不遇職テイマーの成り上がり 〜スキル【吸収】でモンスターの能力を手に入れ、最強になる〜
第1話 テイマーはスライムを仲間にする
この世界で俺は成り上がる事を決心した。
そのためには、まず強さが必要だ。
強さがなければ、不遇職の俺では何も出来ない。
だから、何よりも優先に強くならなければならない。
その為には、まず働き先を変える必要がある。
坑夫として働くのは、これで終わり。
俺は強さを手に入れる術を手に入れたのだから。
――グリーンスライムを倒したことにより獲得したユニークスキル【吸収】
一晩考えた結果、このスキルはとんでもない能力を秘めていることに気付いた。テイムしたモンスターの能力を無制限に自分のモノに出来るとか……ぶっ壊れにも程がある。
まさにテイマーのためだけに存在するスキル。これを有効活用するには、モンスターを狩ることを生業としなければならない。
となれば、働き先は一つ。
そう、冒険者だ。
坑夫を辞めるという事を報告しに行こうか迷ったが、言ってしまえば日雇いの仕事だ。
俺一人抜けたところで影響は全くと言っていいほどないだろう。
……いや、一つあったな。
自分で言うのも悲しいが、俺というストレス解消の道具がなくなることは損失と言えるかもしれないな。
◇
この町には、小さいながらも冒険者ギルドが存在する。冒険者の仕事は、主にモンスターの討伐だ。それによって、依頼主から報酬金を得る事が出来る。仮に依頼がなくとも、モンスターを狩れば周辺の治安維持に繋がるため、ギルドから報酬金がもらえる。
例外的に冒険者に依頼される内容でモンスターと討伐以外の内容が課される事があるが、そういう依頼は稀なようだ。
何故、冒険者でない俺がこういった知識があるのかと疑問に思うだろう。
何を隠そう俺は、冒険者に憧れていたのだ。テイマーの職業を得るまでは、冒険者になる事をずっと夢見ていた。そのときに得た知識が少しあるぐらいなので、誇れたものではないが。
ギギギ……
冒険者ギルドの少し古びた木製のドアを開ける。
ギルドの中は、お世辞にも活気付いているとは言えない。
冒険者登録を済ませよう。
窓口に行き、受付嬢に尋ねる。
「冒険者になりたいんですけど、どうすればいいですか?」
受付嬢はニッコリと微笑みながら答える。
「それならコチラで登録出来ますよ。この紙に名前、年齢、性別、職業を書いて頂けますか?」
「はい」
と答えて、俺は一つずつ記入していく。
名前はアレン=ラングフォード。
年齢は16。
性別は男。
職業は……テイマー。
職業の部分を書き終えると、受付嬢は舌打ちをして小さな声でこう言った。
「ッチ……不遇職かよ」
全く……ここでもか。
本当に世の中というものは、不遇職に厳しいらしい。
この受付嬢もわざと俺が聞こえそうで聞こえない大きさで言ったのだろう。被害妄想かもしれないが、実際俺は受付嬢の悪口が聞こえてしまっている。それだけは紛れもない事実だ。
俺が書いた紙を渡すと、受付嬢は何事もなかったような笑顔を見せる。
「はい、これで登録完了しました!では、よい冒険者ライフを!」
そう言う受付嬢。
しかし、これで登録が正式に完了したわけではない。
ギルドカードを発行しなければ冒険者として登録されたことにはならない。
その事を受付嬢が知らないはずないのだが……。
「あの、ギルドカードは発行しないんですか?」
そう聞くと、受付嬢はまた舌打ちした。
今度は隠しもせずに。
「あーはい。忘れてました。今、発行しまーす」
やる気の無さそうな声や態度。
不遇職だからと言って、完全に舐められている。
……まぁいいさ。
ちゃんと冒険者登録を行ってもらえれば、それでいい。
文句を言うのは、強くなってからでも遅くはない。
「はいこれ」
