ほとんどチートもらえないと言われたのに十分チートな件

スザキ トウ

第11話


「諸君!  我らが敬愛する国王陛下は崩御された!」

広場に真の目的を知る者もただリンのための傭兵団とだけしか知らない者も全てが集められた。

「しかし諸君!  国王陛下は病によって崩御なされたわけではない!」

ざわっ

国王陛下が崩御されたのは全員が知るところだったので特に動揺は無かった。
だが次にリンの口から発せられた言葉に動揺が広がり広場全体がざわついた。

「我が弟ロン=オードル=イーリスが野心に溺れた宰相ガルドルトに唆され国王陛下を手にかけたのである!
ガルドルトの思い描く筋書きはこうだ!
国王陛下を己の欲のために手にかけたロン=オードル=イーリスを討った英雄ガルドルトが国王となる!
奴は王位を簒奪さんだつする気だ!
当然そのためには正妻の子ではないが長男である私が邪魔だ!
だから私を害そうと刺客をさしのべてきたのを躱し何とか逃れてきた!」

リンはここで一旦止めまるで広間にいる全員を一人一人見るかのように見回した。

「このような卑劣な宰相を許してなるものか!  我らが愛するこの国の玉座に奴を座らせてなるものか!
そして私には幸運なことに諸君らがいる!
この巨悪を討つには諸君らの力が必要だ!」

いつの間にか広場全体が熱を帯びていた。
ここにいる者は所詮傭兵。この国で生まれ多少の愛国心はあれど本当は国王が誰になろうがどうでもいい。
だがリンの演説により宰相に対する怒りに震えたのだ。
ここでリンは追い討ちをかける。

「諸君らがイーリス王国に正義を戻したならば多大な名誉、そしてそれに相応しい多くの金品、武功が大きい者には爵位をも与えよう!」

この言葉に広場全体は大歓声に包まれた。
リン殿下万歳!  王位をリン殿下のもとに!  宰相を許すな!  いざ王都へ!
皆が思い思いにリンを称え、宰相に対する怒りの言葉を口にした。
その大歓声の中リンは手を振りながら拠点の奥へと入っていった。









「さてと……皆集まっているな?」

拠点の一番奥の部屋には真の目的を知る者が集められた。

「はっ!  全員揃っております!」

「そうか。ではすぐにでも出発し宰相や弟が俺の反乱に気付く前に迅速に事を終える。民への印象操作の準備もできている」

「すでにいつでも出撃する準備はできています。いつでもご命令を」

「わかった。……これより反逆者排除と秩序の回復のため王都への進軍を開始する」









王都への進軍は大した問題もなくスムーズにすんだ。
予定通り、いやそれ以上の速さで進んだためまだ敵は反乱に気づいてないだろう。
王都の城壁は目前に迫っていた。

「き、貴様ら!  一体何の真似だ!  まるで戦争をしにきたようではないか!  止まれ!  止まれーい!

門を守る兵士がこちらに叫んだ。
当然だ。傭兵団とはいえこの人数は軍。小規模な戦争ならすぐにでも始められるほどの人数が武装をして進んでくるのだ。
心なしか門兵には怯えて震えているように見える。

「私だ」

「こ、これはリン殿下!?!?」

「よい。早く我らを通せ」

「し、しかし!  リン殿下は突如行方をくらましたとの報告がありまして……」

「その情報は誰からだ?」

「はっ!  その……ロン王太子殿下の名の下でございます」

「ふっ、そのロンが謀反をおこした。宰相に唆され国王陛下を手にかけたのである。
このままではその謀反人が王位に就いてしまう。我々はその玉座を取り戻せねばならぬのだ」

その瞬間門兵達はざわついた。
当然だろう彼らは国王が崩御したことすら知らないのだ。

「しかし……その……」

「くどいぞ!  これ以上我らの足を止めるのならばそなた達もロンの手先とみなすしか無くなるぞ!」

リンの言葉に隊長を始め他の隊員も顔を青ざめさせる。
このような大逆罪、共犯といえども貴族は直系の家族は死罪。家は取り潰され血縁の繋がる他家にも不名誉烙印が押される。ましてや平民など一族皆死罪である。

