過去に戻り青春を謳歌することは可能だろうか
7話 過去に戻り後悔を拭うことは可能だろうか
学校から帰る途中、夕飯の材料を買い込んだ。材料からして今夜はカレーらしい。幸せだなーと頬が緩んでしまう。
アパート付近の公園に通りかかったとき俺は今日の夢のことを思い出す。内容には白い靄がかかって脳内に投影できる範囲は俺が誰かに喋りかけられた。ということだけだ。
「あ……」
それだけじゃない。確か、その人は長嶺原高校の制服を着ていた気がする。
不鮮明ながらも夢の中でそのような光景を見た気がし、不意になにかを思い出したかのように俺は声を発した。
「なに?」
横にいた可憐は首を傾げこちらを見ている。
「今日、俺の夢の中にこの公園と知らない女子高生が出てきたんですよ、その女子高生が長嶺原高校の制服を着ていたのを思い出したので、誰だったのかなーって」
空を見上げ何かを思い出しながら話、話終わった後に可憐の方を向くと可憐は少し不機嫌そうな顔をしていた。
「女の子と一緒に帰ってるのに他の女の子の話するの?」
「え?嫉妬?」
「別にしてない」
ふんっ、とそっぽ向いた可憐の反応に俺は口角が上がる。
「ただの夢なんで大丈夫ですよ、浮気じゃありません」
「私、直斗と付き合ってないんだけど」
「え?そうだったの?」
「いつ告白したのよ、そしていつ私がOKを出したのよ」
俺の冗談にツッコミを入れられる。そんな会話はどこか心地よかった。
「………」
「………」
2人の間には沈黙の空気が流れる。ただ、その沈黙は気まずいとかそういう感情を伴わない。 
「ぷっ…」
最初に吹き出したのは俺だった。
「ふふっ…」
それに続いて可憐も吹き出し、鞄を持っていない手を口元に近づけ微笑んでいる。
「私と直斗って会って2日目よね?」
「そうですよ、2日目」
「なのにかなり親密よね」
「そうですね、こんなに仲良くなるとは思いませんでしたよ」
「私もよ」
照れ臭そうに互いの顔を見合って言葉を交わした。
「ちなみに直斗の夢に出てきたっていう女の子は実際に長嶺原にいたの?」
「んー、意識しながら過ごしましたけど見つけることはできませんでした」
「そうなのね、いるのかしら」
「さぁ」
 
家に着いてからカレーを作り夕飯を済ませ風呂に入ったりしていたら時刻は23時を回っていた。
「そろそろ寝ますか」
「そうね」
可憐は立ち上がり寝室に向かおうとしたとき、机の上に置いてあった可憐のスマホがリズミカルな音楽を奏でながら鳴り出した。通話の画面には『お父さん』と表示されている。
可憐はスマホを持ち上げ出るか出まいか迷っている。
「出ればいいじゃないですか、生きていることだけ伝えれば」
両親からすると何も連絡がこない娘を心配しているに違いない。 
「わかった」
可憐はスマホの画面を親指でスライドさせ耳に当て
「もしもし……え?ほんと?わかった。」
会話の雰囲気と曇った可憐の表情から嫌な予感がした。
「どうしよう」
可憐は不安で消えてしまいそうな声音で呟く。
「どうしたんですか?」
「今おばあちゃんが入院してるんだけど急に容態が悪くなったって」
「病院はどこですか?」
「岐阜県」
俺と可憐がいる場所は長野県だ。今から岐阜に向かうのは厳しい。
「本当は今日家族でお婆ちゃんのところにお見舞いに行く予定だったの…これでお婆ちゃんが…。うっ…うぅ」
可憐はうずくまり泣き出した。
「私が…くだらない理由で家出…なんてしなければ…」
可憐は嗚咽混じりで自分のしたことに対する後悔を口に出している。
その姿を見て何もできない情けなさに自分に俺は苛立ちを感じる。何とか可憐を岐阜の病院まで連れて行ってあげたい。しかし交通手段がない。
「くそっ…」
「過去に戻りますか?」
「え…?」
どこからか聞いたことのあるような声が聞こえ、俺は部屋の周囲を見渡した。
部屋にいるのは可憐と俺だけ、可憐は泣いている。
誰なんだ…
「今ならまだ戻れますよ」
声の正体は分からない。だが『過去に戻る』ということがもう一度できるならば戻りたい。そして可憐の後悔を拭ってあげたい。
人は後悔する生き物だ、そこから様々なことを学び強くなる。だから時間が経てばその後悔でさえも自分の必要な経験の1ページとして記され懐かしい思い出となる。
しかし、可憐の今の後悔はそんな美しいものにはならない。家出した理由分からないが今回の病院に行けないということを何とかしなければ可憐は死ぬまで後悔して自分を否定し続けるに違いない。
そんなのは絶対にダメだ。
だから俺は迷わず口に出した。
「俺を過去に戻してくれ!」
視界が真っ白になった。
「……………さい」
聞き覚えのある声
「……なさい」
「いてててて」
