不遇職テイマーの成り上がり 〜スキル【吸収】でモンスターの能力を手に入れ、最強になる〜

愛犬ロック

第15話 テイマーは回復術師と出会う

「君達、さっきは災難だったね」


 酒場でシャルと夕食を食べている時だ。
 パスタを口いっぱい頬張っているときに一人の女が話しかけてきた。
 格好は、亜種族ではない普通の人間。
 しかし、その容姿は美少女と言うに相応しい。
 深紅のような赤い髪に茶色の目。
 手に杖を持っていることから魔法使いなのだろうか。
 まだ幼さが残る顔から俺たちと同じくらいの年齢なのではないか。
 ゴクン。
 口の中に入っていたパスタを飲み込み、返事をする。


「……そうだな。確かに今日はツイてない日だ。……で、あんた誰?」


 俺の横にある椅子に座り、彼女は答える。


「私はレナ。君達と同じ冒険者さ」
「俺はアレン。で、こっちはシャル。まぁ同じ冒険者同士仲良くしよう」

 手を差し出し、握手をした。

「それは光栄だね。ところで冒険者ギルドの時はもうちょっと腰の柔らかい話し方じゃなかったかい?」
「ああ、それも聞いてたのか。人を選んでいるんだ。ああいうタイプは、丁寧な言葉遣いで喋った方が穏便に済むかと思ってさ……結果は全然穏便な感じではなかったけど」


 冒険者になった直後は誰にでも敬語で話していた。それは力が無かったときの名残であり、自分を守るために自然と話していた。
 しかし、最近になって敬語ばかり使うのも良くないなと気づいた。今日の一件だってそうだ。穏便に済まそうとしたはずが、舐められて胸ぐらを掴まれてしまったからな。
 極端なのも良くはないが、程よく丁寧に話ながら、程よく素の自分を出していく方がいいかもしれない。
 そんな考えから、今はレナと普通に会話をしている訳だ。


 少しの間、沈黙があった。
 そしてレナは俺を見つめながらこう言った。


「それじゃあ、本題に移るよ。私・を・パ・ー・テ・ィ・に・入・れ・て・く・れ・な・い・か・?・」


 ……は?
 いきなり何を言い出すんだコイツは。


「はは、困った顔をしているね」

 当たり前だろ。いきなりパーティに入れてくれないか?と言われても困るだけだろ。
 自己アピールをしなさい!

「だが、私をパーティに入れて損はしないよ。何せ私は回復のスペシャリストだからね」

 本当に自己アピールをしてきた事に内心驚きながら俺は答える。

「回復のスペシャリスト?」
「そう、私の職業は回復術師。普通の回復術師はある程度攻撃が出来るんだが、私は少し特殊でね……攻撃方法が一つもないんだ。ステータスの攻撃の値も0。だから裏を返せば、回復しか能がないとも言えるね」


 なるほど、それが本当かどうか見てやろうじゃないか。
 人のステータスを鑑定を使って覗くのは少し気が引けるが、パーティに加入したいと言う人物からは話が別だよな。


 ――鑑定



 種族:人間
 名前:レナ=ルゼドスキー
 性別:女
 年齢:17歳
 職業:回復術師
 レベル:30
 HP:1000
 MP:10000
 攻撃:0
 防御:1200
 魔力:12000
 敏捷:1000

 《恩恵》
【回復魔法効果UP】
【パーティメンバー強化】

 《職業スキル》
【癒しの光:レベル3】

 《魔法スキル》
【魔力操作:レベル4】
【無詠唱:レベル1(MAX)】


 《魔法》
【ヒール:レベル5】
【オールヒール:レベル2】




 レナ=ルゼドスキー。17歳ってことは俺の一つ上か。
 確かに攻撃力は0で、攻撃手段は無いみたいだが……それを抜きに考えてもかなり強くないか?
 《恩恵》の2つの効果を見てみると、【回復魔法効果UP】は回復魔法の効果を1.25倍上昇させるというもの。
【パーティメンバー強化】はパーティを組んでいるだけでメンバーのステータスを1.1倍上昇させる。
 そして、俺の今後の成長は未知数だとしてもシャルは圧倒的な超攻撃型。回復が出来る仲間は必要不可欠だと言える。
 まさにレナは俺たちのパーティに適任という訳だが……。
 これほどの支援能力があるレナが何故、俺たちのパーティに入りたがるのか。
 それが謎で仕方ない。


「なるほど、レナが回復のスペシャリストという事は分かった(鑑定させてもらったからな)。だが、どうして俺たちのパーティなんだ?他のパーティじゃダメなのか?」
「あー、やっぱりそうなるよね。実は私、15歳のときから冒険者やってるんだ。それで2年間、色々なパーティに入ってきたけど、全然ダメなのね。もう嫌になるぐらい」


 いや、そもそも攻撃手段がないなら教会などで行われている治療の仕事に就けばよかったんじゃないのか。
 なんて思ったが、何をするかなんて人それぞれだ。
 野暮な事は聞かない方がいいかもな。


「それで何故俺たちのパーティに入りたがる」
「だって、君の方がアイツより強かったじゃん。全然動じてなかったし、シャルちゃん……だっけ?2人を見てピンっと来たんだ。この人たちなら私の剣となってくれるだろうって」
「剣……ねぇ。シャルはどう思う?」


 シャルに意見を聞いてみる。


「私はアレンに従う。レナがパーティに入るかはどちらでも良い」


 何か良い意見が出ないか、少し期待していたが、シャルは無表情でいつもと同じように答えた。
 どちらでも良いっていう回答が一番困るってのをシャルは知らないな、全く。


「と、シャルちゃんは申してますけど」
「はぁ〜、試しに明日一緒にモンスターでも狩に行くか?」
「いいね、ぜひ行きたいな」
「じゃあそうするか。明日の朝7時に冒険者ギルドで待っていてくれ」
「分かった。楽しみに待っているとするよ。じゃあ私は退散しようかな。2人の時間を邪魔しちゃ悪いだろうし」


 そう言って、席を立つレナ。


「2人の時間……?……なッ!」


 こいつ、俺とシャルがそういう関係だと思っているのか!?



「ふふふ、照れちゃって。シャルちゃんを見習いなよ。何も動じてない」
「待て!俺とシャルはそういう関係じゃないぞ!」
「あらあら、そうやって否定するとシャルちゃんが悲しむよ。じゃ、また明日会おう」
「おい!待て!」


 俺の叫び声を無視して、ニヤニヤしながら去っていくレナを見て深いため息をついた。

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