終焉のカルテ

舞睦月

3.盗む勇気

どうしても勇気が出なかった。不本意であるが、盗みをしないといけない。脳裏でその葛藤が続いていた。
気が付くと午後5時。学校も終わっていた。学校で盗みを試みたも、人間的思考がそれを抑制していた。期限までそれほど時間がないことも分かっていて、焦りを覚えた。
2人の表情に朝の笑顔は消え去っていた。

「この後どうする?どこか良い場所ないかな」

「ほ、本屋とかどうかな?そこならバレないかもしれないし」

2人の声は震えていた。何かに怯えている様だった。
少し歩いて本屋に着いた。そこそこ大きい割に、人はあまり多くない。2人にとっては絶好のチャンスだった。
店内に入り、店員から見えない所まで移動した。

「未緒、やるよ」

「だ、誰も見てない?」

「大丈夫だよ、誰もいないし」

「でも、見つかったら...うちら終わりだよ」

盗らないといけない。でも、盗れない。脳裏に様々な恐怖が飛び交っていた。
それから数分程このやりとりが続いた。躊躇ちゅうちょしながらも盗みを試みた。ポケットに入れようとした瞬間のことだった。

「あの、どうかされましたか?」

店員だった。慌てて本を戻した。

「あっ、いえ。何もありません」

「そうですか。すみません」

店員はそう言い、この場を去った。見られていなかったようだ。私と未緒は顔を合わせ、一息ついた。
2人は店を出た。

午後11時、あれから何も出来ずにいた。期限までもう1時間もない。

「苦しんでますね」

聞き覚えのある声がした。目の前に悪魔が現れた。

「どうするつもりですか?あと1時間もありませんよ」

「わかってます。でも、どうしても出来ないんです。勇気が出ないんです」

未緒は泣きながら悪魔に言った。

「泣かれたところで私は動じませんよ。契約は契約ですから」

「まだ時間はありますよね」

「あと40分程あります。いいですよ~その諦めない心」

悪魔はこの状況を楽しんでいるようだ。何が目的でこのようなことをしているのだろうか。いや、今更考えることではない。

「未緒、目つむって」

「え、なんで?」

「いいから、お願い!」

何を思いついたのか。未緒は訳も分からず目をつむった。

「はい、これでいい?悪魔さん」

舞のかばんから、未緒の財布が見えた。

「面白い発想ですね。まあ、身内同士がダメとは言ってませんし...いいでしょう。おめでとうございます。ミッションクリアです」

舞は足から崩れ落ちた。未緒はまだ状況を把握していないようだ。

「それではまた日が昇ってからお会いしましょう。今日はお疲れの様ですし、ゆっくり休んでください。まあ、もう今日も終わりなんですけどね」

そう言って悪魔は去った。

その後、舞と未緒は帰りながら話をした。悪魔のこと、綾のこと、これからのミッションのこと。その他も色々と話した。

舞は家に帰り、ベッドに入った。天井を見て目を閉じた。

「これからは地獄のような日々。私、どうなるんやろうか」

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