能無しの俺は魔王さんの幹部〜魔王さんは優しい〜

冬 真白

1日目“四騎士の加護”

─アルスト学園─

「大した成績じゃないよな」

「本当なら今頃先輩だったんだぜ」

「まぁ、相変わらずか、あんなに努力してる割にはさ」

「しっ、ゼスに聞こえるって」

俺は掲示板に張り出されている成績表に目を通す。

いつも通りだな。

「ゼス、何だこの成績は。留年してなおこのザマか?お前が英雄に似ているのは見た目だけだな」

「っ………」

俺はイザベル・ゼス。
生まれついての不幸なことが一つある。
伝説の英雄、剣聖ライナに生き写しの外見。
だが、剣聖どころか同級生にも及ばない剣の実力しかない。
しかも……遠く昔だが実際に親戚関係らしいのが余計にタチが悪く、周りから嘲笑されこう呼ばれている。

外見だけ伝説の英雄にそっくりな

“偽英雄”

と。

「はぁ〜〜〜〜〜〜…。もっと自分を追い込まなきゃだな」

俺はその場から逃げるように自宅へ向かう。
自宅へ着くと剣を取り訓練を始める。
大粒の雨が降る中ひたすら剣を振るう。
空から落ちてくる一滴一滴の雨を剣で切り裂くように。

「ふっ……。くっ……。」

俺はこの訓練を1年は続けてきた、でもなぜ強くならないのかは分からないままだった。

ポワンッ

俺が訓練をしている最中、1点が赤く燃え上がる炎のように輝き、1匹の精霊が現れる。
この精霊はよく俺の前に姿を現す。
だが、学園にあった書籍によると、精霊が姿を現すのは本当に稀で貴重な存在だとか書いてあった。
それが、俺の目の前に毎日現れる。

「よっ、精霊さん。おいでっ」

俺は左手を精霊に差し出す。
精霊はゆっくりと俺の手元に近づいてきて掌にのる。

可愛いな。

精霊は赤い鱗に覆われた体に鋭くとがったつめがあり、尻尾から持続的に火が燃え上がっている。
俺の顔ぐらいの大きさで偶に炎の魔法を放って俺を驚かせてくる。

ガサガサ

「魔物か……?」

少し離れた草木が音を立て揺れた。
草木の間から時折見える赤い目。
まさか……。

「ぐああああああああ!!!!!!!!」

「やはり、魔人か!」

俺は剣先を魔人に向ける。
適わないのはわかっている。
だが、俺がここで足止めをしなければこの街が魔人によって破壊される。

「殺す、ごろす!!!ぐあああああああああああ!!!ぶっごろす!!」

「?!」

何故魔人が声を発するんだ?
魔人は声など出さない。
ただただ残虐行為をするだけ。
だが、あの魔人は憎悪の目をしている。
誰かを憎んでいる。
この街の誰かを。

「レイボルトッ!!!」

まっずい!
俺は咄嗟に身を翻し、魔人から放たれた雷系統のレーザを交わす。

横腹を少し抉られたがこのくらいっ!

「おりゃぁ、ぁ…。」

バタンッ

俺は魔人に向かって走り始めたが、体が思うように動かずそのまま倒れてしまった。

くそっ。
麻痺かよっ。

俺は動けないままうつ伏せで倒れている。
魔人はそんな俺に近づき─

「テンペスト」

口の端を少し持ち上げながら優しく呟く。
空から轟く雷鳴に呑み込まれ俺の意識が朦朧としていく。

「くっ……は、…。」

俺はもう死ぬのか。

朦朧とした意識の中、街と反対の方へ飛び去っていく魔人にほっとしながら俺の意識は途絶えた。

『お前はまだ死ぬときではない』

突如頭に響く声で起きた俺はあたりを見渡す。
何も言えない漆黒の中に俺は立っている。
自分の体さえ見えない漆黒に俺は恐怖を隠せなかった。

『この程度で震えるとは、おちたものだな』

「くっ、!お前は誰だ!」

『俺の名は剣聖ライナ。ライナ・ミザスだ』

「?!!!」

俺は死んだはずのライナの存在に驚く。
いや、もしかしたら俺が死んだ為にライナが現れたのかもしれない。
だとしたら、ライナはもう死んでいることになる。

『俺の体を使わせてやっているんだ、存分に力を使え。自らの心の封印を解き放て』

何を言っているんだ、剣聖ライナは。
俺の体が剣聖ライナの体だというのか。
言われてみれば姿は同じだが、力の差が歴然としている。
それに封印ってなんだよ。
訳わかんねぇーよ。