「そなた達は己の職務を全うし我らを通せばそれで良い。ただし宰相やロンがこの門から逃げようとすれば捕えておけ」

「はっ!」

隊長はすぐに伝令を走らせる。
俺らを無視して通すようにと今リンが言ったことを伝えるためだろう。

「では殿下。ご武運を」

「うむ」

こうして俺は悠々と門をくぐる。
リンのやつの堂々っぷりといったら大したものだ。もし王族に生まれてなかったら劇団員として成功していたかもしれない。

「殿下。流石に市民が何事かと困惑しております」

「致し方があるまい。今はただ民を怖がらせなければそれで良い。
それよりもそろそろ第7部隊と第8部隊を詰所に向かわせろ。
横槍を刺されたらかなわん足止めをさせておけ。
我らが戦うのは王宮にいる警備兵と近衛兵のみで良い」

「はっ!  おいゴドリックとサムエルを呼べ!」

すぐに2つの部隊が別れてそれぞれ別の方向へ向かった。彼らが第7部隊と第8部隊なのであろう。

「王宮の守りは予想通りの人数でしょうか?」

「あぁ。警備兵が300に近衛兵が500。
我らの方が少ないがそこは迅速にことを進めて全軍が動く前に片付ける」

「しかしこちらは傭兵の集まり。厳しい戦いになりますな」

「だから優秀なもの達を集めてきた。信頼しているぞ」

「もちろんでございます。お任せを」

「さて……まずは門を打ち破らねば中には進めぬ。カイト、来てくれ」

おいおいまさか……嫌な予感がするぞ

「カイト、お前の第9部隊はクセが強いが1番の攻撃力を誇る。頼んだぞ」

ちくしょう!  一番危険じゃねーか!  しゃーない!  やってやる!

「わかった任せとけ!  第9部隊集合!!!」

俺の号令に少し離れたところで固まって進んでいた第9部隊がすぐに集まる。
ちょっと前まではなかなか集まらなかったからこれだけでちょっと感動する。

「俺らが一番槍の名誉をもらった!  お前ら暴れろ!」

「マジかよ一番槍?  こえー」
「一番危険じゃね?  マジで?」
「うそん……ヤダー」

うん。わかってた。
これが騎士ならば一番槍の名誉に燃えるんだろうがこいつらは傭兵の寄せ集めだ。
名誉なんか知ったこっちゃないし自分の命を第一に優先する。
士気が上がるわけがなかった。
だがここで予想外のことが起こった。

「うるせぇお前ら!  一番槍だぞ!  ここで手柄を上げて目立てば報酬はがっぽがっぽもらえるぞ!」

「報酬……」
「大量の金……」
「もしかしたら貴族になれるかも……」

アデリナの言葉で傭兵達は少しづつやる気を出し始めたのだ。
やはり傭兵は報酬という言葉に弱かった。
さらにそこでジョーカーが追い打ちをかけた。

「フフフこの程度のことで怖気付いてるなんて本当に歴戦の傭兵達ですかぁ?
第9部隊の面々は弱虫のお子ちゃまですねぇ」

「あ゛ぁ゛?」
「誰が弱虫だぁ?」
「あーあー楽しみだなー暴れるの楽しみだなー」
「ぶっ潰す!  敵は全員ぶっ潰す!  ついでにどさくさに紛れてジョーカーもぶっ潰す!」

アデリナとジョーカーのおかげで士気は爆発的に上がった。
これならいけるかもしれない。
ちなみにジョーカーは執事だから戦闘員ではないのだからルナと一緒に置いてこようと思ってたのだが
「私は"優秀"な執事ですよ?  "優秀"な執事はどんな時も主人の側を離れませんよ」
と言ってなんかついてきた。よーわからんやっちゃ。

とにかく!  いよいよ戦闘が始まる。
これから大勢に、それも罪のない仕事を全うしてるだけの人も殺すことになるのだろう。
だが俺はもうリンを手伝うと決めた。
ならばやるしかないんだ。

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