日替わり転移 ~俺はあらゆる世界で無双する~(※MFブックスから書籍化)
149.魔女っ娘ハスミ★カマセ
「ふー」
次々におかわりの現れる魔性を始末していく三崎を、俺はのんびり眺めて過ごしていた。
こうしてみるとスピードこそイツナやシアンヌに劣るけど、ナイフの扱いが抜群に巧い。
それと、箱庭世界で見たときよりも明らかにパワーアップしてる。
魔法じゃないみたいだし、この世界独自のバフか?
「なるほどなぁ。この地球の法則はだいたいわかったかも」
俺の死角、寄りかかってるソファの背もたれに巨大な口のついた触手が無数に現れた。
一斉に俺に襲い掛かろうとしてくるが――
「大人しくソファしてろ。殺すぞ」
と、丁重にお願いすると触手を引っ込めて大人しくなった。
本能に忠実なタイプのモンスターは格の違いを察してくれるから、手懐けるのが楽でいい。
「ふ~……うめぇ」
高級ホテルで食うフェアチキは最高だな。
転生者じゃない悪役令嬢を深夜プロレスでブイブイ言わせてるときのような征服感がある。
うぃー、コーヒーも飲んじゃおう。
「えっ、ちょ! なんで完全にくつろいでんのさー!」
「だってお前、余裕で勝てそうだし」
「それはそうだけどっ!」
鑑定するまでもない。
魔性の連中は俺が手を下すまでもない雑魚どもだ。
三崎のストレス解消にもちょうどいい。
「それに何より、この世界は俺が何かすることを望んじゃいないみたいだしな」
「あはは、なにそれー。中二病?」
「言葉通りだよ。深い意味はない」
などというやり取りの間にも、三崎は凄まじい体術で魔性どもを捌いていく。
『肉体操作チート』で自在に伸縮する四肢を駆使した、実にトリッキーなナイフコンバットだ。
三崎の戦い方は東花戦でもそうだったが泥臭いというか、血生臭い。
多少のダメージと引き換えにできるなら躊躇なく敵の急所を狙っていくスタイルは、不老不死頼みだったかつての俺と近いものがある。
体がバラバラになっても脳が無事なら死ぬことのない『ゴキブリチート』による生命力。
そして念動力チート――どうやら操れるのは自分の肉体だけのようだが――で内臓や骨すらも武器にして敵を追い詰めるハングリーさを併せ持っていた。
万が一、致命傷を負っても再生チートで完全回復まで持っていける。
もっとも燃費はそんなによくないみたいだし、腹も相当減るみたいだけど。
あいつがあんなにガリガリだったのは、栄養が足りてなかったからだろうな。
食い物をいくらでもくれてやれる俺と組んだら、さらに伸びるだろうか……?
いや、無理だ無理無理。
三崎はきっとハーレムルールを守れない。
ガチ恋してる殺人鬼なんざ最初のうちは誤魔化せてもヤンデレ化してリリースになるオチが見えてる。
まあ、それでもかまわんっちゃかまわんが……採用条件を満たしてスカウトされると厄介になりそうだからなぁ。
「ふーっ、終わったぁ」
グズグズ溶けていく魔性の肉塊の上で大きく伸びをする三崎。
俺の用意してやったドレスがすっかり血塗れで真っ赤になっていた。
いつだったか、あんな恰好した殺戮令嬢がいたっけ……。
ていうか、紅い月が消えてないな。
「結界主はこいつらじゃないのか」
「そうみたいだね。たぶん、上にいるんじゃないかな?」
「そうか。じゃ、探してみるかなー」
ソファから腰を浮かせても、躾けた魔性は襲ってこなかった。いい子だ。
というかこいつらアレか……憑依系のモンスターなんだな。
それなら精神系魔法で抵抗力を奪ってからソファに封印珠を押し付ければ……よし、中身だけ回収できたぞ。
久々に新しいペットをゲットだぜ!
