終焉のカルテ

舞睦月

1.不慮の事故

昼過ぎから大雨が降るそうだ。快晴の空を窓の内から見上げ、そう思った。私の席は教室の窓側で午後になると、日が差し込み授業をサボるのに最適の気温になる。今日も窓にもたれて目をつむった。

「舞《まい》、おーい舞、授業終わったぞ」

「ん~、ママ?」

「そーだよ、舞の大好きなママだよ~」

「あ~っ、未緒《みお》と綾《あや》ちんだ~」

教室に残っていたのは、私と未緒と綾の3人だけだった。授業が終わってからどれだけ経ったのだろうか。

「ごめん...待った?」

「ううん、20分くらい待っただけだよ」

綾のサラッと言ったことが頭に響いた。気遣ってくれたのか、少し嫌味を混ぜたのか...ほとんど後方にしか取れないのだが...

「舞も起きたことだし、行こっか」

未緒のその言葉で3人は立ち上がり、教室を出た。今日は放課後に駅前のドーナツ屋に行く約束をしていたのだ。
校門を出た時には、ポツポツと雨が降っていた。さっきまでの快晴の空は姿を隠して、空一面に雲が広がっていた。


少し走って駅前のドーナツ屋に着いた。

「はぁ~濡れた濡れた」

綾が犬のように頭をプルプルと振ったからツッコんでやろうかと思った。けど、走り疲れたのでその気にはなれなかった。

自動ドアを通り、店内に入った。正面からあまい匂いがした。

「2人は何食べる?」

「うちと綾ちんは、きなこのドーナツにするで」

2人がそうならと私も同じものにした。
会計を済ませて窓側の席に座った。通行人がよく見える。

「ねぇ、舞と未緒のドーナツ少しちょうだい」

「みんな同じのを買ったじゃん」

「人のをもらうからいいんだよ」

綾の言うことはよく分からない。けど、その不思議な感じが好きだ。

「分かった。じゃあ3人で交換しよ」

「おー、舞は分かってますな~」

同じものを交換したって何も変わらない。そう思うのが普通だ。けど、私達3人では同じものでも1つ1つ違うらしい。綾曰く。多分こんなノリが日常的にあるのは私達くらいだろう。

それから1時間程経った。外は暗くなっていた。まだ6時過ぎなのに...流石は冬だ。

「雨降ってるけど、どーする?」

「走って帰ったらいいじゃん」

「そんじゃあ、走ろっか」

私抜きで勝手に話が進んでいる。2人の会話のパスについていけなかった。走って帰ることに反対ではなかったから何も言わなかった。
テーブルの上を片付けて店を出た。

「結構降ってるね」

「関係ない!走るぞー」

そう言って走り出した。

「綾!ちょっとまっ.......」


空一面が白く光り、大きな音が響いた。目の前が真っ白になった。


「綾?」

状況が理解出来なかった。目の前に人型の黒いものが立っている。


「綾ちん、生きてるよね?」

綾と思われる黒いものがうしろに倒れた。

それから無の時が続いた。


その後、目が赤くなるまで泣いた。綾の件は、不慮の事故としてまとめられ、一件を終えた。

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