『「1人は皆のために、皆は1人のために」我ら英雄の四騎士の心はソナタに宿りを欲す。我ら四騎士を導け。我が子孫ゼスよ』

俺は自分の体に何かが宿った感覚を経て意識が覚醒する。

「なんだったんだ」

俺は先程まで訓練していた所にいた。
雨は既にやんでおり、空には雲ひとつない空が広がっている。
それに、俺の体の傷は無くなっていた。

「ゼス、大丈夫か?」

どこからか俺を呼ぶ声がする。
俺はあたりを見回すがそれらしき人はいない。
しいていうなら精霊が居るだけだ。

まさか……。
いや、違うか。

「聞いているのか?ゼスよ」

「えっと、もしかして精霊さん?」

「そうだ!我は精霊サラマンダーだ」

「サラマンダーさんですか?」

「そうだ!………なんだその目は信じて無いだろ!」

「サラマンダーって大きくてトカゲって感じだけど、サラマンダーさんは小さくて蛇って感じ?」

「蛇にこんな立派な足が生えておるわけなかろうが!ったく、鑑定してみるがよい」

「は?何言ってるんですか?」

「だからその目はなんだぁ〜!!我を蔑みおって!鑑定と唱えれば良いのだ。早くしろ」

「鑑定」

………。

「唱えましたけど」

「どうだ、これで信じたか?」 

「なんも出てきませんよ?」

「ゼスよ、すまぬな。ソナタには魔力が無いようだ」

「はい」

「………。驚かないのだな」

「知ってますもん」

「……え?知ってて魔法唱えたの?」

「だってサラマンダーさんがやれって言うから」

「我はてっきり魔法があるのかと思ったぞ」

「勘違いですね」

「むむむ。だが、我と話せるということはだな魔力は100000超えてなければおかしいのだがな」

「見てみますね〜」

俺は人差し指と中指を立て下から上に線を引く。
すると半透明な小さな丸い円が縦1列に五つ並んでいた。
上から、ステータス、持ち物、装備武器、冒険者カード、精霊と。
俺はその中からステータスを開く。

      『イザベル・ゼス』 Lv1 
種族:人間
年齢:15歳
性別: 

職業:見習い剣士
称号:剣聖ライナの加護“筋力+1000”
          天使メーナの加護“俊敏+1540”
          導師メイジの加護“魔力+3000”
          精霊ケルトの加護“体力+2300”

体力:15(+2300)
魔力:0(+3000)
筋力:10(+1000)
耐久:5
俊敏:2(+1540)

技能:精霊会話
         剣術Lv2/体術Lv1

──────────────────

四騎士の加護が付いてる!
剣聖ライナが言ってた宿りが何とかってやつか。

「魔力は3000みたいだけど、精霊会話ってのがあるよ」

「そう言うことか。我と話せるのはその精霊会話と言うやつか」

「そうみたいだね!ところで、契約って出来ないの?」

「出来るぞ」

「俺と契約してよ」

「そうだな〜。白龍を倒してくることが出来たなら良いぞ」

「白龍ってギルドランクAのモンスターじゃん!」

「ゼスのギルドランクを見せてみよ」

俺はステータスの画面を消して上から4番目の円を押した。

     『イザベル・ゼス』ランクF
登録ギルド:アンザ
パーティー:未加入
団体ギルド:未加入
次回ランク:Fクエスト“5”

──────────────────

「あ〜Fか〜」

「昨日登録したばっかだからね」

「じゃあ頑張ってランク上げて白龍のクエスト受けなきゃだね。そんじゃあ我は帰るぞ〜」

サラマンダーはまたいつもみたいにどこかに消えてしまった。

「は〜。クエスト受けなきゃだな」

俺は自分の剣を背中に付けている鞘にしまいギルドに向かいかけ出す。
俺の家は住宅街から少し離れた丘の上にあるためギルドに行くのにも相当な時間を使う。
丘をおり、住宅街を通り過ぎ、路地裏を駆使してギルドに辿り着いた。

カランッコロンッ

俺が開けたドアが音を鳴らし、ギルド内の視線が集まる。
まぁ、それもそうか。
俺はこのギルド内で最弱として名が売れている。

「よぉ、偽英雄。何しに来たんだ」

「ク、クエストを受けに来ました」

「そうか〜ならこれオススメだ!返却不可。行ってこい」

       『キングオーク率いる集落の破壊』
ランク:B
依頼内容:キングオーク率いる集落にいるオークを全て倒す。
敵人数:キングオーク“1”オーク剣士“3”オーク導師“1”オーク弓士“7”
自然環境:何者かの乱入の可能性あり


