Lost Film
プロローグ
現代社会において(それは問題とされているが)貧困や差別などは最も危惧すべき社会問題では無い。
通称「時の波」と呼ばれるそれは、特定の人間が一部の人々の記憶から消えてしまう現象であった。
今まで流れてきた時間が切り取られ、「その人に関する記憶以外が存在するセカイ」に変えられてしまった、というのが現時点での解釈である。
それはまるで映画のフィルムがカットされ、別のシーンが貼り付けられたように。
かくしてそのセカイのことを我々は「エクストラ・フィルム」と呼んでいる。
それらは次々と人々を巻き込み、この世界からその存在を抹消してしまった。
だが作り替えられたその「エクストラ・フィルム」のセカイでは、一般の人々にとって何ら代わり映えしない日常に感じられる。
しかしそのセカイで一般の人々と呼ばれる類に属さないものが現れた。
能力者。
特異的な現象を引き起こすそれは、今までの世界の多様な法則たちを尽く否定していった。
そんな社会の中、3年前のある事故に巻き込まれた高校一年の主人公:遡航 カイトに「時間内を移動する能力」が発現する。
だが、同じ事故にいた少女:フォルティーナ・フェイトは記憶喪失となってしまう。
彼らは刻ノ神(クロノスタ)という事務所を経営する所長:ヘスティア・キルンに雇われ、人々の依頼に答えていく。
カイトとフォルティーナは時を遡り様々な人々と出会いながら、あるべき世界に戻すため、人々の依頼に応えていく。
この世界に忍び寄る能力者の波。
時間の相補性のズレによる波。
失われた時と人々の記憶(ロスト・フィルム)を求めて彼らは運命を巻き戻す。
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