そう言って、受付嬢はポイっとギルドカードを投げてきた。ギルドカードは地面を滑り、摩擦によって止まった。
「ありがとうございます」
と言って、俺はギルドカードを拾う。
受付嬢は説明していなかったが、ギルドカードを紛失すると再発行には料金が発生する。
だから大切にしておかなければならない。もし、今のでギルドカードが壊れたらどうなってたことか。
◇
冒険者ギルドから出てきた俺は平原に向かった。
ギルドの掲示板に張り出されている依頼は見なかった。何故なら、今の俺では依頼をこなす事が出来ないからだ。
今の俺に倒せるのはせいぜいスライム程度。
一応、スライム10体倒せば銅貨1枚と交換してもらえる。低賃金だが、強くなれば倒せるモンスターも強くなる。そうすると、収入は大きく変わってくるだろう。最初のうちは坑夫より少ない給料で我慢するしかないな。
平原を歩いていると、青色のスライムを発見した。
青色は変異種でも何でもない普通のスライムだ。
前回同様、俺の武器はそこら辺に落ちてた木の棒。
夜になると、スライムより強いモンスターが活動し出すので、剣ぐらい買いたいところだが、装備を揃えるだけの金は無い。日が暮れる前に帰れば当分は木の棒だけでも大丈夫だろう。
無防備なスライム目掛けて木の棒を振り下ろす。
「とりゃ!」
スライムは粘液を飛ばし、粒子となって消滅した。
さあ、仲間にしてやる。と意気込むが……。
……あれ?いつまで経っても前回のような音声が頭の中に流れない。
どうなっているんだ。
ステータスを見てみると、何も変化はない。
テイムした事にもなっていない様だ。
……ん、テイム?
そういえば、テイムの能力説明を見たことがなかったな。
そこに答えがあるかもしれない。
《倒したモンスターを20%の確率で仲間にする事が出来る。
スキルレベル1/2/3/4/5=20%/40%/60%/80%/100%》
なるほど。
現在、俺は【テイム:レベル1】だ。
よって、倒した際にモンスターが仲間になる確率は20%という事になる。
道理でスライムが仲間にならない訳だ。
そう考えると、グリーンスライムが仲間になったのは相当運が良かったのかもしれない。
俺はそれから日が暮れるまでスライムを狩った。
スライムを倒すより見つけるのに時間がかかった。割とそこら辺にぷよぷよと生息しているのだが、いざ倒そうとなると中々見つからない。
休憩抜きでスライムを狩り続けたが、50体目を倒したところで日が暮れそうなのに気づき、狩りを終了した。討伐した数は一々数えなくてもギルドカードが記録してくれる。
どういう原理で出来ているのかは謎で、古代魔導具の一種らしい。
そして仲間になったスライムの数は11体。統計的に見ると、やはり仲間になる確率は20%のようだ。
もちろん、仲間になったスライムは吸収してステータスの足しにした。グリーンスライム同様、1体のスライムによって上昇するステータス値はALL +1。
今日で合計ALL +11だけステータスが上昇した。
スキルや耐性は増えることはなく、ステータスだけ上昇するようだ。同じスライムだから仕方ない。
スキルや耐性を手に入れるために、多くの種類のモンスターを倒して仲間にする必要があるな。
だが、当分はスライムを狩ってステータスを鍛える事が先決だな。
冒険者ギルドに行き、スライムを50体討伐した事で5枚の銅貨を手に入れた。
報酬金は、冒険者登録をしたときの受付嬢にもらったのだが、その時に言われたセリフが忘れられない。
「スライム狩って冒険者気取りの不遇職とかキモすぎ」
もちろん、俺は何も言い返さなかった。
何故ならそれは事実であり、俺に言い返すだけの実力が伴ってないからだ。今の俺ではスライムしか倒せないのはステータスを見ればすぐに分かる。
