ほとんどチートもらえないと言われたのに十分チートな件

スザキ トウ

第8話


「そうか!  入団を決意してくれたか!
我々[夢への翼]は君を歓迎するぞ!」

朝ロビーにルナと一緒に行くともうすでにイケメンは待っていた。
それほど俺のことを勧誘したいのかと苦笑しながら入団することを伝えるととても嬉しそうに勧誘の言葉を述べた。

「そうだ昨日帰ってからしまったと思ったのだが自己紹介をしてなかった。
私は[自由の翼]団長兼第一部隊長をやっているハイド=ルクセントだ。
そしてこっちの赤髪の大男が第二部隊長のエルク=グルッセンだよ」

そう言えば名前を聞いていなかったな。
しかし団長と部隊長自らに勧誘されてたとは驚きだ。
暇なんだろうか。

「俺は日向ひゅうが快斗かいと。あー日向の方が性だ。
そして彼女はルナ。あの時助けた子だよ」

「ほう?  カイトはこの国の人間ではないのか?  珍しいな」

「そうなのか?」

「当たり前だろう。今は比較的平和とは言え2000年続く乱世の中だ。
無いとは言わないが他国の人間がこの国にいることは非常に珍しいぞ?」
「そんな事はとりあえず置いといて俺らの拠点で話さないか?」

「拠点?」

「あぁすまない忘れてた。実はこの街に我々の拠点があってだね。
ついておいで、案内しよう」

はーん。なぜ団長がこの街で俺を見かけるのだろうと思ってたらそういうことか。
そりゃ拠点がここにあるのならここら辺にいるわ。



「ここが我々の拠点だ。ようこそ!  我らが[夢への翼]へ!」

拠点は徒歩10分というまさかの場所にあった。
てか俺毎日ここの前を通って守りに通ってたわ。
デッカい建物だなぁなんだろうと思ってたんだがここが拠点だったのね。
しかし……中にいる人を観察すると全員が金属製の防具によく手入れされた武器。
あれは槍でこっちは剣か、あれはボウガンと言うやつかな?  実物見たことないからよくわからないけども。
しかも全員が同じデザインで統一されてて信じられないほど装備がいい。
これはちょっと異常じゃないか?  なぁQ&Aヘルプさん。

Aアンサー。そこらの傭兵団とは思えないほど装備がよくデザインも統一されています。これはおそらく支給されてるのだろうと推測できます。
また、庭の奥を見ると騎馬で訓練をしてる一団が見えます。普通の傭兵団だと騎乗で戦う機会などほとんどないと思われますので不自然です。
ここからまるで正規軍のような印象を受けます〉

さすがQ&Aヘルプ先生、優秀ね。
たしかにそうだ。傭兵団は多少の規律はあれどもっと荒くれ者のイメージだがここはしっかりと規律が守られていて軍のような印象を受けるのだ。

「さて、詳しい説明をするからひとまず部屋の中に入ろう。エルクは訓練に戻ってくれ」

ハイドがそう言うとエルクは頷いてあの騎馬で訓練してる一団の方へと去っていった。
その背を見届けてハイドは奥の部屋へと俺らを案内した。


「さて、詳しい説明をする前にルナちゃん?  だっけ?  君は今から話すことを秘密にできるかい?
カイトの連れだから特別に話を聞くことを許可するが秘密にできないのなら君には聞かせられない」

