不遇職テイマーの成り上がり 〜スキル【吸収】でモンスターの能力を手に入れ、最強になる〜

愛犬ロック

第14話 テイマーは冒険者に絡まれる

『兄貴ィ!冒険者に見つかったッス!!』


 30レベルになるためにフォルトリアの森でモンスターを狩っているとき。
 ゴブから意識共有で冒険者に見つかったと報告が入ってきた。
 冒険者がゴブ達を見つけるなり攻撃を仕掛けてくる可能性が高い。
 状況を聞く暇がなく、ゴブ達が既に危険な状況だったときのことを考え、真っ先に吸収を使った。
 そして、放出する。


『うぅ、申し訳ないッス……兄貴』


 申し訳なさそうに顔を伏せるゴブ。


『冒険者に見つかってもいいと思ってたから特に気にする事はない』
『了解ッス!』


 俺が気にしていない事を伝えると、ゴブはケロッと態度を変えてきた。
 これを言うと、ゴブが悲しむだろうから言わないが……ゴブの笑顔は何かムカつくな。


『それで、どんな感じで見つかったんだ?』
『アッシらが大ネズミを狩っているときに見つかったっス。冒険者達はアッシらが戦っている光景を見て驚いていたッスね』
『ふむ、ゴブ達が見つかってどうなるか、しばらく観察した方がいいかもな。とりあえず、当分はゴブ達にモンスターを狩らせるのは控えるよ』
『えー、結構楽しかったんスけどねぇ』
『悪いな』
『まっ、大丈夫ッスよ!吸収先もそれなりに楽しいッスからね』






 と、こんな感じでゴブ達が他の冒険者に見つかった訳だ。
 それのせいか、もしくは他の原因なのか、フォルトリアの冒険者ギルドではテイマーの冒険者がいると噂になっているようだった。
 冒険者ギルドでは、報酬金を受け取って帰るという事だけしか行うことがないため、別にいいかと放っておいたのだが……。


「おい、皆んな!あいつがテイマーだぜ!」


 一人の冒険者が俺を指差して、そう言った。
 周りは俺に注目を向ける。
 それより、俺はどうしてバレたんだ?
 テイマーだと声をあげた奴を見ると、見覚えがあった。


(あいつ、前にいた町の冒険者ギルドにいた奴だ)


 前にいた町では俺がテイマーだと言うことは、周知の事実であり、よくそれをバカにされたもんだ。
 だから、アイツはフォルトリアでも俺をバカにしようって事だろう。


 一人の冒険者が俺の方にやってきた。
 体格がでかく、背中に斧を背負っている。
 いかにも前衛職という感じの男だ。


「お前テイマーなんだってな。テイマーみたいな不遇職が一丁前に冒険者か?笑わせてくれるぜ」


 ガッハッハと男が笑うと、周りもそれに便乗して笑う。
 やはり、人間ってやつは弱い者いじめが好きなようだ。


「アレン、この人殺していい?」


 隣で物騒な事を言い出すシャル。
 お前マジでやり兼ねないから怖いんだが。


「ダメだ。殺しても良い事なんて一つもない」
「分かった」


 この会話を聞いた目の前の男は眉間にしわを寄せる。いかにも怒っているという表情だ。


「あ゛あ゛?何舐めた口きいてんだ?おい」
「すいません……僕がテイマーというのは事実ですが、それで貴方に不利益が及ぶ事ってないですよね。なら――」
「ごちゃごちゃうるせえな!テイマーが冒険者やってる事に腹が立つんだよ」
「横暴すぎません?」
「わりぃのかよッ!おいッ!」


 目の前の冒険者は声を怒鳴りあげて、俺の胸ぐらを掴む。
 だけど、何も怖くなかった。


 ――鑑定


 種族:人間
 名前:サンタ=クロース
 性別:男
 年齢:18歳
 職業:戦士
 レベル:25
 HP:1224
 MP:1224
 攻撃:1224
 防御:1224
 魔力:1224
 敏捷:1224

 《職業スキル》
【スラッシュ:レベル2】
【ガードクラッシュ:レベル2】

 《通常スキル》
【斧術:レベル3】



 綺麗に中途半端な数字で揃っているステータスだが、俺より弱い。
 ホブゴブリンぐらいの強さだ。
 少し前の俺なら苦戦するだろうが、今の俺のステータスなら簡単に倒す事が出来る。


 俺の胸ぐらを掴む腕を右手で強く握る。


「ぐッ――てめぇ……」


 サンタ=クロースは痛みで顔を一瞬歪ませたが、すぐに俺を睨みつける。


「離してくれませんか?騒ぎを起こすつもりは一切無いんですよ」


 腕を握る力を少し強くして、俺はそう言った。


「ッチ、分かった。これぐらいで勘弁してやる」


 男は舌打ちをして、胸ぐらを掴んでいた手を離した。
 この場合、勘弁してあげた側は俺な気がするのだけど……。
 俺を睨みつけながら去っていく冒険者の男。
 強い奴なのかと思ってみれば、微妙な奴だったな。
 こんな奴が出しゃばってもいいのか?
 少しそう思った。


 冒険者の男が去った後は、周りの冒険者から野次を飛ばされた。


「見逃してもらってよかったな!」
「おい、ビビってまともに話もできねえのか?」
「何も言えないでやんの!可愛そ〜」


 こんな感じで野次を飛ばされている。
 うーむ、今日からこんな感じの扱いなんだろうか。
 とりあえず今は、とっとと冒険者ギルドから出よう。
 野次を背に受け、俺とシャルは冒険者ギルドから出て、いつも夕食を食べている酒場に向かった。


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