僕はまた、あの鈴の音を聞く

りんね

No.12 膝枕

目を覚ますと、僕はどこかのベンチに横向きで寝ていた。

しかし、冬のベンチにしてはおかしい感触が一点。

頭越しに伝わる、暖かい感覚。

これはもしや、世に聞く膝枕というやつではないだろうか。

冬の寒さと相まって、これがまた驚くほど快適だ。

しかし、僕はある疑問を提唱する。

この膝の主は誰かということだ。

ーそして僕はゆっくりと、膝の主の顔が見える向きに、体を向けた。

「.......!?」

膝の主は僕が考えうる可能性の中で、最も可能性が低い人であり、驚きのあまり僕は声を失った。

「穂波?」

「ん? ……わっ! し、しん君、起きたの!?」

「ちょっ、待て......痛っ...…!!」

驚いた穂波が立ち上がり、それとともに僕も体制を崩した。

地面に頭が衝突する。

「あっ、ごめんしん君。大丈夫?」

「大丈夫じゃない......」

膝枕の主が穂波だったという驚きと、頭の痛みが相まって、軽いパニック状態だ。

「......何で穂波が?あと、何で膝枕?」

頭を抑えながら、僕は穂波に向かって尋ねる。

「何でって。この公園に来るように言ったのしん君だし、膝枕は......私が......」

「......?」

「.......何でもない!忘れて!」

ー忘れてって......まぁそんなに気にすることじゃないか。

僕はひとまず忘れることにし、辺りを見回した。

すると、待ち合わせの公園に着いていたと言うことに、今更ながら気づく。

「いつの間に......」

「しん君ってば、待ち合わせぎりぎりに来たかと思ったら急に倒れて......ほんと、びっくりしたよ。もしかして、寝坊でもした?」

ーそうだ、思い出した。僕は、あの鈴の少女を追いかけていて、いつのまにか気を失って.......。

「なあ、穂波」

「ん?どうしたの、言い訳でも言うつもり?」

「そうじゃない。今日、変なお面を付けた人を見てないか?」

「変なお面......? うーん、ごめん、見てない。一応聞くけど、変なお面って例えばどんな?」

「羊のお面だ......。あっ、あと手首に銀色の鈴を付けてたから、見てなくても、音がしたかもしれない」

それから少し考えるように穂波は顎に手を添えた。それから顎に添えた手を下ろし、

「......ごめんね。やっぱり分かんない。そんなに特徴的な人がいたらまず忘れることはないと思うし」

「それもそうだな。悪い、変なこと聞いて」

「ううん。あっ、これからどうする?結構時間経っちゃったけど、今日は茜ちゃんの誕生日プレゼント買いに行くんでしょ?」

ーそうだった。もとはといえばそれが目的なのだ。

「ああ、茜の誕生日は明日だからな。今日行かないと間に合わない」

「そうだね。じゃあ、まずは近くのデパートにでも行ってみようか」

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