だが、すぐにお前の目の色を変えてみせる。
お前の馬の糞みてえな職務態度をいずれ改善させてやるよ。
銅貨5枚でおばさんのパン屋で買ったパンと帰り道に採取した野草を茹でただけのスープが俺の夕食。
母さんのいない初めての食事。
母さんとの思い出が蘇り、ポロポロと涙が溢れ、涙の粒が頰を流れ落ち、手に持ったパンに滲みる。
「……母さん」
過去はもう振り返らない。
そう決めた筈なのに、俺の心はまだ弱く、どうしても涙が溢れてくる。
強くならなければいけない。
肉体的にも精神的にも。俺はひたすらに強さを求めなければいけない。
涙を拭い、両手で顔をパチンと叩く。
「見ててくれ、母さん。俺は強くなる」
◇
そして、一週間が過ぎた。
朝起きて、平原に行きスライムを狩る。
狩ったスライムの報酬金をもらい、パンと野草のスープを食べる。
この生活を続けていた。
スライムを仲間にしていると、計15体目のモンスターを仲間にしたときテイムのレベルが上がった。
モンスターが仲間になる確率が40%にあがり、効率が上がった。
現在、計131体を仲間にしたが、テイムのレベルは上がらない。
次は何体仲間にすれば、テイムのレベルが上がるのだろうか。
早めにテイムにレベルをMAXにしたいところだ。
そして、現在のステータスはこうなった。
種族:人間
名前:アレン=ラングフォード
性別:男
年齢:16歳
職業:テイマー
レベル:12
HP:153
MP:153
攻撃:144
防御:144
魔力:144
敏捷:144
《恩恵》
【獲得経験値上昇(小)】
《耐性》
【痛覚耐性(小)】
【物理攻撃軽減】
【魔法攻撃軽減】
【状態異常軽減】
《職業スキル》
【テイム:レベル2】
【鑑定(ステータス限定):レベル1】
《ユニークスキル》
【吸収:レベル1(MAX)】
【自己再生:レベル1(MAX)】
ようやく新人冒険者程度のステータスを手に入れる事が出来た。テイマーでは決して届かない領域に俺は至る事が出来た。このステータスで既に俺は世界一強いテイマーだろう。
ちなみに今までスライムを倒してきた中で変異種は一匹もいなかった。みんな青色だ。
レベルが上昇したときのステータスの伸びは相変わらず、ALL +1。スライム1体を吸収するのと変わらない伸び方だ。
しかし、10レベルになったときに【鑑定(ステータス限定):レベル1】を獲得した。
これを人間やモンスターに使えば、ステータスを閲覧する事が出来るようになった。
これが非常に便利だった。
相手のステータスと自分のステータスを比べる事が出来るため、安全に立ち回る事が出来る。
そして今日、平原の近くにある森で剣をぶらんぶらんと振り回している間抜けそうなゴブリンを見つけたので、バレないようにコッソリと近づいて鑑定をしてみた。
種族:ゴブリン族
名前:ゴブリン
レベル:10
HP:78
MP:17
攻撃:71
防御:52
魔力:19
敏捷:56
《攻撃スキル》
【ショルダータックル:レベル1】
《強化スキル》
【身体強化:レベル1】
《通常スキル》
【剣術:レベル1】
ステータスを除いたとき、俺の目は細まり、口角が上がっていくのを感じた。そう、ニヤリと悪い笑みを浮かべているような……そんな気がした。
間違いなく俺はゴブリンに勝てる。
ステータスはスライムとは比べ物にならない程高く、俺よりは全体的に劣っている。
次の獲物はゴブリンだ。
……おっと、獲物という言い方は少し語弊があるな。
獲物じゃなく、仲間だったな。
隙だらけのコイツに今すぐにでも襲いかかりたい気分だが、それはしない。
もう夕暮れで今戦闘を始めれば、夜になり危険が増す。
死んでしまってはそれで終わりなのだ。時間はたっぷりとある。ゆっくり、慎重に……。
