一万の聖剣を持つ精霊

夢野つき

精霊契約

 決着はあっさりしたものだった。
 盾はいくつも焼かれてしまったが、最後に放った聖剣がドラゴンを仕留めたようだ。いくらドラゴンでも、魔物なので聖剣の力が蓄積されて体が持たなかったようだ。
 聖剣や盾は消え去り、残ったのは俺とイルミナだけになった。

「おいッ、大丈夫かイルミナ!」

俺は必死に声をかけた。だが、返事は帰ってこない。辛うじて命はあるが風前の灯と言ったところだ。今の俺にはイルミナを回復させる手段を持っていない。だって、前の杖は試作品であって俺は使っても意味が無いから、たくさんは持っていないのだ。
 このままでは死んでしまう。なんとかして助けないと。すると頭の中に彼女との思い出が流れて来る。初めは話し相手だと思っていたが、いくつもの間話していると、時々見せる笑顔に俺は彼女に惹かれて行ったのだった。これがなんの感情かは分からないが、ますます見捨てられなくてなってしまった。
 そんな事を思っていると突如声が聞こえた。

《--彼女を助けたいか?--》

「ッ!?誰だ!」

《--安心せい、お主の敵ではない。私はお主を助けたいと思っておる。--》

誰も居ないのに声が聞こえる…いや、これは頭に直接語りかけているのか?

《--私は精霊王--今のお主には二つの選択肢がある。一つがその少女を見捨てる事だ。--》

「そんな事出来るわけないだろ!」

《まあ人の話をよく聞け、もう一つが精霊契約だ。精霊契約とは...》

「そんな説明どうでもいい!それでイルミナが助かるなら早くやり方を教えろ!」

《まったく、こっちは王なんだから話を聞いてよ…》

精霊王はいきなりすねた子供のように喋り出した。なんだこいつ。

《まあいいよ、教えますよ…。契約方法は色々あるが、簡単な方でお主から、彼女に接吻する事じゃ。幸いお主も彼女も心を開けているからの》

 それを聞いた瞬間、俺の行動は早かった。きっとイルミナを救う事でいっぱいで脳が正常ではなかったのだろう。
 気がつくと俺はイルミナにキスをしていた。前世を童貞で終わらせた俺がだ...。そして、体が中から熱くなってくる。とてつもなく熱いのだ。

「がッ、あがッ!あああぁぁぁぁぁぁ!」

《まあ安心せい、気絶して起きた時は彼女はもう大丈夫じゃろう。だからゆっくり眠れ---》

 そうして、俺の意識は途切れた。

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