神の力を喰らった魔術師《マジックキャスター》

白葉南瓜

【第3話】煌めく星《ライトスター》

王が直々に頭を下げた後からは、説明を受けて自分の職業などを言った。そこでは色々と名が通っている有名な家柄の戦士や狩人、魔道師、魔術師などがいたが、そこになぜ自分が呼ばれたのかをアイルは悩んだ。
だが、悩んでも何も出てこずに歩いていると、城で迷子になっていた。

「...どうしよう。迷った...これ、今何処なんだ?」

そう、一言呟いていると、アマテラスが姿を見した。

「アイルよ...お主は探知魔法サーチも使えるんだからそれで出口を見つければいいだろう」

「あ、そうか!その手があった」

アマテラスが提案してきたことに納得して、魔法の準備をしているアイルを横目にアマテラスは呆れながらその姿を見ていた。
ポーチを開け、その中から魔法で使う触媒をだしてアイルは左手に握る。そして、右手で腰に納めていたダガーを抜いた。
左手をダガーの剣先にあて、触媒を砕くとその触媒は、緑色の粒子になり、それが勢いよく何処かへ飛んでいった。
それについていくと、出口に出た。

「やっぱりこの手の魔法は便利だなー...それと、そこの柱に隠れてるのは誰だい?」

アイルが使ったのは、『探知魔法』、魔法の中では『下級魔術』と呼ばれるものだ。だが、その魔法は使い勝手がよくアイルが使ったように行きたいところへの道導や探し物などに使える。それと、この魔法は索敵も可能な魔法だ。
その索敵の範囲に引っ掛かると壁越しでも姿が見える。

「わ、私です。アイル殿!」

その柱の裏から見える手を上下にブンブン振り自分だって事を伝えているのは、玉座の間に行く間で出会った獣人のシルヴァだった。

「なんだ、シルヴァさんか...どうして、無音魔法ステルスなんて使って僕の後ろについてきてるの?」

「い、いえ。悪気は無かったんですが癖でそうなってしまって...あ、あの!」

シルヴァは、柱から出てきたものの、そこから動こうとはしないで少し俯きながら次の言葉を言う準備をしていた。
それに気付いたアイルは、体ごと振り返り次の言葉を促した。

「今、お暇でしたら。わ、私と戦ってはくれないだしょうか!?」

「え、僕と?なんで?」

アイルは、予想外の言葉過ぎて少し固まっていた。
そして、頑張って口を開いてもそんな言葉しか出てこなかった。その言葉に、シルヴァは真剣な眼差しで頷いた。
(ちゃんとした、戦士の目だ。かっこいい)

「何でか教えてもらえますかね?」

「はい、理由としては、王が言っていたように貴方は、あの開拓者の、オールド・インフィニットの息子だといっていました。貴方はそれを肯定しました。」

「それがなんで、戦うことにつながるの?僕の父は開拓者、僕は魔術師マジックキャスター…魔法が強いとは限らない」

「はい、その事は承知です。ですが、貴方の父上は多くの人を『上級魔術』で救ったと聞かされています。私の義父もオールド様に助けてもらったことがあるので正しい情報です」

「それで、僕も『上級魔法』が使えるとは限らないよ。『中級魔法』しか使えないかもよ?」

「それは無いです。貴方みたいな人が中級魔術師なわけありません。先程の探知魔法で使ったのは、その魔法に使う最低限のマナを含んでいて安価で手に入ったりする「キサラゴケ」ですよね?それを使うのはよく魔法の事を学んでいる証拠。そしてそこまで徹底してるのは、上級魔術師だけです」

アイルは、そのように理由を並べられて、シルヴァがどんなに真剣で戦士の高みを目指していて、力量が分かりきっている強者への挑戦をしたいと言う、その心にアイルは負けた。

