自害阻止スキルと自然治癒スキルを与えられた少年は、異世界転生からリタイヤ出来ない!
企み
ーーーーそこは、完璧な防壁によって守られた、とある屋敷の一室。
「ギアン、それは本当か?」
「ああ」
見るからに豪勢な赤イスに腰掛ける男。
サーギルは自身の子供たちから、今日起きた事を聞かされていた。
そして、大賢者ファーストが放った言葉に強い反応を示していたのである。
「なぁ、父上。あの舐めた真似したアイツらどうにかしてくれよ」
神妙な表情を浮かべるサーギルに、ギアンは口元を緩ませながらそう進言する。
それは今まで何度としてやってきたお願いであり、その願いは必ず実行される。
ーーーそう、ギアンは思っていた。
だが、
「いや、無理だな」
「は?」
「賢者の奴らがついているという事は、おそらくその子供も関係者だろう。そう易々とこちらの手口でやれるとは思えん」
それは、思いもよらない言葉だった。
想像していなかった反応に、茫然となるギアン。
しかし、サーギルは続けて口を開き、
「……だが、何も手がないわけじゃない」
その顔はまさにギアンの父親だと証明しているかのように、
「正式な決闘で蹴りをつければいいんだ。賢者を除く、という条件をつけてな」
そう言って、サーギルは凶悪な笑みを浮かばせたのである。
「そ、それって」
「武器は自由にするとさえつけ加えておけば、お前たちは強力な魔法具を使うことはできる。何、相手はただの子供だ。武力の差さえ勝ってしまえば、お前が負けることはないだろう」
「…は、ははっ、流石、父上だ」
サーギルの笑みにつられるように、笑みを浮かばせるギアン。
その一室に不気味な笑い声が響く。
ーーーそんな時だった。
「ねぇ、兄さん」
「あ?」
今までジッと黙っていたギアンの妹、ルティアが初めて声を出した。
そして、こちらに振り返る兄に対し、彼女はこう言ったのである。
「その試合、私も出てもいいかしら?」
兄であるギアンとは違い、妹のルティアは口は悪くもあまり悪事には加担しない性格を持つ。
だが、そんな彼女が今回、ギアンたちの話に交わると聞き、兄に加えてサーギルもまた驚いた表情を浮かばせていた。
「どうした? 珍しいじゃねえか」
「ん? そう?」
ギアンの言葉に首を傾げるルティア。
だが、そんな彼女はゆるりと唇を緩ませながら、
「だって、私も欲しいものができたんだもの」
そう言って、笑みと言葉を残した彼女は鼻歌をつきながら、その部屋を後にしていくのだった。
そうして、部屋が出た廊下を歩く彼女は口元を緩ませつつ、唇を舌舐めしながら、
「だって私………あの男子が、凄くほしいだもの」
ーーーーーそう密かな言葉を呟くのであった。
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