ほとんどチートもらえないと言われたのに十分チートな件

スザキ トウ

第10話


「おいおいにーちゃん!  審判は俺だぜ?」

ヴェルが黒髪イケメンにガンをつけながら向かっていった。イイゾモットヤレ
自分が審判をしていたのに勝手に横から入られて勝負を終わらせてしまったから文句を言わなきゃ気が済まないのだろう。

「おっと失礼しました。だがしかしあのままでは怪我をしてしまいそうでして……
我が[夢への翼]は誰一人として怪我をさせてるほど余裕がないのですよ。
……毎回口に出すたびに思うのですが夢への翼なんてダサい名前誰がつけたんですかね……」

「う゛っ……」

ヴェルも本当はもっと早めに止めに入るべきだったのはわかっているのだろう。
黙ってしまった。

「さてさてカイト様。お見事でございました。私の名はジョーカー。
家事から雑務までそつなくこなす優秀な執事でございます。
この度はリン=エイリーン=イーリス殿下の命でカイト様に仕えさせていただくことになりましたのでよろしくお願いいたします」

自分で優秀とか言っちゃうのかよこのイケメン。おーおーイケメンは何言ってもキマってんなぁ。
だけどリンもちゃんと考えてくれてたのか。俺は指揮したことがないから多分その補佐もできる人材なんだろう。
あとイケメンもといジョーカーよ。
そのダサい名前つけたの多分その殿下だぞ。









えーこちらカイト。こちらカイト。
1週間第九部隊と共に訓練をしてわかったことがある。
それはこいつら問題児しかいねえ。
この一つだけだ。
まずヴェル!  こいつは見かけ通り問題児だ!  訓練はサボるしイタズラはするし口は悪いしどこの不良だコラ!
はい次アデリナ!  この女根は真面目なんだけど女の子扱いされたらキレる。
それはもう手がつけられないほど暴れる。
その度に俺が鎮圧しないといけないから大変だ!
はい次行きましょうエルナ!
アデリナとエルナだけがこの部隊の女性隊員なので目立ってはいたが速攻で別の目立ち方をしてくれた。
実はこの娘とんでもないドジなのだ!
積んであった訓練用の木剣とかはひっくり返すし何もないところでコケてるし皿は割るし!
なんでこんなドジな娘がいるんだろうと思ってたけど実はこの娘槍の達人なのだ。
そりゃもう目にも見えない槍さばきでやればできる娘じゃんと感動したものだ。
足元のネズミに驚いて槍をぶん投げて危うく俺の頭から槍が生えるところだったがな。
後は訓練で絶対に一つは備品を壊すやつとか常に酔っ払ってるやつとかな……
いや優秀な奴もいる……いるんだがそういう奴はすぐに他の部隊に配属先を変えられるから結局は俺の部隊には問題児しか残らない。

「おや?  どうしました?  そんなカエルが死の間際に走馬灯を見てるような顔をして」

後このジョーカーも優秀なんだが毒舌すぎて俺のメンタルをゴリゴリ削ってくれる。

「いやな……現実逃避をしててだな……」

「?  よくわからないことを言ってないで気を張ってください。いつ出撃するかわからないのですから」

「はい……」

そうなのだ。いつ出撃するかもわからないから精神的にキツい。
いや、平気なんだけどね!?  これでも元自衛官ですから!?
まぁ強がって見たけど実際はキツい。
いっそ早くしてくれと思ってしまう。
あぁそうだそろそろ部隊の方が落ち着いたからそろそろルナに稽古をつけてやらないとな。
待ってろ俺の心のオアシスよ!  

明日ルナに稽古をつけてあげようとテンションを上げていた時だった。

【国王ライド=エミリス=イーリス陛下が崩御なされたぞ!!!】

その報と共に夢への翼の拠点全体に緊張が走った。

「やっとか!」
「ついにきたぞ!」
「全員部隊に戻り戦闘態勢を整えよ!!」
「物資の確認も怠るな!」

ハイドを初めとした各部隊長が指示を飛ばす。
俺は細かい確認をジョーカーに任せてハイドの元へと駆け寄る。

「ハイド!  これからどうするんだ!」

「カイトか!  我々は今から全ての準備を整えいつでも出撃できる万全の状態にしリン殿下を待つのみだ。」

「それはいつ頃に?」

「わからん!  国王陛下の崩御と共に王宮を抜け出してこちらに来られる予定だ。
皇太子の側近達はリン殿下の動向を探っていたからな。危害を加えられないようにすぐにでもこちらまで来たいはずだ」

「ちなみに出撃する理由は?」

「さあな。だが理由も無ければただの反乱だ。リン殿下が適当な理由を考えてるさ」

「なるほど。つまりはリンが到着しないことには何も始まらないか」

「そう言うことだ。王都からここまでは速馬を飛ばしても最低3日はかかる。
リン殿下が到着するまで待つしかないさ。
カイトは隊に戻ってきゅうそk……」

ハイドの声は多くの馬が駆ける音によって掻き消された。

「おいおい早いな……まさかたまたま近くに来ていたのか?  運がいいお方だ」

「おぉ!  カイトか!」

「リン!」

「カイト!  ハイド!  ついに時がきたぞ!  
夜明けと共に王都へ出撃だ!  これより7日以内に王都へ辿り着き王位を我が者とする!」

「はっ!  して理由は?」

「宰相ガルドルトが皇太子ロン=オードル=イーリスを唆し国王ライド=エミリス=イーリス陛下を亡き者にし王位を乗っ取った。
我々は反逆者を倒し王位を取り戻すために王都へと出撃する!」

「リン!  7日なのは何故だ?」

「私が王都を離れてる理由を適当に作らせたからな。限界が7日だったのだ。
つまり7日を越えれば私は怪しまれ最悪手配される。だから7日なのだ」

なるほどな。しかし速馬を飛ばしても3日。それがこの大人数で王都へ向かうのならばかなり足は遅くなってしまう。
7日……ギリギリだな。それもかなりの強行軍だ。
兵の疲弊はかなりのものだ。それでも戦えるのか?  

「カイト。厳しい戦いになるが頼むぞ」

「リン……あぁ、任せておけ」

やるしかないんだ。リンの夢、俺の目的のためには!

だがリン……そう都合よく王都を離れて近くにいるわけがない。
手回しの準備の良さも異常だ。
お前まさか……

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