自害阻止スキルと自然治癒スキルを与えられた少年は、異世界転生からリタイヤ出来ない!

goro

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勝者、カルデラ!
ーーーと、話は上手く行くわけがなく…


「お主ら、二人とも修行倍じゃぞ」
「「そんなっ!?」」


カルデラとカフォンの二人は今、大賢者ファーストによって、引導を言い渡されていた。
…まぁ、あんな試合を見せたのだ。
仕方がないといえば、仕方がないのだが…。

せっかく頑張ったのにっ!? 馬鹿たれ! 頑張る方向が真逆じゃ!!

等と口論が続く中、次は神宿のクラスの番となり、

「はぁ……それじゃあ、行くか…」

と神宿がその場から立ち上がった。
ーーーと、そんな時だった。


「そうじゃ、小僧」
「ん?」


泣きすがるカルデラを無視して、大賢者ファーストは顔だけを振り向かせながら、ニヤリと笑って言う。




「精々、本気で取り組むのじゃぞ」




ーーーー言葉もそうだが、その表情も凄く気になる。
というか、嫌な予感しかしない。

変な言葉を贈られた神宿は、怪訝な表情を浮かばせたまま、こうしてクラスの元へと戻って行くのであった。










ーーーーそして、大賢者の言葉の意味を、神宿は直ぐに知ることになる。






「……………」
「……………」







それは相手クラスにいた一人の生徒。
正確には女子生徒と対面している神宿なのだが…、

「………」

向こうは一生懸命に顔を伏せ、隠しているつもりなのだが……。
神宿は引きつった表情のままで、そんな彼女に尋ねた。





「…何やってだよ、師匠」






ーーーーそこにいたのは、急きょスケットで入った謎の少女。
片目が隠れるほどの長い長髪を生やした、女子生徒。


偽名エチアーーーーーもといい、何故か子供の姿で立つ少女、賢者アーチェがその場にいたのだった。








事の経緯は、今朝の事。

「というわけで、馬鹿弟子には罰を下すのじゃ」

と、開口と共にわけの分からん魔法で子供の姿に変えられたアーチェ。
鏡の前で混乱する彼女に対し、大賢者ファーストはさらに加えて罰を付け足した。


それはーーー神宿の通う学園に通い、彼らの修行の手伝いをしろ、というものだった。
だが、しかし。


「何でそんな事しないといけないんですかー?」


当然、反発するアーチェ。
子供の姿に変えられ、更には雑用まで手伝わされる。
堪ったものではない、と彼女は叫んだのである。

ーーだが、そんな返答すら容易に読んでんていたファーストは、コソコソ話で彼女に耳打ちをした。



「(この気にあの小僧にアタックしてみてはどうじゃ? その姿なら…あの小僧との距離感をもっと近づけると思うのじゃが?)」




ーーーと。








かくして、子供の姿で弟子の前に立つアーチェは少し頰を赤らめながら、神宿に尋ねる。


「……そ、その〜、ど、どうかなー?」


…と。
だが、しかし、





「いや、どうも何もーーーーーー流石に無理があるだろ」






ビッシリ!?!?  と、その瞬間、アーチェの中の、何かが割れるような音が聞こえた。
そして、その一方で、


「……アヤツ、自分から地獄の釜を開けおったぞ」


大賢者ファーストの発言に対し、隣に座るカフォンは首を傾げるのであった。






そうして、その数分もしないうちに試合が始まった。

ボールを先に手に取ったのは、アーチェだっーーー




「ぐぼっ?!?!?!」




ーーーその直後。
神宿の頰、擦れ擦れをボールを突き抜け、その後ろにたまたま居合わせた男子生徒が吹き飛んだ。

それも、バコン!!?!? という、ありえない衝撃音と共に……。



「………し、ししょう…?」



後方から数々の悲鳴が聞こえてくる中、ガタガタと体を震わせながら視線を戻す神宿。
そして、その見た先には……、







「フフフ〜? それじゃあ、正々堂々〜頑張ろうね〜? トオルく〜ん?」









爛々と光る赤い瞳を見開かせながら、マジギレ状態マックスで笑う、賢者アーチェ。

ーーーーーかくして、この日最終の地獄試合がこうして幕を開けたのであった。




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