この退屈な世界に死の饗宴を

つくつく

3話し合い(前編)

窓から朝日が差し込み、眩しさに目を擦りながら起きる。
身支度を整えながら、自分の脇腹を見て、体に一切の傷がないことを確認し、ぼんやりした頭で思う。あれは、夢だったのかな。一生あのままだったら良かったのに。
そんなことを思いながら家を出た。
学校に着き、教室に入ると、隣のクラスの生徒の顔がちらほら見えた。
それに一瞬固まるが、クラスを間違えたのか。今朝の夢のせいだ。と思いながらクラスを確認する。だが、そこは自分のクラスの4組で間違いなかった。
「おい水瀬。」
そう声が聞こえ、振り向くと予想通りの人物がいた。高橋新太郎。委員長だ。
「あ!ちょうど良かった。ここ、俺らのクラスだよな。」
それに委員長はメガネをクイッと上に上げると
「そのことで話がある。付いて来い」
言われるがまま、付いていくと委員長は3組に入っていき、その端に今朝の夢のメンバー、葵と朋也がいた。だが、副委員長の姿はどこにも見当たらなかった。
祐樹と委員長が着くと委員長は、目で合図を送るように朋也にアイコンタクトを送った。
「き、昨日俺らでやったゲーム面白かったよなぁ。」
とわざとらしく言った。
「う、うん。わ、私も凄く楽しかったよ」
これまたわざとらしく、芝居かかったように葵が返した。
「どうした水瀬。鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしているぞ。昨日のゲームのことを忘れたのか?あれは、夢ではない。」
それで事情を把握する。あれは、夢などではないのだと。
「いいか水瀬。俺らが話しているのはゲームの話だ。お前もそれっぽく包んで会話をしろ。」
「わかった。」
「まず、昨日の作戦のことで、俺に言いたいことがあるのだろ?佐藤」
それに佐藤は、委員長を睨むと
「当然だろ!お前、祐樹にあんな無茶な命令を出しやがって!祐樹が死んでいたらどうするつもりだったんだ!」
「俺は、これでも委員長だ。クラスメイトの能力ぐらいある程度把握している。あのメンバーで、水瀬以外に時間稼ぎのできる適任がいなかったそれだけのことだ。事実、水瀬のお陰で勝てたのは揺るぎようのない真実だ。」
「それだけじゃない。お前人探しなんて初めからするつもりなかっただろ?」
それに葵と祐樹は、驚きながら委員長を見る。
「当然だ。他にプレイヤーがいる確率は、かなり低かった。下手に動き回って、水瀬以外のプレイヤーがターゲットと接触するのはなんとしても避けたかったからな。」
委員長は、水瀬の方に視線を移動させると
「水瀬は何かわかったこと、感じたことはなかったか?」
「お、俺?」
「お前以外に誰がいる。このメンバーで戦闘をしたのは水瀬、お前だけだ。些細なことで構わん。話せ。」
それに水瀬は、考えるように顎に手を置くと
「多分だけど、身体能力はかなり上がっていたと思う。体が驚くほど軽かった。あとは…なんか、怖かったけど、、、ものすげぇ楽しかったよ。」
「ゆ、うき?」
と葵が驚いた顔でこちらを見ている。
「お前、何で笑ってんだ?」
「え?」
そこで自分の口を触った時、自分が笑っていることに始めて気づいた。
委員長は、祐樹をまじまじと眺めると
「やはり、俺の目に狂いはなかったようだな。…だが、指示には従ってもらう。」
そう言い残し、委員長は自分の席へと戻っていた。
「いけすかねぇ野郎だ。」
「でも、今日朝早くから来て、色々な情報を集めてくれたのも委員長だよね。」
「何か分かったのか?って言うか、俺らのクラスは?」
それに朋也、下を向き暗い顔になると
「みんな、いなかったことになってた。副委員長も。」
「死んだ、、からか?」
朋也も、葵もそのことには何も言わずに、代わりに葵は
「もうすぐホームルーム始まるから席に着こ?」
その日は、ずっとボーッと窓の外でやたらと鳴いてるカラスを見ていた。
放課後、全員で集まることになった。
「で?なんで俺の家なんだよ!」
と床を両手で叩きながら祐樹が言うと
「学校から一番近かったからだろ。いいから早く座れ。」
それに渋々座ると
「それで、一体何の話だ?」
「次も来る可能性が高い、それが分かっていて無策で飛び込むのは愚者のすることだ。」
「なるほど作戦会議か。」
と、朋也がなにやら考えるようにいうと続けた。
「何をすればいいのかさっぱり分からん!」
それに委員長はため息すら漏らすことなく続けた。
「まず、この4人が次も同じグループだと言う保証はない。」
「グループ?」
「人の話は最後まで聞け佐藤。うちの4組は、40人いた。1グループ5人の単純計算で8グループだ。このグループのメンバーが肝心になってくる。」
「じゃあ、他の奴らにも話した方がいいんじゃないか?」
「そうか、では、クラスの奴らの前で話をすればいい。何人お前の話を信じてくれるか見ものだな。」
それに、朋也は、「あぁ?」と怒ったように突っかかった。委員長はそれを無視すると
「メンバーで一番の当たりは実績もある水瀬だと考える。」
それに目を見開き委員長を見る。
「お前が運動神経がいいのは知っていた。正直な話だが、昨日お前がいるのを見て負けるビジョンは見えなかった。」
そんなに信じてもらっていたと言うのを嬉しく感じた。
「私も、祐樹君がいてくれてホッとしたよ。」
それに、少し照れくさくてなんとなく下を向いた。
「話を続けるぞ。次は、黒夜連だろうな。」
「あ!?そう言えば、3組ってあいつのクラスじゃねぇか。忘れてた。」
「佐藤の言いたいことも分かる。かなりの問題児だが、純粋な戦力はかなりのものだろうな。」
でも、なんとなく同じグループにはなりたくないってのは分かる気がした。
「後は、何か分かったら集合しよう。…念のため全員の連絡先を教えてくれ。」
それに朋也ニヤニヤすると
「とか言って友達が欲しかっただけだな?委員長」
「馬鹿なことを言ってないでさっさとよこせ。あと、新太郎で構わん。」
葵が何かに気づいたように、「あ!」と言うとおそるおそる手を挙げた。
葵「祐樹君と一緒にいる時に空き教室から物音がして、そのすぐ後に祐樹君が襲われたからあまり調べられなかったんだけど、、、じ、実は、部屋を出ようとした時に女の子の笑い声がしたんだよね。」
葵は頬をかきながら躊躇いがちに言った。



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