21世紀の道元達へ

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21世紀の道元達へ

  • あらすじ

     アデュー 道元
     君という南無妙法蓮華経
     君という存在 肉体 心
     きみから見て聞いて感じた、この世界の森羅万象
     
     その有り様そのものの尊大さをわかることが悟りだ
     修行の果てに悟りがあるなどという者は馬鹿者だ
     本物の仏道では、悟りと修行を分けたりしない
     "すべてが修行だった"と悟ってから初めてわかるのが悟りだ
     そしてそれは生きとし生きるものの在り方そのものだ
     
     道元禅師はかつてその事を
     修証一如という方便で説いた
     悟らなければ絶対にわからないことを
     悟った人には必要のないことを
     よって誰の為にもならないことをわかっていながら
     修証一如などとウソツキをやった
     無為だとわかりすぎる程にわかっていながら、正法眼蔵を記すという無為
     きみが言いたいことは本当に
     只管打座 それだけだったのだ
     
     きみは煩悩の清濁を余すことなく見渡していながら、きみ自身ついに煩悩へと帰ることができないままに、54歳で若死した
     
     あまりにも純粋だったきみよ
     
     きみはすべてを知ることに耐えて生きるには
     
     いきものとして弱すぎた
     
     そして私は
     道元、きみの純粋さと弱さが
     今日の世界の一様相だけでないことを知っている
     
     21世紀の少女は生まれたばかりの赤ん坊を駅のコインロッカーに捨てては
     
     ロックアーティストの純粋さに引き寄せられて、通じ合えない愛の弱さに心を痛めて首を吊る
     
     社会と誰かの期待にそぐえないことに心を痛めては、未来と過去への絶望に身を震わせて動けなくなった哲学青年とサラリーマンが、人知れず山奥へとその姿を消した
     
     ただ純粋でありたかっただけの心優しき人々よ
     
     君たちが信じきれなかった、その愛の純粋さは
     
     君たちの弱さの代わりに、道元クンがその身をもって証明した
     
     その男もはるか昔にこの世を去った
     
     もう釈迦もイエスも道元も
     クリシュナもナポレオンも聖徳太子も
     ママもパパも政子も孝太郎もよっちゃんも飼い犬のジョンもいない
     
     君が信じきれない愛を
     君の代わりに証明してくれた数多の者たちはもう、はるか昔に去ってしまい
     足跡が残っているだけ
     
     そしてこれを書いている僕と
     読んでいる君がいて
     愛の受け渡しが行われている
     まさに いま ここで!
     
     きみは苦しまなくていいし、苦しんでもいい
     
     どちらにせよ私たちの人生になにひとつ
     
     過ちなどなかったのだ。
     なにひとつだよ なにひとつ!
     
     道元よ
     君の只管打座が
     この三千大千世界に息づく生類たちの森羅万象の生命の輝きそのものであったことを
     誰もが言葉なくして語っている
     
     だから もう、大丈夫だ
     
     安らかにお眠りください
     
     釈迦の弟子が仏教を作った
     仏教などなくとも
     仏道は息づいているのに
     そのせいで、"仏教臭い"やつがたくさん生まれた
     禁欲などという誤魔化しをやって生の尊厳を否定するのが
     そんなにも心地のよいものなのかい
     
     ありがとう
     
     すべての生きとし生けるものよ

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