話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

チートはあるけど異世界はありませんでした

シャムゴット

9

 
 復讐とは、自らの利益を害された場合に個人や団体が、加害者に対し害悪を与えることである。


 復讐は何も生み出さないとはよく言われるが、俺は今回のケースは違うと思う。
 逆にあの三人組を放っておくことで、冬馬だけでなく他の子供たちも被害を受けることになる可能性すらあるからな。


「とは言っても、やり過ぎるのもなー……」


 相手は幼稚園児だ。
 そんな相手に、大人げないことをするのもどうかと思う。


「主音くん、どうかした?」


 おっと、すっかり考え込んでしまっていたな。


 そうか!
 冬馬がやり返せばいいのか。


 ちょうどいいや、先に意思確認させてもらおう。


「なあ、冬馬はあの三兄弟のことどう思う?」


 ここは直球で聞いてみる。


「うーん……悪口を言ってきたのは耐えられるけど、おかあさんに買ってもらった靴を投げ捨てたのは絶対に許せないかな」


 まあ、それはそうだよな。


「やり返したいと思うか?」


「そうだね、でもひどいことはしたくないかな。ただ、ちゃんと謝ってほしい」


 本当に優しい奴だ。
 うん、こいつならやり過ぎることは絶対にないだろう。


 やはり今回復讐をするのは冬馬で、俺はそれの手助けをする形にしようと思う。
 目的は謝罪させること、あとは俺の個人的な恨みを晴らすことだ。


 次は期間についてだ。


「あっ、そういえば歓迎試合っていつだったっけ?」


「確か、5月の初めごろって言ってたよ」


 2週間後か……流石にその期間でサッカーチートはきついな。


 ん? 時間さえどうにかなればいいんだよな?


 なら、あそこを使えばいいか!


「なあ今週、暇な日ってあるか?」


「うーん……明日はおばあちゃんの家に行くから、明後日なら大丈夫だと思うよ」


 明後日なら俺も暇だし大丈夫だ。


 あとは……


「これは大事な質問だ。冬馬は秘密を守れるか?」


「秘密にしてほしい事なら、僕は絶対に言わないよ」


 会って間もない関係だが、なぜか冬馬のことは信じられるんだよな……


「わかった。なら明後日に俺の家に行っていいか、冬馬のお母さんに聞いてきてくれ」


「主音君の家に行っていいの!? じゃあ、今日おかあさんに聞いてみるよ!」


 うーん、遊ぶわけじゃあないんだが……


 まあ、これでプランは出来上がった。


 次は準備だ。




 ――――――――




 俺は幼稚園から帰宅して、家族そろって夕飯を食べている。


 ちなみに今日はグラタンだ。
 上のパン粉がちょうどいいきつね色になっている。


 スプーンを刺すとサクッという音をたてる。


 チーズ多めで、クリームソースも俺好みでとても美味しい。


 うん、やはりグラタンは最高だな!


 っと本題を忘れるところだった。


「明後日、友達を家に呼んでもいいかな? 冬馬って子なんだけど父さんのファンでね、もう約束しちゃったんだ」


「おっ、僕のファンか。というか、主音ちゃんと友達ができてたのか!?」


「香久弥ちゃんのことは知ってたけど、ちゃんと男の子の友達もできたのね!」


「ちょっ、2人ともひどいよー。俺にだって友達はいるよ!」


 ん? あっ、そういえば香久弥ちゃんと冬馬しかいないような……


「ははっ、ごめんごめん。主音は大人っぽ過ぎるからなー。僕もアリアも心配してたんだよ」


 こ、これはちょっと交友関係広くしないとだな……


「で、結局呼んでいいの?」


「もちろん、いいに決まってるじゃない! おやつも腕によりをかけて作るわね!」


 母さんのおやつは最高だからな、楽しみだ!


