自害阻止スキルと自然治癒スキルを与えられた少年は、異世界転生からリタイヤ出来ない!

goro

師匠とともに魔法学園へ


アーチェに届いたのは多くのひよっこでもある魔法使いたちが集まる魔法学園への招集要請を通達する手紙だった。

「…………」

いや、まぁ、それについては別にどうでもいいのだが、と内心思う神宿は側に立つアーチェに一つ質問する。


「なぁ。何で俺もいかないといけないんだよ」
「んー?別にいいでしょー? 森ばっかも飽きただろうしー?」
「いや、全然」
「もう相変わらず意固地だねー、君はー?」

が、とうのアーチェはのらりくらりと話を逸らし、全くこちらの話を聞いてくれなかった。


かくして、師匠でもあるアーチェと共に神宿はテレポートという魔法で今、魔法学園。もっとも神聖な場所でもある学園長室へと訪れていた。
それはもういわば直接だった。
簡潔に答えるなら、その部屋にそのまま飛ぶという荒業だったのだ。



何でもアーチェの姿は、人目につくと色々と問題があるらしく、やむなくそのまま学園長室へと飛んだらしいのだが、

「久しいな、アーチェ君」

そんな神宿たちの目の前には、白髪を生やしたシワのいった顔つきの老人男性が椅子に腰掛け、笑みを浮かばせながらアーチェへと声をかけてくる。

「ええ、お久しぶりですー? 学園長さまー?」

どうやら彼がこの学園の学園長らしい。
挨拶を終え頭を下げるアーチェにならい、神宿も続くように頭を下げる。

「そうだな。ん? おや、その子は」
「私の弟子ですよー? ほら、自己紹介ー?」
「っ、わかってるよ。えっと、初めまして、トオルっていいます」

どこかぎこちない神宿の様子に対し、アーチェは体を震わせ、笑いを押し殺しいる。
コイツ、後で覚えとけよ! と眉間をしかめる神宿。
その一方で、学園長である彼は神宿を見定めるように瞳を細くさせる。

「ほぉ、トオル君か。ふふっ、なるほどアーチェ君の弟子か」
「?」
「おっと、失礼。それではこちらも自己紹介といこうかな。初めまして、私はこの魔法学園の学園長を務めるガークだ。以後よろしく」

そう言って学園長自ら頭を下げる姿に神宿は、呆けた表情を見せる。

学園長と聞いていたからもあり、威厳の強い頑固ジジイだろうと予想していた。
だが、その本人はというと威厳どころか学園長らしくない、どこにでもいる優しげなお年寄りに見えてならなかったのだ。
と、

「コホン」

そんな最中。隣に立つアーチェはわざとらしく咳払いをしながらガークと向き合い、今回の招集の意図を尋ねる。


「それで、学園長は一体何の用事で私を呼んだんですかー?」
「ああ、実は……」

事の内容を話そうとしたが、彼は途中で口の動きを止めた。
そして、チラり、とガークは神宿の姿を見る。

どうやら、部外者に聞かれてはいけない内容らしく、

「あ、なるほどー? トオル君ー? ちょっと、外に出でいてくれないかなぁー?」
「? あ、ああ」

何故か、と疑問が残るも神宿は言われるまま校長室を後にした。



そうして、十分ほどした頃。
神宿は学園長室の向かい、通路側の壁に背を預けながら師匠が出てくるのを一人待っていた。
すると、閉められていた校長室のドアがゆっくりと開き、中からアーチェが出てきた。
そして、


「トオルー? ちょっと話したいことがあるんだけどー?」


いつになく真剣な表情で神宿を学園の端、あまり人のこない空き地へと連れいかれるのだった。






話というのは簡潔な所、アーチェは手が離せない仕事が急遽出来たため、一時的にあの森から離れなくてはいけない、という内容だった。

「なるほど、森を離れるねぇ」
「そうなんだよー? 私は嫌々だけど行かなくちゃいけなくて、あの家も長く離れないといけないんだよー? 一応、また身支度をし終えて、あの家に誰も入らせないために封印もしないといけないんだけどねー?」
「ふーん」

軽く聞いてはいたが、どうやらその仕事は長期的なものになるらしい。
封印とは何か穏やかじゃないな、と思いつつもそこでふと神宿はある事が気になり尋ねる。

「ん? それじゃあ、俺も師匠と一緒にいかないとダメってことか?」
「ごめんねー、トオル君ー? 今回のは私一人だけなんだよー? だからトオルには」
「あー、そうか。じゃあ仕方がねえよな。それにしても、俺もまた一人暮らしに戻るわけかー」

あの森の家でアーチェの帰りを待っていようかと初めは考えた神宿。
だが、封印すると聞いた以上、無理を言って封印を止めてもらうわけにはいかない。
これでも居候的な味でもあるのだ。
だから、神宿は、

(また、安全地帯を探さないとなぁ)

と、かつてやっていた事を思い出すように、そこまで考えていた。
そんな時、

「それでなんだけどー? あの森に居座るのは危険かもしれないからー? 私は学園長に頼み込んでみたのー?」
「は?」

突然とそんな事を口走ってきたアーチェは、どこかいたずらっぽく笑みを浮かべなが、神宿に告げる。



「トオル君ー? 君、明日からこの魔法学園に入学するんだよー?」




固まる神宿。
決まった! と指を指し、ほくそ笑むアーチェ。
かくして、急遽方向転換するような神宿 透の学園生活が明日から開始されることになるのだった。

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