報酬:金貨1枚
          銀貨3枚

──────────────────

またいつものこれか。
俺はいつもこのクエストをギルド内に冒険者にやらされ、ボコボコにされて帰ってくる。
今日で4回目だ。

「これでお願いします」

俺は受付に行き、依頼書を出す。

「本当にこれで大丈夫ですか?ゼスさんのランクを大いに上回っていますよ?」

「大丈夫です」

この受付の人はクソみたいな冒険者と違いいつも心配をしてくれる優しい方だ。

「分かりました。気を付けて下さいね」

「はい」

俺は冒険者に笑われながらドアを抜けて、オークの集落に向かう。
少し歩くと、開けた場所に出た。
俺が今いる場所は、オークの集落の目の前。

やっべっ。
近づきすぎた。

ガンガンガンッ

「襲撃だ〜!人間が襲撃に来たぞ〜!!迎え撃て〜!」

キングオーク以外の11匹が俺の前に立ち塞がる。
俺が鞘から剣を抜くと弓士と導師が俺に向かって炎付与の矢とファイヤーボールを放った。
その攻撃を俺は前に走り交わした。
俺の真後ろで魔法の爆発音がしたが、気にせず近くにいた1匹の剣士の首を跳ね、導師に剣を投げ、頭に命中させた。
その導師に走り寄り剣を抜いて飛んできた矢を切り弾く。
雨、一滴一滴を切っている方が難しかった。
残りの剣士2匹を倒して弓士には片時も離れず接近戦で倒した。
倒されたオークは全員光の粒子となって消えていった。
そして、その跡に残った宝箱を俺は開いて中を確認する。
中に入っていたのは、錆びた剣、銀貨2枚、ファイヤーボール習得書を手に入れた。
殆どのオークの宝箱は空だった。

ドシンッドシンッ

あー。
そう言えばもう1匹いたんだった。
最後に残ったキングオークは俺が2人縦に積まれたくらいの大きさだった。
3.20位かな。
俺はファイヤーボール習得書を使って、ファイヤーボールを習得した。
杖が無いから威力がかなり劣るがキングオークの顔面にファイヤーボールを放った。

「ウガァァァァ」

キングオークが顔を抑え暴れてる間に後ろに周り優しく首を跳ねた。

「よっしゃっ!楽々勝てた!ステータス確認してみるか」

俺はステータスと上から2、3個めにある持ち物と装備武器を押した。

『イザベル・ゼス』 Lv6
種族:人間
年齢:15歳
性別: 

職業:見習い剣士
称号:剣聖ライナの加護“筋力+1000”
          天使メーナの加護“俊敏+1540”
          導師メイジの加護“魔力+3000”
          精霊ケルトの加護“体力+2300”

体力:21(+2300)
魔力:6(+3000)
筋力:16(+1000)
耐久:9
俊敏:8(+1540)

技能:精霊会話/ファイヤーボール
         剣術Lv3/体術Lv1

──────────────────
       『持ち物』  容量1/50
1.錆びた剣

       『通過』
銀貨:2

──────────────────
       『装備武器』
1.鉄の剣92/100
オーク剣士“3”
オーク導師“1”
オーク弓士“7”
キングオーク“1”

──────────────────

「少しは強くなったかな」

「グルル」

俺はいつの間にか3匹のウルフに囲まれていた。
血の匂いにつられてきたのか目が血走っている。
俺はその1匹に向けてファイヤーボールを放つ。
だが、素早いウルフは楽々交わして俺に襲いかかる。
剣で切り裂こうとしても仲間の牙に弾かれる。
流石に勝てないと思い、走って逃げる。
木々を掻き分けウルフに匂いを辿られないように時には川を通った。
俺がギルドに着いた時には既に日が落ち始めていた。

カランコロンッ

俺はいつも通りボコボコとは言えないが服がボロボロになっていた。
ウルフから逃げる最中に木の幹などで破けてしまったようだ。
冒険者達はいつも通り負けたと思ったようで、お腹を抱え笑っている。
俺はその中を堂々と通り抜け、受付に向かう。
受付で自分の装備武器欄を見せた。

「おめでとうございます!!!Bランククリアです!」

その受付の人は冒険者達に聞こえるようにわざと大きな声で叫んだ。

「ありがとうございます!」

冒険者達は青ざめた顔をしていた。
まぁ、それもそうだよね。
自分達が倒せなかったモンスターをFランクである俺が倒しちゃったんだもんね。

 「でもすいません」

「え?」

「自分より高いランクのクエストを受けても冒険者ランクは上がらないんですよ」

「そうなんですか。まぁ、でもいいです」

「本当にすいません。これが今回のクエストの報酬です」

俺は受付から報酬の金貨1枚と銀貨3枚をもらい、深々と頭を下げてギルドを出る。

Eランクまで残りのFクエストを5回。
まだまだ道は長いな。

俺はそんなことを考えながら丘の上の自宅に向かった。
家に着き夕食を食べ、明日の学校にそなえ布団に入った。

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