
運 8000 A
魔力 5 D
こんな形で書かれている。
「能力は無いんですよね?」
「え、うん、無よ!」
ケイシーは若干戸惑いながらもきちんと否定する。
(ケイシ―さんが言うんならあってるんだろうけど、どうしてこんなにも急に上がってるんだ?前までレベル四で困っていたのは馬鹿らしく見えてくるぞ)
アルフの急成長には【最強願望】の能力が、関わっていた。
【最強願望】には自分より強い敵と戦う時、強くなることが出来る。だが、それだけでなく成長も促すのだ。
だが、ここでアルフの成長は一旦止まる。
「これって限界突破しないとレベル上がらないんですよね?」
「そうね。大体限界突破出来る時は自分より強い敵と戦って勝つことで上がる事が多いね」
レベル10ごとに、成長が止まり、更なる成長をするには、限界突破をするしかないのだ。
即ち、普段の成長とは比べ物にならない成長をするしかない。
「ただ、こんなにも成長出来て嬉しいのも分かるけど、無理だけはしないでね?」
ケイシーは心配そうに言う。
「安心してください。絶対に無茶はしませんから」
アルフはそう笑顔で言い、外で待っているヘレナの元に向かった。
現在。
アルフが、今日は絶好調と言ったのは、迷宮に潜る事だけではなかった。自分の急成長も関わっていたのだ。
(やるしかない)
アルフは自分の手に拳を作り、覚悟を決める。
「サイクロプス。お前には恨みもあるけど、感謝するよ。ようやく気付けた」
喋っても答えてはくれないと分かっていながら、アルフは言葉を紡ぐ。
「俺は弱い。【英雄アレン】みたいに強くも無い。今まで適当に冒険者をやってた。だけどもうそんな事は辞める。ここから始める」
己の弱さを認め、己の愚かさを認める。
果たしてそんなことがどれだけの人が出来るだろうか。
アルフは今まで適当に冒険者をしてきた。どんな敵も何とかなる。前衛、後衛も関係ない。ただ、適当にやっていた。
だが、最近はどうだろうか?あまり得意でもない本を見て勉強し、迷宮に行くにもしっかり準備をしていた。
【最強願望】。その能力によってアルフは身体は成長しても、心は変化はしているかもしれないが、それ程成長はしていなかった。
だが、今変わろうとしている。
今、アルフの心は更なる成長を見せる。
「だから、カッコ悪くても、情けなくてもお前には絶対に勝つ」
勝つつもり、ではなく絶対に勝つ。アルフはそう宣言し、片手剣を構える。
今、本当の意味でアルフは冒険者になり、勝負は本番を迎える。
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