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みんな異世界大好きやな。どんだけ異世界行きたいねん。

長谷川壮真

第十三話 俺がおらん間に何事や

「町の探索って言っても、何にも見当たらないよな」

 湊に頼まれたことを真面目にやりながらもぼやく山田は、やはり何かデータ世界の手がかりになるものはないかと隅々まで部屋のあちこちを探し回っていた。

「もうこれで九件目なのに、本の一つも見つからないなんて、やっぱりこれ小夜ちゃんの他に誰かいるんじゃない?」

 姫白が諦め口調になって、部屋に散らばった木材の破片を放り投げる。多分、この街が壊された時に出たものだろう。木やガラスの破片なんかがあちこちに散らばっている。

「ヴィオスの仲間とか?」
「んー、でもどうしてデータ世界の人たちがいた証拠も消してるの?」
「消えきってないけどな。この建物なんかもそうだろ、あんなバケモンの仲間なんだったら、知能がそこまで発達してないのかもなぁ」
「ふーん」

 姫白がつまらなそうに放り投げた木片がちょうど地面についた瞬間だった。

「きゃあ!」

これまでの振動とは比べ物にならない揺れが爆発音とともに訪れ、山田たちがいる建物を崩した。
 建物の二階にいた山田と姫白は一瞬の浮遊感のあと、崩れた床へと吸い込まれていく。

「痛ってぇ」

 崩れた屋根の残骸に埋もれた山田が、なんとか瓦礫を押しのけて頭を出す。

「さ、紗雪? 大丈夫かー?」

 先ほどまですぐそばにいたガールフレンドの姿が消え、山田は冷や汗を吹き出しながらキョロキョロと辺りを見回す。

「富典ー! ちょっとこれどけて!」

 姫白の声だ。どうやら山田の数メートル先にある、木製の板の下から聞こえてきているようだ。

「あいよー」

 山田がレンガやらなんやらの瓦礫に埋まった足をごそっと抜き出し、声が聞こえる方へと近づく。
 板をあげると姫白の顔だけがちょうど出てきて、山田は今のこの状況がどんな状況かなにも考えずに一人で笑い転げ出した。

「あははははははは!」
「な、なによ!」
「いや、なにそのお尻隠して顔隠さずな格好」
「し、仕方ないでしょ!? 早く出してよ!」
「はいはーい」

 山田は未だにクスクスと笑いをこらえきれない様子で立ち上がり、姫白の周りにある瓦礫をどかす。

「あとで燃やしてやるから」

 やっとの思いで外に出られた姫白は、ギロリと山田を睨みつけふと気づく。

「あれ、杖がない」
「紗雪、部屋の中漁ってた時机に立てかけてたじゃん」
「あっ・・・・・・」

 山田の言葉で、「そういえば・・・・・・」と姫白はその時のことを思い出す。

「じゃあ、この瓦礫の下に杖があるってこと?」
「それ以外なにもないだろ」

 山田の即答で、二人の間に沈黙が流れる。
 山田は幸いなことに腰に剣を吊るしたままで、姫白のような事態にはなっていない。

「杖もそうだが、今の地震、一体何だったんだ」
「さぁ、またヴィオスかな」
「だとしたら小夜は!? 大丈夫なのかよ」
「うーん、一緒に萬原さんと宇水さんがいるからひとまず安心なんじゃない? とにかく私たちも急ごう」

 街の探索は萬原と宇水、山田と姫白に分かれて行っていた。小夜は日替わりで面倒を見ている。

「そうだな、杖は?」
「そんなの後でいいじゃない。今は私たちの他三人の安全確認!」

 データ世界に来る前、あれだけミスを犯して湊を困らせていた人とは思えない判断力。
 山田は紗雪の言う通りか、と黙って姫白についていくことにした。こんな事態に陥った時、必ず聞こえてくるはずの声が聞こえて来ず、なんとなく焦っていた山田にとって姫白が先陣切って走ってくれることはありがたかったが、男としてなんとなく負けた気がして走るスピードを上げ、姫白を追い抜き手を引く形で萬原たちの元へ向かった。

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