「やった! 父さんは明後日は試合? サインとかお願いしたいんだけど……」


「あー、僕は試合だな……サインくらいなら書いておくよ」


「うん、ありがとう!」


 よし、これで冬馬の褒美はそろったな。


 さて、俺のほうも準備しますかね。


 俺は自分の部屋に戻り作業を始めた。




 ―2日後―




 ピーンポーン




 おっ、やっと来たみたいだな。


「おじゃましまーす!」


「本日はお世話になります」


 そうか、3歳だもんな流石に母親連れか。


「いらっしゃい。お母様もどうぞこちらに」


「あっ、ありがとうございます。それにしても立派なお宅ですね……」


 冬馬の母さんは切れ長の目で美人秘書みたいな顔だが、雰囲気は結構しっかり者のお母さんって感じだ。


 冬馬は母さん似みたいだな。


「母さん、おやつの時間まで冬馬と上で遊んでてもいい?」


「ええ、いいわよ。母さんたちは下でお話ししてるから、3時になったら呼ぶわね」


 これで、途中で呼びに来る心配はないな。


「うん!よし、冬馬ついてきて」


「わかった」


 2人で階段を上がり俺の部屋の前に行く。


 そして、そこでいったん立ち止まる。


「冬馬、前にも言ったが今から見るもの、起こることを秘密にすると約束できるか?」


「えっ、うん。約束できるよ?」


 急に真剣になったから戸惑ってるな。


 だが、これは大切な確認だからな。


「じゃあ、行くぞ」


 俺はドアノブに手をかけ、いつもと反対方向に回す。




 ガチャ




 そして俺たちは扉の中に吸い込まれた。




 ―――――――――




「えっー! ここどこ!!」


 普段は物静かな感じなんだか、驚きすぎてキャラが崩壊している。


「まあまあ、落ち着けって」


 今、俺と冬馬は一面きれいに整えられた芝生だけが広がる場所にいる。
 あるのは、後ろにある扉と腐らないように謎の魔法のかかった食べ物とロッカーだけだ。


 まあ、どうやって作ったかは企業秘密だ。
 作った理由については、まああれだ、すみません出来心です。


 まあ、今回役に立つし後悔はしていないがな。


「ここは俺が作り出した、外との繫がりを断ち切って、時間を超加速させた場所で……ってわかんないよな」


「これって、七つのボールの話に出てくる1日で1年間の修行ができる部屋だよね! 本当にあったんだ!」


 あのアニメ知ってったんかい!


 ちなみにここは、あそこよりハイスペックだ。
 時間は1日で2年分の時間になるし、重力やほかの環境も日本と変わらない。


 それに中にいる間は体の成長が止まるという驚きの効果。
 まあ、似てることには変わりないが……


 説明省けるし、まあいいだろう。


「そうだ、ここで冬馬にはサッカーのスキルアップをしてもらう。ここから外に出たら、体はここに入る前の状態に戻るからあくまでスキルだけを覚えてもらう」


「うん、わかったよ」


 今の説明だけで本当に理解できたのか?


「まあいいか、じゃあロッカーに行って着替えるぞ」


「うん!」


 扉の前に置いてあるロッカーの中には、新品の子供用スパイク、練習着、ボールが入っている。


「うわっ、これ本当に使っていいの!」


「父さんのスポンサーの会社から何シーズンか前のモデルをもらったんだ。もう、処分が決まっていたやつだからいくつかもらってもいいよ?」


「ほんとに! ありがとう!」


 よし、モチベーションも上がったな。


「ここでは四六時中ボールを使い続けてもらう。ボール感覚をつかむことはかなり大事だ」


「ボールは友達って言うからね、もちろんやるよ」


 こんな偉そうなことを言っているが、俺は完コピの能力で覚えていて説明ができないから、ほとんどがネットの受け売りだ。


 でも、手本は見せれるからな。


 動画でいいだろうって?


 実物のほうが効率いいに決まってるだろ。
 それに、やってる技の感覚くらいは伝えることもできる。


「それじゃあ始めようか!」


「うん!」




 こうして俺による、冬馬のサッカーチートを得るためのトレーニングが始まった。

「チートはあるけど異世界はありませんでした」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く