自害阻止スキルと自然治癒スキルを与えられた少年は、異世界転生からリタイヤ出来ない!

goro

盗み見る者



午後の授業を終え、皆が寮に帰宅する時間。
学園の入り口前で一人待つ神宿の姿があった。
と、そんな彼に、


「お待たせしました!」


パタパタと駆け足でやってくる人影があった。
同じ魔法学園に通う少女、キャロットだ。


「す、すみません。そ、その…」
「ああ、大丈夫だから。そんなに待ってないし」
「…ふぅ、そ、そうですか?」
「ああ」

どうやら急いでやって来たらしく、額についた汗を拭いながらキャロットは息を整え、

「あ、ありがとうございます。……そ、それではいきましょうか」


礼を付け加えながら、キャロットはそう言うのだった。







「それで? どうやっていくんだ? 確か遠いんだろ?」

空には夕暮れが見え、遅い時間帯という事もあって次第に陽が落ち始めようとしている。
だが、



「大丈夫です。すぐ着きますので」
「は?」


キャロットがそう言葉を発した次の瞬間。
視界は一瞬にして移り変わり、

「着きましたよ」
「!?」

神宿の目の前には、学園の校舎、いやそれ以上に大きな館が君臨していたのだった。












そして、その一方で、

「……………」
「……………」

カルデラとカフォン。校舎の影に隠れながら、神宿たちを突然と消えたことに驚きを隠せないでいた。

「い、今のって」
「た、多分、テレポートの魔法だと、思います」

カフォンの戸惑いに対して、そう言葉を返すカルデラは小さな唸り声を漏らしつつ、今から数時間前の事を思い出す。




『カルデラ』
『!? と、トオルっ!?』
『いや、その昨日は』
『むむっ蒸し返さなくていいから!で!? な、何っ? 何かようなの!?』
『ん、ああ。今日、ちょっと帰りが遅くなるから師匠にもそれを伝えといてもらおうと思って』
『え? 遅くなるって、どうして』
『まぁ、ちょっと誘われて』
『誰に?』




『えーっと、この前。俺と一緒にお前を助けに来てくれた、キャロットから』








「(別に彼氏彼女という関係ではないですよ。でも、ですね。少しは私の気持ちも察してくれても、もにょもにょ)」
「か、カルデラさん?」

その場でしゃがみこみながら、愚痴をこぼすカルデラ。
カフォンが心配した様子で声をかけるが、全く聞こえていない様子だった。
と、そんな時。





「どうしたのー? カルデラちゃんに、カフォンちゃんもー?」


ズルズルと何かを引きずりながら、一人の女性。
賢者アーチェがそう言いながら、学園の校舎内から出てきた。

「あ、アーチェ、さーーーーん?」

カフォンが目を瞬かせながら、アーチェを。いや正確には彼女が引きずっているものを見つめ、そしてーーー




「今からねー? 家まで持って行って、コッテリ地獄を味あわせようかと思ってたところなのー? 一緒にやってみるー?」



笑顔のアーチェはその手にある赤い鎖で雁字搦めに拘束した、大賢者ファーストを見せながら、そう言うのだった。




「ちなみに、昨日のお風呂での一件はコノヤロウの仕業なんだよー?」
「っ!!」
「ま、待つのじゃ!? 銃をこっちに向けるな、なのじゃぁ!?!?」




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