悪役令嬢、家継ぎます!

朝水夜火

悪役令嬢努力します

と、まぁお父様に言い張りはしたけど今日は剣の稽古があるのだ。淑女の嗜みやあり方、経済・政治の勉強も順調で剣の稽古の時間が少し増えたのだ。いつも通りお父様の古着を着て木刀を持ち庭に出た。

だいたいこの時間に来るはずなんだけど…今日は少し遅れるのかな?

「父上!やはり帰りましょう!この様な家の令嬢に何を教えることがあるのですか?父上は王宮剣術師範の上に誇り高き陛下の側近なのですよ。この事が世に知れたら我が家の名に傷が付きます!」

「いいから、お前は帰れ。ここの令嬢は他の女と違い根性がある。それに意見もはっきり言える方だ」

何やらとっても揉めながら登場したな。隣にいる少年は誰だ?青いまだあまり長くない髪を後ろで縛ばった紫色の瞳の少年……さっきフロックス様を父上と呼んでたからなぁ。まさか、まさかでしょ!王子の側近にして攻略キャラである。あの、あの、ゼフィランサス・ラークスパーですかぁぁあ!

あぁ……急に目眩が。あ、お母様が花畑の中で微笑んでる。イヤイヤイヤ!現実逃避にもほどがあるだろ!って1人漫才やってる場合じゃないだろ!落ち着け、落ち着けメリア先生に教わった淑女の振る舞いを発揮するときだ。ってドレス着てないから淑女の挨拶は出来ないから男性が行う礼法をやらないと!大丈夫こっちはステラ先生に教わったから!

「御機嫌よう、フロックス様。そして、初めまして…お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」

「おう、セリア。こいつは俺の息子のゼフィランサス・ラークスパーだ。ほら挨拶」

「よろしいお願いします。ゼフィランサス様」

と、最高の笑みで笑いかけると睨まれジロジロと品定めを始められました。

「父上、このような華奢な令嬢に剣が握れますでしょうか。見たところナイフより重いものなど持ったことがなさそうですよ」

言ってくれるね〜。私、笑顔だけど内心激怒してるからね。つか、疑問符どこいったよ、疑問符!いくら王子の側近だからってこの言いようはないでしょ。まぁ、ここは笑顔で一言言うか。

「失礼ですが、ゼフィランサス様の目は節穴ですか?私は右手に木刀を持っているのですよ。私は剣を始めたのは1ヶ月程前です。木刀が持てるようになったは2週間前です。貴族子息様方と変わりまい速さで私は鍛錬を重ねています。それに、御自分の名前も御自分で申し上げられない方に意見される筋合いはございません」

ここまで言えば流石に何かアクションがあるでしょ。おーおー、綺麗なお顔に青筋が立っていますよ。見ものですね、美少年の怒り姿なんてレアだね。

「そうですね、それは申し訳ございません。アベリアス嬢、手合わせをお願いしたいのですが」

手合わせ、ね。精一杯の笑顔で精一杯な穏やかな声で言った言葉は随分と物騒だな。まぁいっか、基本的な戦い方は教えてもらったし、いざとなればこの間見せてもらった実践の型を見よう見まねでやればいいし。

「はい!貴重な経験ですし、よろしくお願いします」



「はぁ…じゃあ始めるぞ。先に一本取った方の勝ちだ、まぁ怪我しない程度にやれよ。始め!」

まずは打ち込んでくる相手の攻撃を止める。

「っ!」

重った、どれだけフロックス先生が手加減してくれてたことか!大丈夫、落ち着いて。攻撃を止めたら片手を離して剣の側面で受け流す。相手が怯んだうちに蹴りを入れる!

「っと!危な…」

かわされた、しかもやすやすと。けど、まだ体制が整ってないから間髪入れずに自分が打ち込みにいく。

「甘い!」

クソ!予想はしてたけどあっさり止められるとかなりイラつく!てか、これは鍔迫り合いの形かな。あぁ、もう。力で押し負けそう。こうなったら最終手段見よう見まねだ。フロックス先生は確か剣を軽く左に寝かせて右足を軸に半円を描くように体を開いて、同時に剣を左に振ってたよね。

「んっ!」

 ビュン 

「え……」
上手くバランスを崩したと思ったのに。実行した途端にコイツ華麗なターンを決めて剣を顔スレスレ突き立ててきた。

「ま…参り……ました」

「ふっ」

鼻で笑われた。悔しい、悔しい、何がダメだったの!確かに技術はまだまだだし力負けもしそうだった。けど、確かに相手の意表を突いたはず!何が、何が敗因なの。

「父上は…」

「え?」

「父上はあそこから間髪入れずに首に剣を突き立てる。だからそれをされないように体幹を強くしてすぐに振り向けるように練習した」

そうだった、コイツはフロックス先生の息子だった。あの戦い方は何度も見てきてるよね。

「ゼフィランサス様、先程の非礼をお許しください」

「あ、いや。いい、俺も考え無しに口走ってしまって申し訳ない。その…ファセリア様……は他の子息達より動けてて………楽しかった」

あぁ!やめて赤面辞めて!美少年の赤面とか見てるこっちが恥ずかしくなる。

「セリア、良く動いていたぞ。ちゃんと俺の動きを覚えていたんだな。ゼフィ、お前もだ。課題をしっかり克服できていたな」

「ありがとうございます」

フロックス先生の笑顔はなんか癒されるなぁ。それにしても手合わせ、楽しかったな。フロックス先生とやるのはとは違ったワクワク感があった。

「ゼフィランサス様、また手合わせして下さい。それから私の事は是非セリアと呼んで下さい」

「あぁ、父上に連れて来てもらうよ。いいですか父上?」

「構わん。セリアもゼフィも楽しそうだったからな」

「俺の事はゼフィと呼んでくれ、様もいらない。出来れば敬語もいらない」

「わかった、改めてよろしくねゼフィ!公共の場では敬語は使うけどそれ以外ではこれで話すね」

「和解できて良かったな。ちょうどいいし、俺の事もフロックス様以外の呼び方で呼べ」

えー!心の中じゃ勝手にフロックス先生って呼んでだけど実際に呼べって言われると何と言うか。うーん……あ、そうだ。前世アニメ、漫画で良く見たあの呼び方!一度やってみたいと思ってたんだよね。

「フロックス先生だと長いので…師匠なんてどうでしょう?」

言ってみたもののなんか恥ずかしい。

「師匠か、ふ…はははは!そうなるとセリアは2番弟子か、1番はゼフィだからな」

「2番弟子にしていただけるなんて光栄です!」

「じゃ、今日の鍛錬を始めるぞ」

「「はい」」

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