「分かったよ。だけど、先に昼食を済ましてからでいいですか?」

シルヴァがポケットから懐中時計を取り出すと、時計の針は12時30分を指していた。

「あ、それならご一緒にどうですか?私、自分で作ってきたんですよ!」

シルヴァは毛並みが良いその耳を立てて誘った。その誘いを断る理由も無いアイルはそのまま頷きシルヴァの後に続いて芝が広がってる広場に歩いて行った。

「こ、これなんですが」

シルヴァが落ち着いたところにつき、シートを広げて盛ってきた弁当を広げてアイルに座るように促した。

「美味しそうだね。何時もは近くの山で取れる山菜だから、久しぶりにお肉を見たよ」

アイルは、弁当に綺麗に盛られた肉を見て目を輝かしていた。




シルヴァの弁当を食べ終わり、少し市場に足を向けた。

「やっぱり、良い物多いね。さすが国の市場だね」

アイルは感心しながら、周りをキョロキョロ見ているが、その光景にシルヴァは少し驚いていた。

「アイル殿は、国内には住まいをお持ちではないんですか?」

「そんな高い物件、買えるお金があるんだったらこの短剣を買い換えてるよ。それか書物か魔法石買ってるよ」

そんな事を言って、お金が入っている袋を持ち上げて笑って見せた。

「今回の勝負を受けてくださるので少しは、此方が負担して新しい武器などを買ってもいいですよ」

「え?ホント?」

そう言うと、シルヴァは頷き、競技場に向かって行った。




国内には大きな祭りが行なわれた時に見世物として行なわれる戦闘をするように競技場がある。そこにシルヴァは行き、そこの管理人の人に話をつけて中に通された。

「本当にやるの?一応言っとくけど負けないと思うよ」

「それは宣戦布告、と言うことで受け止めていいですか?私も戦士の身...負けるわけには行きません」

シルヴァはそう言うと剣を鞘から抜き剣先をアイルに向けた。

「一応、忠告はしましたからね?」

二人の間に風が抜けた。その風が抜け吹き止んだのを合図に戦闘が始まった。




先制はシルヴァが取ったが、アイルはそれを何の不利とも感じなかった。

「はぁ、君のその剣に対して失礼な戦いは出来ないな...本気でやらしてもらうよ」

アイルは、突進してきているシルヴァに向けて左手を伸ばした。

「その余裕を保ってられるのも今のうちです!」

突進の速さが上がり、気付いた時にはアイルの背後にいてこのままだと、アイルの負けが決定する。その行動は予想外だったのかアイルは少し動揺し一つ魔法を発動した。


シルヴァは剣を振り下ろしたが、その剣は空を切った。

「な、なんで...!?剣は、アイル殿を捕らえたに」

シルヴァが周りを見渡すとアイルはもといたところから三メートルほど離れた所にいた。

「『中級魔法』《瞬間移動魔法テレポート》危機一髪だったけど良かった、腕は鈍ってない」

シルヴァはその行動に動揺していた。
何故なら、それは『中級魔法』は魔術師の頂点の魔術師マジックキャスターでも一節は詠唱しないといけないが、アイルは何も詠唱せずに魔法を発動さした。

「じゃー、次はこっちからやるよ...」

アイルが、短剣を腰から抜き、その剣を天にかざした。
かざした瞬間、周りの空気が変わりその場には緊張が走る。その緊張は解けることなくシルヴァを拘束した。

「我、アイル・インフィニットが命ずる。光を散らし、全てを照らす聖なる光よ、我の力になり邪悪なる力を打ち倒せ!『上級魔法』《王の槍ロンゴミニアド》」

アイルが『上級魔法』を詠唱すると掲げた短剣に光のマナが集まり神秘の光で構成された一本の槍が創られた。

「この王の槍ロンゴミニアドと雷のマナをあわせると...合成魔術《光り輝く槍ライトニングランス》!」

槍を投擲すると、それは散らばり複数になりシルヴァに襲い掛かった。
だが、シルヴァもそれに対抗するように剣にマナを纏わしてその槍を一本ずつ打ち払っていたが、追いつかなくなり少しずつ傷を負い始めた。
(獣人に光属性のマナは辛いはず...これで終わらせるか...な)
アイルは、シルヴァが剣で槍を捌いているのを好機に思い、瞬間移動魔法テレポートを使い後ろに回った。
シルヴァはアイルが後ろに回ってきたことに、動揺する。その動揺はアイルにも伝わってきた。

「これで終わりだ!」

短剣を納めて、拳に光属性を纏わした。

「『下級魔術』妖精の鱗粉ホーリーオーラ

その拳をゆっくりと広げて、シルヴァの顔に優しく当てた。その当てた後は、シルヴァは力が抜け、眠りについた。

妖精の鱗粉ホーリーオーラには回復効果と睡眠効果、疲労回復...簡単に言うと、回復魔法の部類なんだけど...これで、とどめさしたの初めてだな」

アイルが、一人でそう呟くと後ろからアマテラスが出てきて笑いをこらえていた。

「アイルよ。お主も甘くなったな。昔は、『上級魔法』の天使の鉄槌ホワイトノヴァをバンバン打ってたのにな」

「それは昔だろ。まったく、今は少し抑えないと...『この力』にも慣れてきたから手加減しないと簡単に殺しちゃうかもだから」

アマテラスと話しながらアイルは、笑って空を見ると、一つ一つ煌めく星が光っていた。

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