神の力を喰らった魔術師《マジックキャスター》

白葉南瓜

【第9話】初めてのお使い《クエスト》

 その日は、少し雲が広がり朝日は見えなかったが、リビングで遊ぶアマテラスと昨日拾った少女の声でアイルは目を覚ました。アイルは、毎回曇りの日は寝起きが悪いが今回は何故か清々しく思っていた。

「おはようなのだ、アイル」

「はよーなのだ、パパ!」

「だから、シルビア。パパはやめてっていてるでしょー」

アイルがシルビアと呼ぶこは、昨日拾ってきた少女が名前を聞いたときに、名乗った名前だ。
 シルビアは、綺麗な青髪を靡かせながら朝食を取っていた。なぜ、アイルがパパと呼ばれている理由は、アマテラスがふざけて「ママですよー」といった際に、近くにいた男がアイルだったからパパと認識したらしい。

「今日は、適当に稼ぐから依頼見てくるけど、シルビアとアマテラスはどうする?」

「うーん、シルちゃんが行きたいって言うなら、面倒見ないとだから行くけど、シルちゃんどうする?」

「シルビアはー...お外行きたーい!」

シルビアが元気よく言うと、アマテラスは「決まりだね」といい、同行することを決めると自室に向かい準備を始めた。シルビアも、朝食の残りをたいらげアマテラスの後を着いて行った。
 その姿を見ていると、本当の親子だと思って少しにやけているアイルは、コーヒーを啜りながら朝食を済ませた。


 アイルたちは近くの村の酒場までやってきていた。
 そこには、村人や国からの依頼が張られた『クエストボード』と言われるボードがあり、そこから依頼を選ぶが、此処はかなり国から遠いから国からの高額の依頼はあまり無く、あったとしても村に住んでいる冒険者などに依頼はとられてしまうため、低額の村からの依頼しかなかった。
 だが、今日はボードの内容が何時もと違い国からの依頼が多く張られていた。しかも、高難易度で、そこらの冒険者ではいけない物が多かった。

「なんか、今回の依頼、何時もと違いますねー」

アイルは、酒場のカウンターにいる、メイドのような格好をした二つ結びの女性に声をかけた。
 その女性は、「そうだねー」と言いながらカウンターの中から、ポーション瓶をだしてきた。

「私に話しかけるってことは、こういうことでしょ?ほら、何時もの活力剤...国からの配給が多くなったから何時もより強めだから、今日は一本ね。お駄賃は、銀貨二枚と銅貨一枚でいいよ」

「でいいよ、って言うけどそれ、定価でしょ...まったく」

アイルは、そう口から零しながらポーチから袋を出して、銀貨二枚と銅貨二枚を出した。

「ねー、一枚多いんだけどー」

「あー、それは、その一枚で『下級魔法』の短距離移動術式が書かれてるやつ、お願い。こんど、おごるからよキリー」

そういいながら手を合わせると、キリーはため息をつきながら後ろの棚から一枚の紙を取りだした。
 それを受け取ると、術式があっているか確認してから、ポーチにしまった。
 キリー・ローズ。彼女は、アエマ・ローズもとい、アエマ・インフィニットの姪だ。アイルとは従兄弟関係になるため、ちょくちょく顔を合わせていたが、村と国の距離が遠いからあまり会う機会がなかった。
 だが、大戦が終わり独り身になったアイルは、村などで依頼を受け『下級魔法』『中級魔法』『上級魔法』と着々、上の魔法を覚えていき、それで、よく酒場には来ていたので顔を覚え、こういう仲になった。そして、アイルがアマテラスと契りを交わした事を知っている唯一の人だ。


 アイルが、クエストボードから依頼をとってきて、キリーに渡すと、それに判子を押して承諾した。

「貴方に、金色の勇者の加護があらんことを」

神に祈るように、手を合わせそう呟くとアイルの周りに金色の光が舞い、それが体に溶け込んでいった。

「お前、それって...」

「うん、そうだよ。叔母さんが唯一、私に教えてくれた《金色の道しるべ》だよ。まー、何時もはやらないんだけど何か今日は、アイルのマナの波長が変だから。すこしね」

その事を言われ、自分のマナの長れを感じ取ろうとするが、何も感じ取れず分からないまま、依頼達成をしに向かった。

アイルの中にある、闇の力はその間も心に纏わりついてきている事をまだアイルは知らない。

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