「オフじゃなかったの?」
俺の一連の動作を不思議そうに見ていた三崎が、首を傾げて訊ねてくる。
「結界の中じゃ落ち着かないだろ」
「それ、さっきまで完っ璧にくつろいでたリョウジが言う?」
エレベーターホールに向かって歩き出しす俺の背に、呆れなような三崎の声が投げかけられた。
それを無視して肩越しに声をかける。
「何ボーッと突っ立ってんだ。さっさと行くぞ」
「えっ…………うん!!」
ブラッディドレスの三崎が満面の笑みでついてきた。
……まったく、何かいいことでもあったのかねぇ。
魔性の相手をすべて三崎に押し付けて――「いや、ホントに少しぐらいは手伝ってくれたってバチは当たらないと思うんだけど!」などという抗議は無視して――俺たちは無事にホテルの最上階まで辿り着いた。
そこで待っていたのは、今にも落ちてきそうなぐらいに空一面を占めている紅い月と、もうひとり。
「ウフフ……ようやく来たわね★」
いかにも魔女といった感じのいでたちの女が嬉しそうに口を開いた。
真っ黒なローブで全身を覆った女だ。フードを目深にかぶっているので容姿のレベルは判然としないが、体のラインはまあまあってところ。
「貴方が来るのをずっと待っていたわ! あのときの屈辱を忘れたことは――」
俺たちに向かって何かを言いかけていた魔女は、三崎がシュッと投げたナイフに心臓を貫かれて倒れた。
「知り合いか?」
「ううん?」
俺と三崎が首を傾げ合っている間に、魔女の体はあっさりと消滅する。
それとともに紅い月も幻のように消え失せて、星のない夜空が蘇った。
「結界は消えたね」
「代行分体だな。しかも、かなりエネルギーをケチってる」
結界のタイミングとセリフからして俺か三崎が狙いだったとは思うんだけど。
三崎が空気を読まないから何が目的だったのか、さっぱりわからんかったな。
あの感じだと、本体も大したことはなさそうだが……。
「ん?」
光のない夜空を切り裂いて、何かが流星のように飛んでくる。
みっつだ。まっすぐこちらに飛んでくる。
「ええーっ、紅月が消えちゃったよ!」
「魔性が撤退したってこと?」
「ふたりとも、見て、あそこ」
どうやらさっきの魔女の活動を察知してやってきた連中のようだ。
なんというか、全員がフリフリの……日曜の朝の女の子向けアニメに登場しそうな衣装を着ている。
「あ、まずっ!」
三崎が俺の背に隠れようとするが、一足遅かったんじゃないかな。
俺たちの頭上に現れたのは、光の粒子を振りまくスケボーのようなアイテムに乗った三人の女の子だった。
「ホノカちゃん!」
「無事だったのね!」
「いきなり、消えて。すごく、心配、した」
ピンク髪ちゃん、巨乳ちゃん、タレ目ちゃん……3人の姦し娘がそれぞれ嬉しそうに三崎に声をかけてくる。
「や、やあ! みんな久しぶり~……」
気まずそうに笑いながら俺の背中から出てくる三崎。
それにしても三崎は『ミサキホノカ』でなく『ミサキコウ』って名乗ってたと思ったが……。
男のフリしてたし、ホノカが本当の名前なのか?
確かに洸はどっちとも読めるし、本人の魂に刻まれてさえいればコウでもホノカでも真名になるけどさ。
「そこの人は?」
ピンク髪が俺を見て目をまんまるくする。
「えーっとね……彼氏!」
「おい誰がだ」
「後生だから合わせてよ~!」
三崎が小声で懇願してくる。
まったく、しゃーねーな。
「チーッス。ミサキチの彼氏↑でーす」
「キチ!?」
彼氏がただの苗字読みってのも変だろ。
別に深い意味はないぞ?
「えっ……ちょっと待って。紅月の魔女を倒したのがミサキさんなんだから……じゃあ、この男の人に正体がバレてしまったということよね!?」
「んえ!? ああ、えっと、そうとも言い切れないのかなぁ~って!!」
慌てた様子の巨乳ちゃんから指摘を喰らって必死に誤魔化そうとする三崎ホノカ。
「どっちみちこの人、あたしたちのこと見ちゃったよ!」
「記憶、消さないと、まずい?」
「そうね……彼氏さんには申し訳ないけれど」
「なぁに、それには及ばないさ」
キャーキャー騒ぎ始めた姦し娘たちに、俺は肩をすくめてみせる。
そして、彼女たちの正体を口にした。
「君たち、魔法少女だろ?」
「なんで、それを」
「ホノカちゃん、そこまでしゃべっちゃったの!?」
「うええっ!? ぼ、僕はそこまで話してないよ!!」
「だったら、彼氏さんはいったいどこでそれを……」
「おっと、自己紹介が遅れたな」
優雅に一礼すると同時に、俺の衣装をタキシードに変化させた。
「俺は逆萩亮二。君たちと契約した魔法少女の使い魔の……『同業者』さ」
次々におかわりの現れる魔性を始末していく三崎を、俺はのんびり眺めて過ごしていた。
こうしてみるとスピードこそイツナやシアンヌに劣るけど、ナイフの扱いが抜群に巧い。
それと、箱庭世界で見たときよりも明らかにパワーアップしてる。
魔法じゃないみたいだし、この世界独自のバフか?
