自害阻止スキルと自然治癒スキルを与えられた少年は、異世界転生からリタイヤ出来ない!

goro

対談と真相




大賢者ファーストから、上位の魔法が使えない理由を聞かされた神宿は今。


「…………」


へこんでいた。
神に弄ばれてる気分で、物凄く意気消沈していたのであった。

ーーーーそして、

「ま、まぁ、お主の戦い方は見事じゃったよ! 初期の魔法に特性を付け加える、確かに初期段階なら魔力は微量じゃし、その余った分を特性追加に使える、理にかなった魔法の使い方じゃた!」
「……」
「そ、その、だからじゃな。そろそろ、き、機嫌を直すのじゃ。な?」


そんな明らかに年長者である大賢者ファーストは今、年下でもある神宿を元気づかせようと頑張っている最中だった。


と、そんな所にドアがバン!と開き、




「ふー! スッキリしましたー!」




そこには、憑き物が取れたかのように、笑顔を振りまく少女。カルデラの姿があった。

そして、その開いた窓の外ではーーー



『おぉ…お』
『シサム様ッ! 生きてますか!傷は浅いので、どうか少しお待ちを』
『…わ、っ』
『わ?』
『…私に、構わないで』
『シサム様っ!? 大丈夫ですからッ!!! まだ息子様は健在してますからッ!!!』



どうやら、剣豪シサムの息子様がお亡くなりになったらしい。
マーチェが無茶苦茶泣き叫びながら、神宿にヘルプを送る中、



「ん? どうしたんですか?」



神宿とファーストの視線が向けられる中で、何ごともなかったかのように首を傾げるカルデラ。

そんな彼女に二人は、


((コイツ、やりやがった…))


と、悪寒を感じるのだった。









そして、その数分後。

「んー、ゴホン! して、貴様が我の娘の窮地を助けてくれた、トオル、で合っているのだな?」
「…あ、はい」
「ぶふっ!! 小僧に助けられた分際で、何威厳たっぷりな顔しておるのじゃっ、コイツ、っっ!」
「黙れロリババア! そもそもお前のせいで」
「お父様?」
「ッ!? そそ、そんな事はもう別にいいのだ!!」

神宿の回復魔法で息子復活した剣豪シサムは、背後に立つ自分の娘に恐怖しながら、話を強引に戻した。



「トオルよ」



そして、その鋭い目つきで神宿を見据えながら、剣豪シサムはーーー



「我が娘、カルデラを助けてくれた事に感謝する」



そう言って、頭を下げた。
一平民に貴族が頭を下げる。本来なら絶対に見られない光景でもある。

「えっ、ちょ!?」
「貴様がいなければ、もしかすればカルデラは死んでいたかもしれんと話は聞いている。そんな命の恩人に対して、礼をするのは当たり前のことだ」


そう言って頑なに頭を下げないシサムに神宿はアタフタしながらカルデラに助けをこう。
だが、その当のカルデラもまた微笑むだけで何もする事はなかった。


「わ、わかったから。……顔を上げてくれ」
「……フッ」

頼りない言葉にシサムは鼻で笑いながら、顔を上げる。
そして、側に立つマーチェを横目で見ながら、

「なるほど、確かにマーチェの報告通りの男であるな」
「……は?」
「いや、何。我が頭を下げたことをいいことに威張るようなら、即斬ろうと思っておってな」
「!?」
「誠実な男でよかったな、トオルよ」

ガッハハハハッ!! と大笑いする剣豪シサムに神宿は呆気にとられていた。
そして、そんな中で神宿は再びカルデラと目が合い、



「ありがとう、トオル」
「………おう」



その言葉に、少し照れた様子を見せる神宿なのであった。








「ーーーしかし、じゃなぁ、お主がコヤツの娘を助けたのは事実なんじゃ。これを気に、コヤツから報酬をガッポリたかるのも一つの手じゃと、私は」

と、話すファースト。
その時、笑っていたシサムの動きが止まった。

「……いや、待て。おい、ロリババア」
「誰がロリババアじゃ」
「貴様、何故トオルが我が娘を助けた事を知っている? マーチェの報告では貴様はあの場にいなかったと聞いておるのだが」




ーーーーその瞬間。
その場にいる全員の視線が、大賢者ファーストにへと向けられた。



「…ん? 何が、じゃ? 私は、今の話を聞いて、言葉を合わしただけじゃ」
「そう言えば確か、俺の魔法についても詳しかったよな? 俺、追加魔法なんてあの時以外、あまり外でも使ってなかったのに」
「っ!? 小僧っ! 何故今言った!? どう考えても、ヤバイじゃろ!?」

神宿の言葉に慌てふためく賢者。
そんな彼女に、




「なるほど。さてはまたーーーー高みの見物をしておったな、このロリババア」




剣豪シサムが剣を抜いた。
豪華な装飾の施された聖剣。
ーーー今しがた、さっき息子をお亡くなりにさせた剣だ。

「ま、待つのじゃ!? わ、私は、む、無罪じゃ」
「ほう。なら聞くが、つい最近どこかの貴族一族が廃貴族になったと噂で聞いたのだが」
「!?」
「しかも、その廃貴族は富を肥やし、平民を差別していたとも聞く。そして、何より、魔族討伐で必要だった、経路の道を邪魔しておった、とも聞いたのだが?」
「……………」



カツ、カツ、カツ、とファーストに近づく剣豪シサム。
そして、そんな彼の会話から、彼女の腹黒さを知った神宿たちが冷たい視線を向ける中で、



「さて、大賢者ファーストよ。貴様は本当に、この話に関わってないのだな?」



そう言って、笑う剣豪シサム。
一方で大賢者ファーストも、つられるように、可愛らしく笑みをーーーー







「この場で斬ってくれる!!! この悪の権化めーーーー!!!!」
「ぎゃあ!!?! た、助けるのじゃ、こ、小僧っ!!?」


バン!ガン!ザクザク!ゴン!バカン!! と剣豪VS大賢者のバトルが今まさに切って落とされるのであった。

そして、その外野では、


「トオル様、今回は誠に申し訳ないことをと」
「いや、別にもう大丈夫だから」
「よし! ならここは私がお礼として、一つ料理を」
「「カルデラ(様)はここで座って待ってろ(てください)!!」」


命の危機を死守するべく、言葉を揃えてる神宿とマーチェの姿があるのであった。


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