僕はまた、あの鈴の音を聞く
No.15 プレゼントpart.3
「い、今なんて?」
「僕はあなたの彼女と言ったのです」
「......」
僕は突然の告白に、思考が一瞬停止した。
「とはいっても、僕があなたと付き合っていたのは半年前までです。つまり、『だった』......ということになりますかね」
「......」
「それでは、僕はこのへんで」
少女が立ち去ろうとすると、僕の思考が作動し始めた。
「朱莉って言ったよな。ちょっと待ってくれないか」
「......何ですか?」
少女が、足を止め顔だけをこちらに向けた。
(まだ聞きたいことが沢山ある)
「僕と一緒にプレゼントを選んでほしい」
「はい?」
「なるほど、茜さんのプレゼントを買う為に、信義さんはこのデパートに来ていたのですね」
その後、デパート内に置いてあったベンチに、僕と木霊朱莉は並んで座り、話していた。
「ああ、そういうことだ。しかし僕は茜の好みがイマイチ分かっていない。ということで、朱莉。さっきも言ったがプレゼントを一緒に探して欲しいんだ」
「......良いですよ。僕はこれでもあなたの元彼女です。茜ちゃんのこともバッチリ.....失礼」
朱莉は、先程買っていた炭酸飲料を一気に飲みしだした。
ーよっぽど喉が渇いたのだろうか。
炭酸飲料を容器の半分程飲み干し、朱莉は続けた。
「そういえば信義さん。誰と来たのですか?」
「僕が一人で来ていないってよく分かったな?」
「ただの勘です」
「えっと、言っても分かるか......?」
「まぁ、とりあえず名前だけでも言ってみてください」
「伊藤穂波って言うんだが......」
「ゴホッ、ゲホッ!!」
突然、朱莉は炭酸飲料を口から吐き出し、
咳き込みだした。
「おい、大丈夫か!?」
「は.......はい.......ゴホッ、だいじょうぶ......ゲホッ、です」
ちっとも大丈夫そうに見えない。
というか、ずっと無表情というわけでもないんだな。
咳き込み出す瞬間、彼女の表情が少し険しくなっていたのが見えた。
それが何故か、凄くホッとさせられる。
ひとまず、背中をさすってやると、朱莉は少しずつ息を整え始めた。
「信義さん。ありがとうございます」
「ああ。本当に大丈夫か?」
「安心して下さい。大丈夫です。ところで、先ほどのプレゼントのことですが、良さそうなのに心当たりがあります」
「そうか!それじゃあ、見に行ってみよう」
「はい、早く行きましょう」
ーそういえば、朱莉が咳き込む前、何か話していたような......
「おかけで無事に買えた。ありがとな」
「いえ、お役に立てて良かったです」
茜のプレゼントは、この時期ぴったりのマフラーを買うことにした。
(後は帰るだけ.......の筈)
「朱莉、何で僕の記憶がないことが分かったのか、聞いても良いか?」
僕は、ふと世間話でもするかのように、一番聞きたかった質問を、彼女に投げかけた。
彼女は少し俯き、やがて口を開いた。
「......ごめんなさい。それを今、答えるわけにはいきません。しかし、いずれあなたはちゃんと分かります。その時になって話しても良いですか?」
彼女は真剣にそう答えた。
それに食い下がるのはやめておこう......
「分かった......。じゃあ、さっき言ってた僕の元彼女って言うのは......」
「あれですか。実は半分嘘です」
「え?」
ーちょっと待って。今何て......
「そんな事よりも、信義さん。大丈夫ですか?」
「そんな事って......あっ」
僕は、この時思い出した。
今更思い出しても遅いが、思い出した。
穂波との待ち合わせを、思い出してしまった。
「ヤバイ......」
僕はひとまず携帯を確認する。
メール四九件、着信九四件。
約束の時間が過ぎてから既に二時間が経過している。
ー全く気づかなかった.......