そのためには、まず強さが必要だ。
強さがなければ、不遇職の俺では何も出来ない。
だから、何よりも優先に強くならなければならない。
その為には、まず働き先を変える必要がある。
坑夫として働くのは、これで終わり。
俺は強さを手に入れる術を手に入れたのだから。
――グリーンスライムを倒したことにより獲得したユニークスキル【吸収】
一晩考えた結果、このスキルはとんでもない能力を秘めていることに気付いた。テイムしたモンスターの能力を無制限に自分のモノに出来るとか……ぶっ壊れにも程がある。
まさにテイマーのためだけに存在するスキル。これを有効活用するには、モンスターを狩ることを生業としなければならない。
となれば、働き先は一つ。
そう、冒険者だ。
坑夫を辞めるという事を報告しに行こうか迷ったが、言ってしまえば日雇いの仕事だ。
俺一人抜けたところで影響は全くと言っていいほどないだろう。
……いや、一つあったな。
自分で言うのも悲しいが、俺というストレス解消の道具がなくなることは損失と言えるかもしれないな。
◇
この町には、小さいながらも冒険者ギルドが存在する。冒険者の仕事は、主にモンスターの討伐だ。それによって、依頼主から報酬金を得る事が出来る。仮に依頼がなくとも、モンスターを狩れば周辺の治安維持に繋がるため、ギルドから報酬金がもらえる。
例外的に冒険者に依頼される内容でモンスターと討伐以外の内容が課される事があるが、そういう依頼は稀なようだ。
何故、冒険者でない俺がこういった知識があるのかと疑問に思うだろう。
何を隠そう俺は、冒険者に憧れていたのだ。テイマーの職業を得るまでは、冒険者になる事をずっと夢見ていた。そのときに得た知識が少しあるぐらいなので、誇れたものではないが。
ギギギ……
冒険者ギルドの少し古びた木製のドアを開ける。
ギルドの中は、お世辞にも活気付いているとは言えない。
冒険者登録を済ませよう。
窓口に行き、受付嬢に尋ねる。
「冒険者になりたいんですけど、どうすればいいですか?」
受付嬢はニッコリと微笑みながら答える。
「それならコチラで登録出来ますよ。この紙に名前、年齢、性別、職業を書いて頂けますか?」
「はい」
と答えて、俺は一つずつ記入していく。
名前はアレン=ラングフォード。
年齢は16。
性別は男。
職業は……テイマー。
職業の部分を書き終えると、受付嬢は舌打ちをして小さな声でこう言った。
「ッチ……不遇職かよ」
全く……ここでもか。
本当に世の中というものは、不遇職に厳しいらしい。
この受付嬢もわざと俺が聞こえそうで聞こえない大きさで言ったのだろう。被害妄想かもしれないが、実際俺は受付嬢の悪口が聞こえてしまっている。それだけは紛れもない事実だ。
俺が書いた紙を渡すと、受付嬢は何事もなかったような笑顔を見せる。
「はい、これで登録完了しました!では、よい冒険者ライフを!」
そう言う受付嬢。
しかし、これで登録が正式に完了したわけではない。
ギルドカードを発行しなければ冒険者として登録されたことにはならない。
その事を受付嬢が知らないはずないのだが……。
「あの、ギルドカードは発行しないんですか?」
そう聞くと、受付嬢はまた舌打ちした。
今度は隠しもせずに。
「あーはい。忘れてました。今、発行しまーす」
やる気の無さそうな声や態度。
不遇職だからと言って、完全に舐められている。
……まぁいいさ。
ちゃんと冒険者登録を行ってもらえれば、それでいい。
文句を言うのは、強くなってからでも遅くはない。
「はいこれ」
そう言って、受付嬢はポイっとギルドカードを投げてきた。ギルドカードは地面を滑り、摩擦によって止まった。
「ありがとうございます」