「なるほどなぁ。この地球の法則はだいたいわかったかも」
俺の死角、寄りかかってるソファの背もたれに巨大な口のついた触手が無数に現れた。
一斉に俺に襲い掛かろうとしてくるが――
「大人しくソファしてろ。殺すぞ」
と、丁重にお願いすると触手を引っ込めて大人しくなった。
本能に忠実なタイプのモンスターは格の違いを察してくれるから、手懐けるのが楽でいい。
「ふ~……うめぇ」
高級ホテルで食うフェアチキは最高だな。
転生者じゃない悪役令嬢を深夜プロレスでブイブイ言わせてるときのような征服感がある。
うぃー、コーヒーも飲んじゃおう。
「えっ、ちょ! なんで完全にくつろいでんのさー!」
「だってお前、余裕で勝てそうだし」
「それはそうだけどっ!」
鑑定するまでもない。
魔性の連中は俺が手を下すまでもない雑魚どもだ。
三崎のストレス解消にもちょうどいい。
「それに何より、この世界は俺が何かすることを望んじゃいないみたいだしな」
「あはは、なにそれー。中二病?」
「言葉通りだよ。深い意味はない」
などというやり取りの間にも、三崎は凄まじい体術で魔性どもを捌いていく。
『肉体操作チート』で自在に伸縮する四肢を駆使した、実にトリッキーなナイフコンバットだ。
三崎の戦い方は東花戦でもそうだったが泥臭いというか、血生臭い。
多少のダメージと引き換えにできるなら躊躇なく敵の急所を狙っていくスタイルは、不老不死頼みだったかつての俺と近いものがある。
体がバラバラになっても脳が無事なら死ぬことのない『ゴキブリチート』による生命力。
そして念動力チート――どうやら操れるのは自分の肉体だけのようだが――で内臓や骨すらも武器にして敵を追い詰めるハングリーさを併せ持っていた。
万が一、致命傷を負っても再生チートで完全回復まで持っていける。
もっとも燃費はそんなによくないみたいだし、腹も相当減るみたいだけど。
あいつがあんなにガリガリだったのは、栄養が足りてなかったからだろうな。
食い物をいくらでもくれてやれる俺と組んだら、さらに伸びるだろうか……?
いや、無理だ無理無理。
三崎はきっとハーレムルールを守れない。
ガチ恋してる殺人鬼なんざ最初のうちは誤魔化せてもヤンデレ化してリリースになるオチが見えてる。
まあ、それでもかまわんっちゃかまわんが……採用条件を満たしてスカウトされると厄介になりそうだからなぁ。
「ふーっ、終わったぁ」
グズグズ溶けていく魔性の肉塊の上で大きく伸びをする三崎。
俺の用意してやったドレスがすっかり血塗れで真っ赤になっていた。
いつだったか、あんな恰好した殺戮令嬢がいたっけ……。
ていうか、紅い月が消えてないな。
「結界主はこいつらじゃないのか」
「そうみたいだね。たぶん、上にいるんじゃないかな?」
「そうか。じゃ、探してみるかなー」
ソファから腰を浮かせても、躾けた魔性は襲ってこなかった。いい子だ。
というかこいつらアレか……憑依系のモンスターなんだな。
それなら精神系魔法で抵抗力を奪ってからソファに封印珠を押し付ければ……よし、中身だけ回収できたぞ。
久々に新しいペットをゲットだぜ!