部屋に着くなりハイドは今までほとんど言葉を発さずについてきていたルナに向けて言葉をかけた。

「もちろんです。私はカイトさんの迷惑になることはしません」

「よろしい。ならば今から詳しく説明しよう。
この傭兵団を作った高貴な方はな……」

「俺だ!」

ハイドの説明の途中でいきなりドアが開かれいきなり男が入ってきた。

「で、殿下!?」

「リ、リン!?」

「この[夢への翼]を作ったのは俺、リン=エイリーン=イーリスだ!」

なんといきなり部屋へと乱入してきた男は一昨日友達になったばかりのリンだった。

「リン!?  どうしてお前がここに!?」

「おい!  カイト失礼だぞ!  こちらの方は国王ライド=エミリス=イーリス陛下のご子息、リン=エイリーン=イーリス殿下であるぞ!」

「リン=エイリーン=イーリス殿下ってえぇぇぇぇえええ!?」

「はぁぁぁぁあああ!?!?  リンが王子!?!?  お前平民ではないと思ってたけどまさかの王子様かよ!?」

「カイトォォォオオ!  殿下になんて口を聞くんだぁぁぁぁああ!」

俺は混乱して大声でリンに詰め寄るしハイドはその俺を見て黙らせようと大声を出すしルナはただひたすら驚いてひっくり返りそうになってるし場はカオスだった。

「よいハイド、カイトは俺の友だ。カイトにはその言葉使いを許す」

「殿下!?  しかし!?」

「よいと言ってるだろう!  お前が黙れ!」

ハイドとリンが何やら揉めてるけど俺はそれどこではなかった。

リンが王子?  俺が連れ回してたのは王子?  串カツとか一緒に食べ歩きしたのが王子?  夜景を一緒に見たのが王子?
うそやん。
え?  え?  マジ?

「おいカイトもそろそろ帰ってこい。俺が王子だ受け入れろ」

「いやいやいや!  簡単に受け入れることはできないだろ!  王子て!  王子て!
うそやん!  」

「本当だ。俺が王子。この国の王子様」

リンが王子……リンが王子……ok。
理解した。受け入れたくはないけど受け入れた。

「理解したようだな。よし、俺が直々に説明してやる。
俺がこの傭兵団を作った理由だがな。
父上の命はもう長くはないんだ。
数ヶ月前から病に侵されて日に日に弱ってる。
もういつ亡くなってもおかしくない。
そして父上が崩御なされば王位は俺の弟であるロンが継ぐことになる。
ここまではいいな?」

「弟が?」

「俺は長男だが正妻の子ではないからな」

「おいおいまさかリン……」

すごく嫌な予感がする。リンがとんでもないことを言い出そうとする気が……

「察しがいいなカイト!  そうだ!  弟には近衛兵が付くだろう。
ならば俺はこの傭兵団で力を持って対抗し王位を奪う!」

やっぱりかーい!
つまりこの傭兵団で反乱を起こすって事だろ?  マジかよ

「カイト、止めても無駄だぞ。
今のままじゃダメだなんだ。
弟が嫌いなわけでもない。むしろ好まし君思っている。
だがあいつが王となってはダメだ。
弟は父上によく似てる。
父上は平和を望む心やさしき王だ。
弟も王となったら父上のような王となるだろう。
だから不味い。父上の代で東の大国とも言われた我がイーリス王国はかなり国力が削られた。
父上が軍費を削ったせいで我が国の軍部は縮小。
それを好機と見た他国が攻め入って土地を切り取った。
だが軍部は縮小しても大国は大国。
本気で戦争をすれば取り返して反撃することは余裕だ。
だが父上はすぐに和平を結んだ!
領土を切り取られたままなのにだ!
それから周りの国はたびたび我が国に攻め入っては領土を切り取り和平を結ぶ。
この繰り返しだ!  中には他国の騎士団が盗賊に扮して我が国の民を襲ってると言う情報も入ってる。
なのに何もしない!  戦争は起こしてはならぬと言うがこれでは平和などではなく我が国の民が一方的に侵略されているだけだ。
絶対に今の状態を続けてはならぬ。
絶対に弟に王位を譲ってはならないんだ。
力を貸せ、カイト」

リンは強い眼差しで訴えかけてきた。
手は爪が掌に食い込んで突き破ってしまうのではないかというほど強く握りしめている。

なるほどな。あの盗賊団はそう言うことか。そりゃ許せねえよな
自分の国の民が襲われていて何もしない国王。
そして自分は王族なのに何もできなかった。
相当悔しかったんだろうな。

「リンが王になったら今の状況を打破して国民を守れるか?」

「あぁ……絶対に今の状況を変える。
俺はこの国の民を守る。そしてそれで終わるつもりはない。
俺がこの乱世を終わらせる。
武力を持ってこの国を統一してやる!  
そしたら二度とこのようなことは起こらないだろう?  我が国だけではなく全世界の人間が侵略されることはない。
それにさ、それが叶ったら俺はこの世界のいろんなところに行けるだろ?  
俺はこの狭い世界を広げるんだ。
約束しただろ?  俺の世界を広げる手伝いをしてくれると。
手を貸してくれるな?」

リンの瞳には強い意志が宿っていた。
すごい覚悟を決めた目だ。
その目は確かに世界を統一する道を見据えているのだろう。
そしてその道は俺があっさりと諦めてしまった乱世を終わらせてこの世界を発展させるという目標と重なっている。

「わかった。約束通り手を貸すぞリン!」

俺とリンは拳を合わせて大きな大きな、大きすぎるほど壮大な夢を叶えることを誓ったんだ。

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