元賢者の最強剣士 〜二度目の人生は自由に冒険者ライフを送る〜

愛犬ロック

第1話 転生

「もう余命も僅かか……」


 俺の身体は不治の病に侵され、後は死を待つのみといった状態だ。
 治せないかと色々と最善を尽くしたが、どの回復魔法でも効果はなく、為すすべなしときた。


「これで終わりってのも味気がないよな」


 多くの厄介事に巻き込まれ、解決していくうちに俺は英雄と称えられるようになった。
 間違いなく歴史にも名を残すだろう。
 だが、そんなものに何の意味があるというのだろうか。
 俺のやりたかった事が何一つ出来なかったのだ。
 俺は自由に生きたかった。
 誰かのために行動するのではなく、自分のためだけに行動する。
 そんな自由が欲しかった。
 こんな人生では不完全燃焼だ。




「だから俺は、また一から始めようと思う」




 空虚な部屋で俺の声だけが響く。
 地面には円状の幾十にも重ねられた魔術回路が描かれている。
 複雑かつ膨大な魔術回路だ。
 これから俺が唱える転生魔法を起動させるのに必要なものである。


 尤もこの魔法を使える事が出来る奴なんて俺ぐらいだろうがな。
 この世界の住人は魔法についての理解が浅すぎる。




「転生魔法」




 右手に魔力を集中させ、地面に魔術回路のうえに乗せる。
 転生魔法が始動し、地面に描かれた魔術回路が輝き出す。


 これで俺は300年後の世界に転生出来るだろう。
 300年も経てば、魔法や武術が発展して少しは世界も平和になるだろう。
 俺を驚かせてくれる魔法があれば尚良いな。
 そして平和になった世界で俺は冒険者になり、自由を満喫する。
 ああ、なんと素晴らしいことだろうか。


 そんなことを考えているうちに視界がぼやけてきて、段々と何も考えれなくなってきた。
 眠いときと似ているなーとぼんやりと思いながら、俺の意識は失った。






 ◇








 目覚めると俺は赤ん坊だった。
 しかし、既に意識や自我があり転生魔法の成功を喜んだ。
 目の前にいる男女二人が巨人のように見える。


「ノアちゃん、ご飯よ〜」


 そう言って女の人が乳を飲ませてくれた。
 この人が今世の母親なのだろう。


「ノアは可愛いなあ〜」


 その横で俺の頬をツンツンと指でつつく男が父親だろうな。
 どちらも美形なので、ブサイクに育つことはないはずだ。
 赤ん坊ながらそう思った。


 ちなみに母乳は凄く美味かった。
 何か変態っぽい響きだが、俺は決して変態ではない。
 きっと赤ん坊は本能的に美味いと感じるのだ。




 そして、5年の月日が流れた。




 一つ安心したのは、自分の親が貴族ではなかったということだ。
 貴族の奴らは、自分の家系の評価ばかりを気にして日々を過ごしている。
 そんな生活のどこに自由があるというのだろうか。
 あと、貴族と話すのは面倒くさいから嫌いだ。


 ノアと名付けられた俺は、村に住む農民の家で裕福とは言えないが生活するのに困ることもなく両親の愛情を受け育てられている。
 もちろん農民の家なので、家名はない。


 村の子供達とも仲良くしてあげている。
 ここで俺が上から目線で物を言っているのは、中身は立派な大人であるからだ。
 周りの子供達にレベルを合わせ、遊んであげている。
 間違いなく、余裕のある大人の行動だ。


「おい、ノア勝負だ!今日こそは負けねーぞ」


 しかし、生意気なガキという奴はどこの世界にもいるようだ。
 こいつは領主の息子で、名前は……なんだっけな。
 断ると面倒なので、仕方なく勝負に付き合ってやるとする。
 こう見えても子供は割と好きだからな。


「はいはい分かったから今日は何がお望みだ?」


「森まで競争だ!」


 それ昨日もやっただろ……。
 なんて事は言わない。
 子供と論理的な会話を求める事がおかしな話なのだから。


「いいけど、どっから」


「よーいドン!」


 俺の話を聞かずに一人でスタートして、走っていく。
 子供の勝負においてズルは日常茶飯事だ。
 昨日は真面目にやったから正攻法では勝てないと学習したのだろう。
 それで勝たせてやれば勝負を挑まれる事も減るんだろうが、負けたら負けたでうざいからな。
 どうせならと思い、毎回叩きのしめている。


「ったく、勝手な奴だな」


 そう言って、俺は走り出した。
 子供が走っても筋力が少なく、走り方にも無駄が多く遅い奴が多い。
 その中でもコイツは、早い方だろう。
 だが、俺の敵ではない。
 素の状態の俺でも余裕で追い抜ける。
 単純に走るのに適したフォームを崩さず、ただ走るだけでいとも簡単に追い抜けるだろう。
 そして思惑通りすぐに追い抜き、ゴールした。


 身体強化魔法を使えば、もっと圧倒的な勝利が出来るのだが、子供の身体で使うと悪影響が出る恐れがあるし、大人気なさすぎる。


「もおおおおおおおおぉぉぉ」


 領主の息子はゴールしてきたと思うと、泣き出した。
 牛か、お前は。
 子供は負けず嫌いなので、よく泣く。
 こうなっては手がつけられないな。
 とりあえず、森には魔物が出るので、近づくなと村の大人達は言われているためコイツを連れて森から離れた。
 そして俺は泣いているコイツを放置して家に帰った。
 すまんな、名前覚えるから許してくれ。






 その日の夜、ふと魔法を使ったことがない事に気付いた。
 魔力は子供にしては多く、それなりに才能はあるんじゃないだろうか。
 明日、森に行って魔物を的に初級魔法でも使ってみようかな。
 近くの森は弱い魔物しかいないため、子供の俺でも安全に遊べるはずだ。
 大人達に見つかると外出禁止なんて事もあり得そうなので、絶対に見つかってはならない。
 では、明日の為に今日は早く寝るとしよう。

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