ほとんどチートもらえないと言われたのに十分チートな件

スザキ トウ

第4話


「おいそこの暇そうな男!  暇か?  暇だろ?」

退屈しのぎに街を散策しようかと思ってた矢先、俺は不意に失礼な言葉を投げかけられた。まぁ暇なんだが。
振り向くと未だ幼さが残りつつも凛々しい顔をした青年が立っていた。
切れ目でなかなか鋭い目をしているが顔が整ってるので怖いというよりカッコいいといった印象を受ける。よく見たら身なりもそこそこ良く仕草には上品さがある。

「俺はこの街が初めてなんだ。案内してくれよ暇だろ?」

暇だと思われるのは癪だけど実際に暇だから別にいいかな?  ただこいつ貴族とかじゃねえよな?  着てる服といい仕草といいただの庶民とは思えないんだが……
うーん、貴族が護衛も付けずにここらへんをほっつき歩いてるわけがないか、俺の考えすぎだな。

「わかったいいよ。俺はカイト、お前の名前は?」

「本当か?  助かる!  俺はリンだ!  気軽に呼び捨てにしてもらって構わないぞ!」

了承の旨を伝えると青年は嬉しそうに笑って名乗った。端麗な表情でそんな笑顔を見せられると男でも惚れるぞチクショウ。



この町、ペルグの街はいつもにぎわっている。さすがはこの国5本の指には入る街だ。
そんな街をリンは楽しそうに見て回っていた。

「おいカイト!  あれはなんだ!」
「あれは串カツの屋台だな。食いもんを売ってるんだ」
「なに!?  串カツとは何だ!  カイト!  食うぞ!」

「何だこのデッカい建物は!?」
「そりゃ図書館だ。大量の本が置いてある」
「なんだ書物か!  今はいらん!」

「なんだこの食べ物は!?  美味い!  美味いぞ!」

「なんだこの複雑に入り組んだ道は!?  こんなの迷ってしまうに決まってるではないか!?」

リンはずっと大はしゃぎをしていた。
はしゃぎ方がまるで生まれて初めてテーマパークに来たかのようなはしゃぎっぷりに俺は終始圧倒されていた。
途中で誰が見てもわかるような建物に反応したり串カツが知らないだの食べながら歩くことに感動をしてたのを見てやっぱりこいつ貴族なんじゃないかと思ったがもうここまで来てしまっては時すでに遅し。気にしないことにした。


「おぉ……綺麗な景色だな……」

すっかり日は落ち俺たちは街を見渡せる高台にいた。
空気が澄み星がハッキリとたくさん見える夜空、そして下を見れば街の中心部はまだ店を開いてたりするのか灯がキラキラと光っている。
まるで星空を湖面が反射してるかのようだった。
元の世界、日本ではこれ以上の街の光は見たことはあれど空の星まで無数にハッキリと見えて幻想的な夜景を見たことが無かった俺もここを見つけた時は感動してしまったよ。
リンも気に入ってくれたようでさっきのハイテンションから一転して静かに見つめている。

「……カイト、雪って知ってるか?」

「ゆき?  空から降る白くて冷たい雪のことか?  もちろん知ってるぞ」

「ほう?  物知りだな。伝説の中の話なんだがな。そうだ。その雪だ」

「あ、あぁ……昔どこかで聞いたことがあってな」

しまったどうやらこの国は雪が降らないらしい。いやこの国どころか伝説となるとこの世界は雪が降らないのかもしれない。
それもリンの言う感じ極少数の人間しか知らない感じだぞ。不審がられるか?  いや、この程度なら大丈夫か。

「そうか、その雪だ。この国より北、極北のアスカ王国よりも更に北の蛮族の住まう未開の地には伝説などではなく確かに雪が降るらしい。
辺り一面真っ白に染められ空から白くてふわふわしたものが降ってる景色、この景色と比べ劣らず美しいのだろうな……
雪だけじゃない。もっと美しい景色は未開の地にあるのだろうし隣の国にも、そのまた隣の国にも違った美しい景色があるのだろう。
だがな……この乱世の世の中。俺がその景色をこの目に見ることはできないのだろうな……」

そう言うリンの表情は酷く悲しそうななんとも言えない表情を浮かべていた。

「リン……」

「カイト……俺はな。この狭い世界を広げたいんだ……」

「可能性は0じゃないんだ。もし機会があれば俺がその世界を広げるのを手伝ってやるよ。友達だからな」

俺の言葉にリンは呆けたような表情を浮かべた。

「友達か……フッそうかカイトは俺の友か。そうだな。この時は手伝ってくれ、友よ」

「まっあくまで機会があればだけどな」

リンはおもむろに腰にさしていた剣に手を伸ばし俺に差し出してきた。

「受け取れ、今日案内してもらった礼だ」

「たかだか案内しただけだぜ?  その剣すげー高そうなんですケド」

「いいんだ。俺にとって今日はとても価値のあるものだった。それに友にまた会いたいからな。
この剣をお前に渡せばまた会える気がする」

そう言われたら受け取らなければなるまい。何だかんだこいつがこの世界に初めてできた友達なのだからまた会いたいしな。

「わかった。またいつか会おうぜリン」

「あぁ、またなカイト」

リンはそう言うといつの間にか背後にいた男と共に去っていった。
まぁ案内してる途中から誰かが付けてるのはわかってたんだけどな。
攻撃してくる気配がないからほっといたらやっぱりリンの護衛だったか。
あのやろうやっぱり貴族かなんかだな。
しかし良く俺もあの護衛に気づけたよな。なんか凄腕っぽそうだぞ。

Aアンサー。途中でスキル気配察知を獲得しています〉

あっQ&Aヘルプさん久しぶり。なるほどまた簡単にスキルを獲得してしまったのだな。
最初はリンのことを失礼な奴だと思ったが実際は面白いやつで今日は楽しかったな。
この世界初の友達もできたしなんか高そうな剣も貰ってしまった。
いい一日だった。









リンと別れた翌日、俺はいつも通り森の中にいた。
今日はいつもより深くに行って見ようとペルグの街を後にして2時間ほど過ぎた頃だろうか。
来る時は全く気づかなかったが森の中に道があるのを発見してしまった。
おそらく普段俺が出入りしている門とは別の門に繋がっているのだろう。
馬車が4台はすれ違えるほどの道幅あるため歩くには問題があるが使う人は少ないのだろうか所々木が倒れて狭くなっていたり一部が破損していた。
さらには木が生い茂ってるから日の光が遮断され昼間だと言うのにやけに薄暗くあまりいい雰囲気ではなかった。
そういえばと俺は街に着いた時に門兵が噂をしていた盗賊団の存在を思い出した。
薄暗く森に挟まれ遮蔽物が多い街道。
隠れて襲うにはちょうどいい場所だよなぁ。
なんかすげー嫌な予感がする。

「いやぁぁぁぁああ!」

「うるせえ!  静かにしろ!」

「ヤダ!  やめて!  離して!」

「いいからおとなしくしやがれ!」

ハイ、テンプレキター。フラグ回収キター。
声はこの先の曲がり角から聞こえてくる。
急いで駆けつけると丁度いいところに大木が倒れていた。
大木に身を隠しこっそりと様子をうかがうために覗き見る。
そこから見えたのは10頭ぐらいの荷物を乗せた馬、少しボロい服をきた粗暴そうな男達。
そして男に腕を掴まれながら必死に抵抗してる非常に美しい少女の姿だった。

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