チートはあるけど異世界はありませんでした

シャムゴット

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『先日某動画投稿サイトにて、ある少年の動画が全世界で注目されています。 その動画がこちらです』


 かなり幼い少年の6人抜きから、アシストまでの動画が流れる。


『元サッカー日本代表の藤本さん、この少年についてどう思われますか?』


 今日はスタジオにコメンテーターとして元サッカー日本代表選手が呼ばれている。


『いやー、身体の使い方もドリブルテクニックもすごいの一言ですね! なにより、最後のパスは特に異常ですよ! 』


『実はこの少年は3歳だそうで、さらにあのイケメンサッカー選手の氷室海人選手の息子さんだそうです』


『3歳ですか!?それに氷室の息子ですか!彼も海外で活躍した素晴らしい選手ですし、これは将来日の丸を背負う選手になるかもしれませんね!』


『そうですね、非常に楽しみです。では、次のトピックスです』




 プチンッ




「はぁー……」


 まさか、またもテレビ沙汰になるとは思ってもなかった。
 おかげで昨日から取材がわんさか来ている。
 さっきも父さんが追い払っていた。


「メディアに取り上げられると自由に動けなくなるからね。動画の流出は止められなかったけどこれ以上の露出は僕が防ぐよ」


「ごめん……父さん」


「ははっ、主音は何も悪くないよ。 それに子供を守るのは親の仕事だよ」


 やはり父は偉大だ。


 こんな事で迷惑はもうかけたくない……


 ということで、今日はしっかりと能力の検証をしようと思う。
 このままだと取り返しのつかない事になりそうだからな。


 それに、知らないと対策が出来ない。
 もちろんどこにも被害が出ないように、無人島に瞬間移動する。




 シュンッ




 よし、ここでいいかな。


 ここは最近見つけた秘密の場所だ。
 潮が引いていれば出現するが、満ちていたら無くなる小さな島である。


 よし、準備は万全だ。


 まず現時点で分かっていることは、リアルの人の動きとアニメの動画であればコピー出来るということだ。


 だから今回は、それ以外の小説などの文字や、漫画などの絵を使って検証してみる。


 結果……できなかった。


 まあ、一安心だな。
 これで出来てたら、世界を作り変えるくらいしないと生きていけない。


 では、次にパラパラ漫画はどうか調べる。


 パラパラマンガはコマの少ない動画みたいなものだからな。
 片手から衝撃波を出すシーンを5枚の物と120枚くらいの物を作り検証する。


 5枚の物……失敗。


 では、120枚の物をやってみる。


 ズガーン!!


 ……成功した。


 うん、苦労して描いて成功したのだが全く嬉しくない。


 それに理由もわからない。
 まあともかく、これで完コピは2つの条件が必須であることが分かった。


 1つ、自分の目で現実または動画で見るということ。


 2つ、動画である場合は出来るだけ繊細であること。


 たったこれだけ満たせば能力は発動する。


 よって俺は漫画は何でも読んでいいが、ゲームとアニメは超能力などのが一切出てこないものしか見てはいけないと判明した。


 特につい最近アニメ化されたサイキック系ギャグ漫画なんて以ての外だ。
 もちろんドラマなんかも気をつけなければならない。


 最近はマンガの実写化とか多いからなぁ……


 ……えっ?


 いやいや、せっかくチートもらったのにこんなことってあるか?


 人生イージーモードどころかハードモードだよ!


 でも、自分と周りの人のためだ……我慢するしかないよな。


 __________




 決意はしたけど実際に能力をコピーしてしまうことは絶対におきる。


 例えば、家電製品を取り扱っている店なんかに行けば、その店のテレビに映っている映画をコピーしてしまうなんてこともある。


 そこで俺の能力を書いたステータスノートを作ることにした。


 そう、『ぼくのステータスノート』だ。


 これを使うことにより、いつでも自分の能力を確認したり更新したりして、無駄な事故を減らすことが出来るのだ。


 とりあえず、わかる範囲で書いたものがこれだ!


 ______


 ―基本―


 家庭レベル4


 容姿レベル5


 身体能力レベル5


 知能レベル3


 -特殊―


 記憶引継ぎ


 完全コピー


 手からビーム系、みんなの元気を使う技、テレパシー、杖を使う魔法系、壁登り、手首から糸、衝撃波、瞬間移動、サッカー系


 ______




 まだ、あるかもしれないが確認出来ているものがこれだ。
 手からビーム系からテレパシーまではわかるだろ? 


 もちろん、7つの玉を探すアニメだ。


 杖を使う魔法は、金曜にあった魔法学校に通う男の子の映画で、壁登りや手首から糸は、蜘蛛の力を使うヒーローの映画で覚えてしまった。


 少し前に瞬間移動はどうしても欲しくて動画サイトで取ってしまった。
 今考えると、どれだけ自分がこの問題を楽観視していたかわかる……


「主音、海人くん、ご飯よー!」


 おっと、もうそんな時間か。


「はーい!」


「すぐ行くよ!」


 今日は父さんの試合が昼だったから全員揃っての夕食だ。


 家族団らんって感じだよな。
 この日常を守るためだ、俺はもう能力は使わない!


「主音、今日は随分悩んだ顔をしていたけど何かあったのかい?」


「いや、いろいろあったけどもう大丈夫だよ!」


「まあ、何かあったら相談するんだぞ?」


「うん!」


 能力は封印することに決めたし、これでもう大丈夫だ。


「あっ、そう言えば……ごめん、ニュース付けるよ!」




 パチン




『速報です、K国が明日16日に日本へ向けミサイルを発射するとの情報が入りました。 政府はこれにより警戒を強め……』


 やっぱり、前言撤回かも……



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