と言って、俺はギルドカードを拾う。
受付嬢は説明していなかったが、ギルドカードを紛失すると再発行には料金が発生する。
だから大切にしておかなければならない。もし、今のでギルドカードが壊れたらどうなってたことか。
◇
冒険者ギルドから出てきた俺は平原に向かった。
ギルドの掲示板に張り出されている依頼は見なかった。何故なら、今の俺では依頼をこなす事が出来ないからだ。
今の俺に倒せるのはせいぜいスライム程度。
一応、スライム10体倒せば銅貨1枚と交換してもらえる。低賃金だが、強くなれば倒せるモンスターも強くなる。そうすると、収入は大きく変わってくるだろう。最初のうちは坑夫より少ない給料で我慢するしかないな。
平原を歩いていると、青色のスライムを発見した。
青色は変異種でも何でもない普通のスライムだ。
前回同様、俺の武器はそこら辺に落ちてた木の棒。
夜になると、スライムより強いモンスターが活動し出すので、剣ぐらい買いたいところだが、装備を揃えるだけの金は無い。日が暮れる前に帰れば当分は木の棒だけでも大丈夫だろう。
無防備なスライム目掛けて木の棒を振り下ろす。
「とりゃ!」
スライムは粘液を飛ばし、粒子となって消滅した。
さあ、仲間にしてやる。と意気込むが……。
……あれ?いつまで経っても前回のような音声が頭の中に流れない。
どうなっているんだ。
ステータスを見てみると、何も変化はない。
テイムした事にもなっていない様だ。
……ん、テイム?
そういえば、テイムの能力説明を見たことがなかったな。
そこに答えがあるかもしれない。
《倒したモンスターを20%の確率で仲間にする事が出来る。
スキルレベル1/2/3/4/5=20%/40%/60%/80%/100%》
なるほど。
現在、俺は【テイム:レベル1】だ。
よって、倒した際にモンスターが仲間になる確率は20%という事になる。
道理でスライムが仲間にならない訳だ。
そう考えると、グリーンスライムが仲間になったのは相当運が良かったのかもしれない。
俺はそれから日が暮れるまでスライムを狩った。
スライムを倒すより見つけるのに時間がかかった。割とそこら辺にぷよぷよと生息しているのだが、いざ倒そうとなると中々見つからない。
休憩抜きでスライムを狩り続けたが、50体目を倒したところで日が暮れそうなのに気づき、狩りを終了した。討伐した数は一々数えなくてもギルドカードが記録してくれる。
どういう原理で出来ているのかは謎で、古代魔導具の一種らしい。
そして仲間になったスライムの数は11体。統計的に見ると、やはり仲間になる確率は20%のようだ。
もちろん、仲間になったスライムは吸収してステータスの足しにした。グリーンスライム同様、1体のスライムによって上昇するステータス値はALL +1。
今日で合計ALL +11だけステータスが上昇した。
スキルや耐性は増えることはなく、ステータスだけ上昇するようだ。同じスライムだから仕方ない。
スキルや耐性を手に入れるために、多くの種類のモンスターを倒して仲間にする必要があるな。
だが、当分はスライムを狩ってステータスを鍛える事が先決だな。
冒険者ギルドに行き、スライムを50体討伐した事で5枚の銅貨を手に入れた。
報酬金は、冒険者登録をしたときの受付嬢にもらったのだが、その時に言われたセリフが忘れられない。
「スライム狩って冒険者気取りの不遇職とかキモすぎ」
もちろん、俺は何も言い返さなかった。
何故ならそれは事実であり、俺に言い返すだけの実力が伴ってないからだ。今の俺ではスライムしか倒せないのはステータスを見ればすぐに分かる。
だが、すぐにお前の目の色を変えてみせる。
お前の馬の糞みてえな職務態度をいずれ改善させてやるよ。
