１.闘神と任務

草木が生い茂る森の中
　木に寄りかかり座っている銀髪の男が疲れた顔で苦言を吐く。


「俺は、世界のために鍛えていただけなんだけどな」


　普通の人が聞いたなら、厨二病と勘違いされそうな発言だが、この男の正体を知る者は納得する事だろう。


「まさか、神としての務め以外で叱られるとは……」


　数多とある世界を創造したきた創造神。


　その世界を壊れないように管理するため、ごまんと存在する下級神。


　その下級神を統括し、世界一つに対して一柱いる中級神。


　そして、下級神・中級神だけでは対処出来ない問題が起こった時に対処する上級神。


　そして、上級神の一柱である俺こと闘神レオランスはある理由から創造神のじいさんに数多ある世界の一つに放り出されてしまった。


「本当にどうしよう」


　木々の隙間から顔をのぞかす、晴れ渡ったそらを苦い顔で見上げながら数分前に起こった俺がここにいる理由でもある出来事を思い起こした？。




　～～～数時間前～～～


　神界


　俺は上級神以上の間で定期的に開かれている来ていた。


「おい、何故俺の席がない」


　いつもなら、円卓の周りには創造神と上級神7柱、計8席あるはずなのだが7席しかない。


　さらに、いつも時間ギリギリに入ってくる技能神がもう席に着いていて、俺以外全員着席していたのだ


「それはな、レオランス、君にはすぐに任務を行ってきて欲しいのじゃ」


　この爺さんくさいしゃべり方をするのは創造神であり、神界を最高権力者のライガスである。


「任務……？」


　俺はとても嫌な予感が頭をよぎった。


　というのも、普通世界に問題が生じた時は中級神から直接連絡来るのだ。


　だから、ライ爺から直接任務なんていうのはよっぽどないというか、くるはずがないし、実際今まで一度もきたことがない。


　それが故に、俺はとてつもなく嫌な予感がしていた。


「君には今から行く世界で妻をつくってきて貰う」




「は……？」


　ライ爺の余りにも意味不明な発言に間抜けな声を出してしまう。


「嫌ですけど」


「さらに、俺には武術と魔法の訓練と世界を助ける役目がありますし」


　すぐに再起した俺は続けて言う


「世界については大丈夫じゃよ」


「他の上級神が頑張ってくれるそうじゃ」


　そう言いながら、ライ爺は円卓にいる他の上級神に目配せするとみんながいっせいに頷く。


「さらに、この任務は強制じゃ」




「な…ぜ…」


　絶望したような顔でレオランスは言う




「そりゃ決まってるだろ。お前が何度も女神の中から何人でもいいから妻をつくれと再三注意されているのにもかかわらず武術や魔法の訓練で無視し続けた上に見合いに連れて行くとどんな方法使ってでも逃げるからに決まってるだろ」




　外見が筋肉ダルマである大地神リグネストは当然だろと言うような口調でレオランスに対して言う。


「だからの～、神界では閉じ込めても意味がないから、ある一つの世界に閉じ込めてそこで妻をつくってきて貰おうと考えたのじゃ」


(どうやったらその考えにいたのるか分からん。こうなったらもう逃走するしかない)


(転移)


　“パリーン”


　レオランスは逃走を試みるが何かが割れる音と共に魔法がキャンセルされる。


「無理じゃよ。この部屋は指定魔法発動禁止区域に設定しといたからの～」


　指定魔法発動禁止区域とはこの区域の発動者が指定した者に魔法を使えなくするというものである


「次いで言うと、扉もあかないぞ」


　ライ爺は悪びれもなく言い切る。


「質問はあるかの～」


　そんな言葉に俺は威圧を込めた目線をライ爺に送りながら無言を貫く


　そして……


「しょうがない、そろそろ行って貰うかの～」


「強制転移」


「え……」


　レオランスの視界が一気に揺れ始め、定まり始めた時にはもう森の中にいた。