可憐に頬を引っ張られ起き上がった。今日は5月7日、可憐の作った朝ごはんのいい香りがする。
アパート付近の公園に通りかかったとき俺は今日の夢のことを思い出す。内容には白い靄がかかって脳内に投影できる範囲は俺が誰かに喋りかけられた。ということだけだ。
「あ……」
それだけじゃない。確か、その人は長嶺原高校の制服を着ていた気がする。
不鮮明ながらも夢の中でそのような光景を見た気がし、不意になにかを思い出したかのように俺は声を発した。
「なに?」
横にいた可憐は首を傾げこちらを見ている。
「今日、俺の夢の中にこの公園と知らない女子高生が出てきたんですよ、その女子高生が長嶺原高校の制服を着ていたのを思い出したので、誰だったのかなーって」
空を見上げ何かを思い出しながら話、話終わった後に可憐の方を向くと可憐は少し不機嫌そうな顔をしていた。
「女の子と一緒に帰ってるのに他の女の子の話するの?」
「え?嫉妬?」
「別にしてない」
ふんっ、とそっぽ向いた可憐の反応に俺は口角が上がる。
「ただの夢なんで大丈夫ですよ、浮気じゃありません」
「私、直斗と付き合ってないんだけど」
「え?そうだったの?」
「いつ告白したのよ、そしていつ私がOKを出したのよ」
俺の冗談にツッコミを入れられる。そんな会話はどこか心地よかった。
「………」
「………」
2人の間には沈黙の空気が流れる。ただ、その沈黙は気まずいとかそういう感情を伴わない。 
「ぷっ…」
最初に吹き出したのは俺だった。
「ふふっ…」
それに続いて可憐も吹き出し、鞄を持っていない手を口元に近づけ微笑んでいる。
「私と直斗って会って2日目よね?」
「そうですよ、2日目」
「なのにかなり親密よね」
「そうですね、こんなに仲良くなるとは思いませんでしたよ」
「私もよ」
照れ臭そうに互いの顔を見合って言葉を交わした。
「ちなみに直斗の夢に出てきたっていう女の子は実際に長嶺原にいたの?」
「んー、意識しながら過ごしましたけど見つけることはできませんでした」
「そうなのね、いるのかしら」
「さぁ」
 
家に着いてからカレーを作り夕飯を済ませ風呂に入ったりしていたら時刻は23時を回っていた。
「そろそろ寝ますか」
「そうね」
可憐は立ち上がり寝室に向かおうとしたとき、机の上に置いてあった可憐のスマホがリズミカルな音楽を奏でながら鳴り出した。通話の画面には『お父さん』と表示されている。
可憐はスマホを持ち上げ出るか出まいか迷っている。
「出ればいいじゃないですか、生きていることだけ伝えれば」
両親からすると何も連絡がこない娘を心配しているに違いない。 
「わかった」
可憐はスマホの画面を親指でスライドさせ耳に当て
「もしもし……え?ほんと?わかった。」
会話の雰囲気と曇った可憐の表情から嫌な予感がした。
「どうしよう」
可憐は不安で消えてしまいそうな声音で呟く。
「どうしたんですか?」
「今おばあちゃんが入院してるんだけど急に容態が悪くなったって」
「病院はどこですか?」
「岐阜県」
俺と可憐がいる場所は長野県だ。今から岐阜に向かうのは厳しい。
「本当は今日家族でお婆ちゃんのところにお見舞いに行く予定だったの…これでお婆ちゃんが…。うっ…うぅ」
可憐はうずくまり泣き出した。
「私が…くだらない理由で家出…なんてしなければ…」
可憐は嗚咽混じりで自分のしたことに対する後悔を口に出している。
その姿を見て何もできない情けなさに自分に俺は苛立ちを感じる。何とか可憐を岐阜の病院まで連れて行ってあげたい。しかし交通手段がない。
「くそっ…」
「過去に戻りますか?」
「え…?」
どこからか聞いたことのあるような声が聞こえ、俺は部屋の周囲を見渡した。
部屋にいるのは可憐と俺だけ、可憐は泣いている。
誰なんだ…
「今ならまだ戻れますよ」
声の正体は分からない。だが『過去に戻る』ということがもう一度できるならば戻りたい。そして可憐の後悔を拭ってあげたい。
人は後悔する生き物だ、そこから様々なことを学び強くなる。だから時間が経てばその後悔でさえも自分の必要な経験の1ページとして記され懐かしい思い出となる。
しかし、可憐の今の後悔はそんな美しいものにはならない。家出した理由分からないが今回の病院に行けないということを何とかしなければ可憐は死ぬまで後悔して自分を否定し続けるに違いない。
そんなのは絶対にダメだ。
だから俺は迷わず口に出した。
「俺を過去に戻してくれ!」
視界が真っ白になった。
「……………さい」
聞き覚えのある声
「……なさい」
「いてててて」
可憐に頬を引っ張られ起き上がった。今日は5月7日、可憐の作った朝ごはんのいい香りがする。
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