「オフじゃなかったの?」
俺の一連の動作を不思議そうに見ていた三崎が、首を傾げて訊ねてくる。
「結界の中じゃ落ち着かないだろ」
「それ、さっきまで完っ璧にくつろいでたリョウジが言う?」
エレベーターホールに向かって歩き出しす俺の背に、呆れなような三崎の声が投げかけられた。
それを無視して肩越しに声をかける。
「何ボーッと突っ立ってんだ。さっさと行くぞ」
「えっ…………うん!!」
ブラッディドレスの三崎が満面の笑みでついてきた。
……まったく、何かいいことでもあったのかねぇ。
魔性の相手をすべて三崎に押し付けて――「いや、ホントに少しぐらいは手伝ってくれたってバチは当たらないと思うんだけど!」などという抗議は無視して――俺たちは無事にホテルの最上階まで辿り着いた。
そこで待っていたのは、今にも落ちてきそうなぐらいに空一面を占めている紅い月と、もうひとり。
「ウフフ……ようやく来たわね★」
いかにも魔女といった感じのいでたちの女が嬉しそうに口を開いた。
真っ黒なローブで全身を覆った女だ。フードを目深にかぶっているので容姿のレベルは判然としないが、体のラインはまあまあってところ。
「貴方が来るのをずっと待っていたわ! あのときの屈辱を忘れたことは――」
俺たちに向かって何かを言いかけていた魔女は、三崎がシュッと投げたナイフに心臓を貫かれて倒れた。
「知り合いか?」
「ううん?」
俺と三崎が首を傾げ合っている間に、魔女の体はあっさりと消滅する。
それとともに紅い月も幻のように消え失せて、星のない夜空が蘇った。
「結界は消えたね」
「代行分体だな。しかも、かなりエネルギーをケチってる」
結界のタイミングとセリフからして俺か三崎が狙いだったとは思うんだけど。
三崎が空気を読まないから何が目的だったのか、さっぱりわからんかったな。
あの感じだと、本体も大したことはなさそうだが……。
「ん?」
光のない夜空を切り裂いて、何かが流星のように飛んでくる。
みっつだ。まっすぐこちらに飛んでくる。
「ええーっ、紅月が消えちゃったよ!」
「魔性が撤退したってこと?」
「ふたりとも、見て、あそこ」
どうやらさっきの魔女の活動を察知してやってきた連中のようだ。
なんというか、全員がフリフリの……日曜の朝の女の子向けアニメに登場しそうな衣装を着ている。
「あ、まずっ!」
三崎が俺の背に隠れようとするが、一足遅かったんじゃないかな。
俺たちの頭上に現れたのは、光の粒子を振りまくスケボーのようなアイテムに乗った三人の女の子だった。
「ホノカちゃん!」
「無事だったのね!」
「いきなり、消えて。すごく、心配、した」
ピンク髪ちゃん、巨乳ちゃん、タレ目ちゃん……3人の姦し娘がそれぞれ嬉しそうに三崎に声をかけてくる。
「や、やあ! みんな久しぶり~……」
気まずそうに笑いながら俺の背中から出てくる三崎。
それにしても三崎は『ミサキホノカ』でなく『ミサキコウ』って名乗ってたと思ったが……。
男のフリしてたし、ホノカが本当の名前なのか?
確かに洸はどっちとも読めるし、本人の魂に刻まれてさえいればコウでもホノカでも真名になるけどさ。
「そこの人は?」
ピンク髪が俺を見て目をまんまるくする。
「えーっとね……彼氏!」
「おい誰がだ」
「後生だから合わせてよ~!」
三崎が小声で懇願してくる。
まったく、しゃーねーな。
「チーッス。ミサキチの彼氏↑でーす」
「キチ!?」
彼氏がただの苗字読みってのも変だろ。
別に深い意味はないぞ?
「えっ……ちょっと待って。紅月の魔女を倒したのがミサキさんなんだから……じゃあ、この男の人に正体がバレてしまったということよね!?」
「んえ!? ああ、えっと、そうとも言い切れないのかなぁ~って!!」
慌てた様子の巨乳ちゃんから指摘を喰らって必死に誤魔化そうとする三崎ホノカ。
「どっちみちこの人、あたしたちのこと見ちゃったよ!」
「記憶、消さないと、まずい?」
「そうね……彼氏さんには申し訳ないけれど」
「なぁに、それには及ばないさ」
キャーキャー騒ぎ始めた姦し娘たちに、俺は肩をすくめてみせる。
そして、彼女たちの正体を口にした。
「君たち、魔法少女だろ?」
「なんで、それを」
「ホノカちゃん、そこまでしゃべっちゃったの!?」
「うええっ!? ぼ、僕はそこまで話してないよ!!」
「だったら、彼氏さんはいったいどこでそれを……」
「おっと、自己紹介が遅れたな」
優雅に一礼すると同時に、俺の衣装をタキシードに変化させた。
「俺は逆萩亮二。君たちと契約した魔法少女の使い魔の……『同業者』さ」
コメント
炙りサーモン
ボクと契約して魔法少女になってよ!