一万の聖剣を持つ精霊

夢野つき

猫族の村 Ⅱ

 俺とイルミナは特に話すこと無く村に向かった。
 悲惨なものだった。村の全ての家がドラゴンの炎で全焼し、三日たった今でも焼け跡から熱を感じる。

「イルミナ、大丈夫か?」
「うん、大丈夫です」

さりげなく聞いてみたがイルミナはそう言って村の中を歩き出した。
 足下には丸焦げになってもう誰だか認識出来ない様な死体が落ちていると言うのに、イルミナは一つも顔色を変えずに歩いている。しかし、しっかりと死体は確認はしているようで、死体を見ては少し安心しているようだった。大丈夫か、この子?

「おい、死体を見て安心するなんて縁起の悪いような事をするな」
「ッ!ご、ごめんなさい...」

イルミナは叱られている子供のように小さくなり謝ってきた。よく見てみると、彼女の顔色もあまり良くはなかった。

「さっきから何を探している?」
「...お母さんを探しているの...」

あたりをキョロキョロしながらイルミナは言う。そして、また探し始めた。

「...」

 イルミナの背中は非常に小さなものだった。言葉だけは強がっていても、現実は今にも声をあげて泣きたそうだった。

「お前のお母さんは何か特徴的な物を付けていたか?」
「一緒に探してくれるの?」
「ああ、一人より二人で探した方が早いだろう。それに、今は俺はお前と契約をした身だ。お前の近くでしか探せんが、そっちの方が効率が良いだろ」
「あ、ありがとうです」

 そして俺たちは話し合い、遺体をいっか所に集めていくことにした。
 俺とイルミナは朝から夕方までさがし、遺体を集めていった。しかし、イルミナのお母さんの遺体は見つける事が出来なかった。

「お前のお母さんはここにはいないのか?」
「うん、見間違える訳無いもの」
「だったら、お前のお母さんはドラゴンが襲ってきた時、お前を逃がした後に逃げたのかもしれんな。まあ、村の遺体も全部集めたんだ。埋めといてやることくらいはしてやろうぜ」

彼女はあまり乗り気ではなかったが頷いた。



「ふう、なんとか埋め終わったな」「そうだね…」

「まあ、村はこんな感じになってしまったが俺たちはまだ生きている。ドラゴンの死体も洞窟に置きっぱなしだし、一旦洞窟に戻って話し合おう」

そうして、俺はまた洞窟に戻っていくのであった。

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コメント

  • ロキ

    「お前のお母さん」が「俺のお母さん」になってませんか?これからも頑張ってください^ - ^

    1
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