「信義さん、僕は用事があるので帰ります」
「あ、ああ......」
何かを察知したかのように、駆け足で朱莉は帰って行った。
「しん君。何か言い残したいことある?」
突如、後ろから耳馴染みのある声が聞こえた。
「すみませんでした!」
僕が言えるのは、それだけだ......。
僕が帰宅すると、茜がエプロン姿で出迎えてくれた。
「ただいま、茜」
「お帰り。ご飯出来てるよ」
「その前に風呂に入る」
その後、僕は入浴を済ませ、茜の作ってくれた夕食を完食した。
「......なぁ、茜」
「ん?何?」
茜が、テーブルを挟んで向かい側に座った。
「木霊朱莉って知ってるか?」
「知らない......」
茜が知らないなら、彼女は一体......。
「そうか、なら良いよ」
「大丈夫?しん、今朝だって変なこと聞いてきたし」
「そんな心配する事じゃないだろ?」
「心配くらいするよ。兄妹なんだから」
「そうだな......。すまない」
「ううん、別に良いよ。お兄.......しん!」
「言い直さなくても良いのに」
「もう!しんのバカ」
ーそして、僕の休日が幕を閉じた。
ちなみに、僕は次の日。茜に誕生日プレゼントとして、マフラーを渡すことが出来た。
そしてそれは、今の僕には知らない話。
「僕はあなたの彼女と言ったのです」
「......」
僕は突然の告白に、思考が一瞬停止した。
「とはいっても、僕があなたと付き合っていたのは半年前までです。つまり、『だった』......ということになりますかね」
「......」
「それでは、僕はこのへんで」
少女が立ち去ろうとすると、僕の思考が作動し始めた。
「朱莉って言ったよな。ちょっと待ってくれないか」
「......何ですか?」
少女が、足を止め顔だけをこちらに向けた。
(まだ聞きたいことが沢山ある)
「僕と一緒にプレゼントを選んでほしい」
「はい?」
「なるほど、茜さんのプレゼントを買う為に、信義さんはこのデパートに来ていたのですね」
その後、デパート内に置いてあったベンチに、僕と木霊朱莉は並んで座り、話していた。
「ああ、そういうことだ。しかし僕は茜の好みがイマイチ分かっていない。ということで、朱莉。さっきも言ったがプレゼントを一緒に探して欲しいんだ」
「......良いですよ。僕はこれでもあなたの元彼女です。茜ちゃんのこともバッチリ.....失礼」
朱莉は、先程買っていた炭酸飲料を一気に飲みしだした。
ーよっぽど喉が渇いたのだろうか。
炭酸飲料を容器の半分程飲み干し、朱莉は続けた。
「そういえば信義さん。誰と来たのですか?」
「僕が一人で来ていないってよく分かったな?」
「ただの勘です」
「えっと、言っても分かるか......?」
「まぁ、とりあえず名前だけでも言ってみてください」
「伊藤穂波って言うんだが......」
「ゴホッ、ゲホッ!!」
突然、朱莉は炭酸飲料を口から吐き出し、
咳き込みだした。
「おい、大丈夫か!?」
「は.......はい.......ゴホッ、だいじょうぶ......ゲホッ、です」
ちっとも大丈夫そうに見えない。
というか、ずっと無表情というわけでもないんだな。
咳き込み出す瞬間、彼女の表情が少し険しくなっていたのが見えた。
それが何故か、凄くホッとさせられる。
ひとまず、背中をさすってやると、朱莉は少しずつ息を整え始めた。
「信義さん。ありがとうございます」
「ああ。本当に大丈夫か?」
「安心して下さい。大丈夫です。ところで、先ほどのプレゼントのことですが、良さそうなのに心当たりがあります」
「そうか!それじゃあ、見に行ってみよう」
「はい、早く行きましょう」
ーそういえば、朱莉が咳き込む前、何か話していたような......
「おかけで無事に買えた。ありがとな」
「いえ、お役に立てて良かったです」
茜のプレゼントは、この時期ぴったりのマフラーを買うことにした。
(後は帰るだけ.......の筈)
「朱莉、何で僕の記憶がないことが分かったのか、聞いても良いか?」
僕は、ふと世間話でもするかのように、一番聞きたかった質問を、彼女に投げかけた。
彼女は少し俯き、やがて口を開いた。
「......ごめんなさい。それを今、答えるわけにはいきません。しかし、いずれあなたはちゃんと分かります。その時になって話しても良いですか?」
彼女は真剣にそう答えた。
それに食い下がるのはやめておこう......
「分かった......。じゃあ、さっき言ってた僕の元彼女って言うのは......」
「あれですか。実は半分嘘です」
「え?」
ーちょっと待って。今何て......
「そんな事よりも、信義さん。大丈夫ですか?」
「そんな事って......あっ」
僕は、この時思い出した。
今更思い出しても遅いが、思い出した。
穂波との待ち合わせを、思い出してしまった。
「ヤバイ......」
僕はひとまず携帯を確認する。
メール四九件、着信九四件。
約束の時間が過ぎてから既に二時間が経過している。
ー全く気づかなかった.......
「信義さん、僕は用事があるので帰ります」
「あ、ああ......」
何かを察知したかのように、駆け足で朱莉は帰って行った。
「しん君。何か言い残したいことある?」
突如、後ろから耳馴染みのある声が聞こえた。
「すみませんでした!」
僕が言えるのは、それだけだ......。
僕が帰宅すると、茜がエプロン姿で出迎えてくれた。
「ただいま、茜」
「お帰り。ご飯出来てるよ」
「その前に風呂に入る」
その後、僕は入浴を済ませ、茜の作ってくれた夕食を完食した。
「......なぁ、茜」
「ん?何?」
茜が、テーブルを挟んで向かい側に座った。
「木霊朱莉って知ってるか?」
「知らない......」
茜が知らないなら、彼女は一体......。
「そうか、なら良いよ」
「大丈夫?しん、今朝だって変なこと聞いてきたし」
「そんな心配する事じゃないだろ?」
「心配くらいするよ。兄妹なんだから」
「そうだな......。すまない」
「ううん、別に良いよ。お兄.......しん!」
「言い直さなくても良いのに」
「もう!しんのバカ」
ーそして、僕の休日が幕を閉じた。
ちなみに、僕は次の日。茜に誕生日プレゼントとして、マフラーを渡すことが出来た。
そしてそれは、今の僕には知らない話。
「学園」の人気作品
書籍化作品
-
-
89
-
-
267
-
-
29
-
-
3395
-
-
124
-
-
37
-
-
1168
-
-
4
-
-
969
コメント