自害阻止スキルと自然治癒スキルを与えられた少年は、異世界転生からリタイヤ出来ない!

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転入生である少女、ファースト。
神宿のクラスへと入ってきた彼女はまるで魔法を使っているかのように、ものの数時間にして、

「ファーストちゃん! これとかどう?」
「うむっ? んーはむっ! もぐもぐ、うむ、美味しいのじゃ!」
「ファーストちゃん!これもあるよ?」
「うむ! もらうのじゃ!」

無茶苦茶クラスメートとの距離を縮め、仲睦まじく会話をする間柄になっていた。


しかも、昼時のこの時間。
いつもならガラガラの教室が今では、ほとんどの生徒が残って滞在している。
また、クラスの女子全員が何故かファーストの近くに集まり、弁当を分け与えたりしているのだ。


転入生早々の人気者。
そんなあだ名がつくほどに、ファーストは目立っていた。

ーーーーの、だが、

「……………」


そんな周囲の中で、神宿一人が難しそうな表情を浮かべながら、じっと彼女を見つめていた。

一見にして、惚れたのか? とからかわれてもおかしくない行動に見て取れる。
だが、しかし、

「なぁ、可愛いいよな! やっぱり!」
「そうだよな! ほら、あの仕草とかさぁ!」

既に、このクラスにいる男子のほとんどが彼女にメロメロだった。
だから、特に神宿が見ていても、何ら違和感はなかった。


ーーーー神宿一人を除いては、



(んー、何か凄く変な感じがするんだよなぁ〜、何ていうかぁ……初めてあったころの師匠みたいで)



確かに、ファーストは一見して美少女にも見える。

だが、皆がそこまでメロメロになるほどの色気が果たして彼女にあるのだろうか?

「…………」

クラス全員の様子に違和感を更に募らせる神宿。
と、そこでふと彼はあることを思い出した。


(…あ!? そ、そういえば、カルデラと待ち合わせしてるんだった!?)


そう気づいた時には、既に手遅れなほど昼休憩の時間はとうに半分が過ぎていた。

待ち合わせは、学園にある図書館の一室。


神宿は急いでカバンを手に取り、教室を後にした。






「ふむ」


神宿が教室を出た後、ファーストはそんな彼の姿を見送りつつ、指をパチンと鳴らす。
すると、その直後。

「ーーーーーーあれ? 私たち、何して」
「え!? もう昼休憩半分も過ぎてるよ!? どうして!?」

クラス中にいた生徒たちが、まるで今までの時間を忘れてしまったかのように、慌てふためき、あちこちで驚きの声が巻き起こっていた。


そして、その中心にいたはずのファーストはいつの間にか教室から廊下へと脱出しており、



「ふむふむ。ーーー自然治癒スキル、か。何分面白いスキルじゃな」



クラスメート全員にかけたはずの、誘惑魔法。

それをただ一人回避した神宿 透に対して、ファーストはニタリとその小さな唇を緩ませるのであった。





そして、その頃。
図書館では、


「トオル……遅過ぎます!」

頰をパンパンに膨らませるカルデラが、マーチェに作ってもらっていたはずの二人分の弁当を両手に、



「もう、全部食べてやるっ!!」



ムシャムシャムシャ!! ムシャムシャム!! と食い散らす、彼女の姿があるのだった。




「うっ!? ……何か今、悪寒がしたっ…」



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