【コミカライズ配信中!】消しゴムで始まる制御不能彼女との日常-さっちゃんなんしよ~と?(原題:ボクの彼女は頭がおかしい。)

来世ピッチャー

YUME日和

前章の続きです。




2階のマイルームで宿題をしていた。

すると突然、真横の窓ガラスがはじけ飛ぶ音がした。

ガガシャガラーン。
バリバパリパリ。

なぜ割れたのだろう?
そしてこの後の処理はどうしようか?

奇妙なほどに冷静な自分に驚きながら部屋を見渡すと、古びれた野球ボールが転がっていた。

ふむ。
誰かの打ったボールが僕の部屋の窓ガラスを見事に割ってくれたらしい。
犯人の顔を拝んでやろうか。

ずいぶんと風通しの良くなった窓から外を眺める。


そこには五月がいた。

こちらに満面の笑みを浮かべながら、彼女は家の前に仁王立ちしていた。











そこで目覚める。

カーテンの隙間から見える空の具合で、今が午前4~5時ごろなのだと知る。
夢、か。

五月に会いたいあまりに鮮明な夢を見てしまったらしい。
悔しいけれど、僕の心はすっかり彼女に奪われている。


肩の関節を鳴らしながら、小道に面した窓のカーテンを開けた。

初めに空を見る。

明るくなり始めた真夏の朝。

月はすでに白い。

それから何の気なしに視線を下へ向ける。


――人影だ。

我が早瀬家の前にうずくまっている小さな人影。


また夢を見ているのか?

夢の中で夢を見ていたなんて。
夢の二重構造。
ありえなくはない。

いずれにせよ、僕に与えられている選択肢はただ一つ。

彼女のもとへ走る。


僕は大急ぎで外へ飛び出した。
寝癖もパジャマも何もかも取っ払って。


「五月……!」

彼女が僕の胸に飛び込んでくる。

この柔らかさ。
少し離れていただけなのに、いやに懐かしく感じる。

僕は彼女の可愛らしい額にキスをした。




















目を開いた。

白い天井、白い壁。
僕の枕、僕の時計。

夢の二重構造。

……ため息が洩れる。
またもや夢だったのか。

手元の目覚まし時計を確認する。

午前10時06分。

寝坊だ。

まぁ、夏休みなわけだけれども。



朝食を食べ終え、歯を磨いているとチャイムが鳴った。
めんどうくさいと思いながらも玄関を開ける。



五月だった。

オードリー・ヘプバーンを超える美女が、そこにはいた。


「これも夢?」と僕は訊ねる。

その瞬間、彼女にビンタされた。

痛い。


「現実だよ、早瀬くん」

「そうらしいね。頬に手形をプレゼントしてくれてありがとう」

するといきなり、彼女にキスされた。

「これでほっぺの赤さも目立たなくなったね!」

僕の顔は茹蛸のよう。
不意打ちは心臓に悪い。


久しぶりの五月は、やっぱり五月でした。

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