銅貨5枚でおばさんのパン屋で買ったパンと帰り道に採取した野草を茹でただけのスープが俺の夕食。
母さんのいない初めての食事。
母さんとの思い出が蘇り、ポロポロと涙が溢れ、涙の粒が頰を流れ落ち、手に持ったパンに滲みる。
「……母さん」
過去はもう振り返らない。
そう決めた筈なのに、俺の心はまだ弱く、どうしても涙が溢れてくる。
強くならなければいけない。
肉体的にも精神的にも。俺はひたすらに強さを求めなければいけない。
涙を拭い、両手で顔をパチンと叩く。
「見ててくれ、母さん。俺は強くなる」
◇
そして、一週間が過ぎた。
朝起きて、平原に行きスライムを狩る。
狩ったスライムの報酬金をもらい、パンと野草のスープを食べる。
この生活を続けていた。
スライムを仲間にしていると、計15体目のモンスターを仲間にしたときテイムのレベルが上がった。
モンスターが仲間になる確率が40%にあがり、効率が上がった。
現在、計131体を仲間にしたが、テイムのレベルは上がらない。
次は何体仲間にすれば、テイムのレベルが上がるのだろうか。
早めにテイムにレベルをMAXにしたいところだ。
そして、現在のステータスはこうなった。
種族:人間
名前:アレン=ラングフォード
性別:男
年齢:16歳
職業:テイマー
レベル:12
HP:153
MP:153
攻撃:144
防御:144
魔力:144
敏捷:144
《恩恵》
【獲得経験値上昇(小)】
《耐性》
【痛覚耐性(小)】
【物理攻撃軽減】
【魔法攻撃軽減】
【状態異常軽減】
《職業スキル》
【テイム:レベル2】
【鑑定(ステータス限定):レベル1】
《ユニークスキル》
【吸収:レベル1(MAX)】
【自己再生:レベル1(MAX)】
ようやく新人冒険者程度のステータスを手に入れる事が出来た。テイマーでは決して届かない領域に俺は至る事が出来た。このステータスで既に俺は世界一強いテイマーだろう。
ちなみに今までスライムを倒してきた中で変異種は一匹もいなかった。みんな青色だ。
レベルが上昇したときのステータスの伸びは相変わらず、ALL +1。スライム1体を吸収するのと変わらない伸び方だ。
しかし、10レベルになったときに【鑑定(ステータス限定):レベル1】を獲得した。
これを人間やモンスターに使えば、ステータスを閲覧する事が出来るようになった。
これが非常に便利だった。
相手のステータスと自分のステータスを比べる事が出来るため、安全に立ち回る事が出来る。
そして今日、平原の近くにある森で剣をぶらんぶらんと振り回している間抜けそうなゴブリンを見つけたので、バレないようにコッソリと近づいて鑑定をしてみた。
種族:ゴブリン族
名前:ゴブリン
レベル:10
HP:78
MP:17
攻撃:71
防御:52
魔力:19
敏捷:56
《攻撃スキル》
【ショルダータックル:レベル1】
《強化スキル》
【身体強化:レベル1】
《通常スキル》
【剣術:レベル1】
ステータスを除いたとき、俺の目は細まり、口角が上がっていくのを感じた。そう、ニヤリと悪い笑みを浮かべているような……そんな気がした。
間違いなく俺はゴブリンに勝てる。
ステータスはスライムとは比べ物にならない程高く、俺よりは全体的に劣っている。
次の獲物はゴブリンだ。
……おっと、獲物という言い方は少し語弊があるな。
獲物じゃなく、仲間だったな。
隙だらけのコイツに今すぐにでも襲いかかりたい気分だが、それはしない。
もう夕暮れで今戦闘を始めれば、夜になり危険が増す。
死んでしまってはそれで終わりなのだ。時間はたっぷりとある。ゆっくり、慎重に……。
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