元賢者の最強剣士 〜二度目の人生は自由に冒険者ライフを送る〜

愛犬ロック

第19話 歴史を勉強してみた

 ギルドマスターからケータイをもらい、その後俺はシンディにしばらくの間屋敷に泊めてくれとお願いした。
 すると、快く承諾してくれた。
 やはり、持つべき物は金持ちの友人だと思う。


 シンディの屋敷に泊まった翌日、俺は図書館に来ていた。
 目的は俺が転生した300年の間の歴史を知ること。
 村にいるときは大して変わりないのかと思っていたが、村の外に出てみると文明は結構発展している。
 その発展の経緯を知りたい訳だ。


 図書館には、制服を着た学生の姿がちらほら見られた。
 それもそのはず。
 王都には、300年前には存在しなかったが現在ではフォルトテクナ魔法学園があり、多くの学生がいるんだそうだ。
 図書館に来る途中に見たが、建物はかなり大きく、敷地も広大だった。


 学園……か。
 機会があったら入学してみたいところだが、今のところそんな機会はなさそうだな。


 さて、では歴史書を探すとしよう。








 ◇






 歴史書を見つけ、読むこと数時間。
 1日でこの分厚い歴史書を読破することは不可能であるが、なかなか面白い歴史を発見した。


 この世界では、100年周期で世界征服を企む魔王が現れる。
 それに対抗するため、200年前からこの国では、異世界より勇者を召喚する文化があるらしい。
 俺の時代にも勇者はいたが、そいつは召喚された勇者ではなくナチュラル勇者だった。
 だが、残念ながら200年前には勇者が存在しなかったようだ。
 それで魔王に対抗する残された策の一つが――異世界から勇者を召喚するって訳だな。
 そして、異世界の勇者に関する記述の一つに、


 《異世界から召喚された勇者は物凄く強く、最も偉大な賢者ルークと並ぶぐらいであった。》


 と、記述されているのを見つけて凄く恥ずかしくなった。
 てか俺、その時にはもう死んでるから!
 この歴史書書いた奴!妄想語ってんじゃねぇ!




 この時代の文明が進んでいる理由は、勇者に召喚による異世界の文化を取り入れたかららしい。


 凄いな、異世界。




 トントン


 机を叩かれた。


「あのー、閉館時間になりましたのでお帰りください」
「あ、はい」


 随分と時間が経っていたようだな。
 かなり集中して歴史書を読んでいたようだ。
 言われた通り、図書館を出る。


 辺りは既に暗くなっていた。
 そういえば、殺人事件の調査を頼まれてたっけ。
 気乗りしないが、街の中を歩いて調査してみるか。




 ……と、なることはなくその日の俺はシンディの屋敷に戻った。




 そして、図書館とシンディの屋敷を行き来すること約一週間。




 この一週間で本当に色々な知識が手に入った。


 この300年間で何があったか。
 簡単にまとめると……


 ・魔法や武術の発展はなかった。しかし、平和になったことにより、失われた魔法や武術が存在する。


 ・300年前と比べ国同士の戦争が増加した。


 ・昔の俺が神格化されていて引く。


 ・異世界から召喚された勇者により、文明は発展。




 これらが分かった情報だった。
 失われた魔法の代表格として紹介されていたのは、《影魔法》だ。
 魔法の効果が残酷すぎるあまり現在では、使用が禁止されているらしい。
 失われた魔法もとい禁術として語られている。


 《影魔法》が禁術ねぇ……。




 ――おっと、そろそろ閉館時間だ。
 注意される前に帰ろう。


 そういえば、殺人事件の調査まったくしてないな。
 デューイからは、ただ王都に滞在しているだけでいいと言われているから問題ないのだけども。
 それでも何もしていないというのは、少しだけ罪悪感が湧くというものだ。


 その晩、屋敷に戻った俺はリリアやシンディに聞き込みをしてみることにした。
 リリアは、俺と同じようにシンディの屋敷に居候している。
 リリア曰く、しばらくは姉さんの言う事聞いてなきゃ後が怖いんだとか。
 何か複雑な事情でもあるのかもしれない。


 リリアについて話したところなので、まずはリリアに殺人事件について聞き込みをすることにした。




「奇妙な殺人事件?ああ、そういえば最近噂になってるわね」


 どうやら噂になっているようだ。


「ほう、何か詳しい事は知っているか?」
「詳しい事って言われても私だって噂程度にしか知らないわよ。被害者は皆男性らしいわね。干からびたような死体が発見されてるとか」
「それぐらい知ってるわバカモン」
「――なっ!人がせっかく教えてあげてるのに!」
「他に何かないのか?」
「はぁ、残念ながら何も知らないわ。役に立てなくてごめんなさいね」


 ……あれ、何となくだが大人しい気がする。
 あまり深い仲ではないが、もうちょっと噛み付いてくるような奴というイメージが俺の中にはある。
 馬鹿にしても面白くなさそうなので、無難に話をおわらそう。


「そうか。まあ、知ってる情報だったが教えてくれてありがとな」
「ええ。……って一言余計よ」


 会話を終わらせ、リリアの部屋を後にする。
 次はシンディの部屋に向かうとしよう。













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