【コミカライズ配信中!】消しゴムで始まる制御不能彼女との日常-さっちゃんなんしよ~と?(原題:ボクの彼女は頭がおかしい。)

来世ピッチャー

9:1の日常


彼女は椎名林檎の大ファン。
CDをたくさん持っているし、カラオケで歌うのはいつも椎名林檎。

今日は、何やら関連グッズで欲しいものがあるということでTSUTAYAに来ています。


「もっとぉ中まで入ってぇ~」
突然TSUTAYAで歌いだす彼女。

五月、ものすごく美人なんだけど、いやホント美人なんだけど…
恥ずかしいから他人のフリをしよう。

「あたしの衝動を~」
店内を走って逃げ回るのだけれど、五月が歌いながら追いかけてくる。

目がすわってて完全にホラー。
みんなこっち見てるからやめて欲しい。

「突き動かぁしてよッッ!!!!」
「分かった分かった。買うよ、買ってあげるから静かにしなさい」

結局、東京事変のアルバムを4枚も買わされてしまった。
バイト増やすか。

(ちなみにこのとき五月は、その歌声を聴いていたバンドマンからスカウトされていた。恐るべし…)





店を出た。

「どっちが先にタクシー捕まえられるか勝負しよ」と、五月。

唐突だなぁ。しかもタクシーに乗る必然性がないし。
「何を賭けるの?」と、僕は訊ねた。

「タクシー代と、モノマネ」
「ん?モノマネ?」
「まぁまぁ、男なんだしあんまり細かいことは気にせず!よーいドン!」

彼女が高らかに宣言し、勝負が始まった。ちくしょう。

精いっぱい手を挙げながら通り過ぎるタクシーにアピールをするもなかなか止まってくれない。
オタク系で地味な僕にはこの戦いは明らかに不利だ…

立て続けに2台が通り過ぎていく。

そんな僕をニヤニヤ観察していた彼女だったが、「そろそろ本気を出しますか」と言わんばかりの表情を見せると、細く美しい右腕を上げ「Hey!!!!」とただ一言短く叫んだ。

4台のタクシーが瞬時に止まる。
…どんだけだよ。


4人のおじさんが五月を奪い合って一悶着あったのち、タクシーに乗り込んだ。

「わたしの家まで!」
「……っと、言いますと」と、おじさん。右目が腫れ上がっている。
「えっと、○○○までお願いします」と、僕。
「あぁはいはい、分かりました」
君の家なのに、どうして僕が説明を。


タクシーが動き出すと、五月が僕に耳打ちしてきた。
「モノマネ…」

あ、あぁ…。

五月から出されたお題は、

『陣痛が始まって病院に向かっているマツコデラックス』

でした。鬼畜すぎる。




ほどなく彼女の家に着いた。幸いにも運賃は割り勘。

和風の豪邸に足を踏み入れると、五月母の出迎えが。
「いらっしゃい」
五月母はおっとりとした美人さんだ。

「こんにちは。お邪魔します」
「早瀬くん、久し――」
「行こっ?」
五月母の言葉を遮り、僕の手を引いて階段を駆け上がる彼女。


いくつもの部屋を通り過ぎ、見慣れた五月の部屋へ。

「となり、来て」
ベッドに座っている五月。僕を呼び寄せる。

「へへっ、お母さんに妬いちゃった」
「そんな必要無いのに」
「だよねー」
「うん。僕はいつだって君に夢中なんだから」
「言ってくれるじゃん」

彼女が抱きついてきた。
まったく、可愛い人だ。

「でもお母さんのこと、美人だなーって思ってるでしょ?」
「まぁね」
「さいてー」

僕はベッドに押し倒された。
本当を言うと、押し倒されてあげた。さすがに力は僕のほうが強い。

「好きだよ、五月」
「知ってる。わたしも好き」


彼女のお母さんはたしかに美人だ。

でも、五月は、比べ物にならないほど魅力的な女性だ。
目が大きくて、鼻筋が通っていて、頬が薄ピンクで、笑顔がまぶしくって、いつもいい香りがして……
挙げればキリがない。


先ほどの言葉どおり、僕はいつだって彼女に夢中なのだ。










後日。
僕のマツコデラックス声がなぜか目覚まし音に設定されていた。
朝6時に大音量で流れる謎のうめきに、近所が騒然となったことは言うまでもない。

これが、僕の日常である。
クレイジー9:デレ1

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コメント

  • ノベルバユーザー601496

    このクレイジーさが病みつきになりそうです。
    キャラクターもいきいきしてそうです。

    0
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