カースオブダンジョン~あなたと私の心中旅行~

蛇使い座のな~が

KILHAの秘密

こ……これって……!?




「桐橋先生だよ、あの人、私たちのいじめの現場を見てたんだ。」




「桐橋……先生……ッ!?」

「桐橋って、まさか、しのの言ってた……?」

なんで気づかなかったんだろう、KILHAさんは正しく、教育実習生として私たちの学校に侵入した、運営側の人物、『桐橋先生』と瓜二つだった。

「運営側のプレイヤーってことですの?」

「じゃあ、黒ギルドは運営を味方に引き入れようと? 」

「分からない……あいつらの狙いはなんだ……?」

それに、何故JHARIBANさんはKILHAさんを知っていたんだ? 桐橋先生だと何故気付けた? 

それをなぜまりちゃんに伝えようとしていたんだ……?

「ガンガンッ……!!」

「開けてくれ、まり、」

「は、はいっ!!?」

「……なんでKUMIさんが返事すんのさ…………」

焦って返事をした。急にKILHAさんの声を聞いてびっくりしてしまった。

「ただいま向かいます。ご主人様、」




私たちが謎を解いてしまったこと、悟られてはいけない、自分が運営側だと知っているプレイヤーに、何をするかは分からない……

「すまんな、お楽しみを邪魔してしまったようで、」

「いえ、大丈夫ですから、勝手に上がった私たちが悪いので……」

「まり、頼まれていたもの、買ってきたぞ、」

「頼まれていたもの?」

「はい、わたしは外に出ることは出来ないので、必要な道具をKILHAさんに買って貰っていました。」

「必要な道具?」

「脱出のために必要な道具です。ギャンブル施設には、VIPルームというお金持ちの人専用のギャンブルルームがあります。そこに、隠し通路があるということを風の噂で聞きました。」




「私みたいな人殺しはVIPになんてなれないよ。入る時は裏口を使ったり変装したりするんだ。」




ああ、殺し屋たちが使ってる裏口か……

「そこはかなり入り組んでいて、緊急脱出用に、外に繋がる通路も作ってあるんだそうです。
私はその通路のことは、あまりよく知りませんが、これがあればすぐに探し出すことが出来るはずです……」

まりちゃんはKILHAさんの持ってきた袋の中から、音叉のようなものを取り出した。

「空洞検知器です。これを壁に押し当てて、その先が空洞になっていると、僅かな空洞音を検知して振動するんです。」

「KILHAさんそんな道具を買ってきたんですか?」

「離れ街まで行って買ってきたよ、脱出に使うって言うから買ってやったんだ」

「まりちゃんが脱出するの、助けてあげたんですか?」

「まりが自分で考えた脱出方法なんだ。少しくらい手伝ってやってもいいだろう、なに、新しい手伝いが欲しけりゃ、新しいのを買ってくるまでだ。」

そういう……もんなのかな………?

「どうやってVIPルームまで侵入するの?」

「正面から突破します。人混みがあるので背の低い私はそこまで見られないと思います。」

「でも、空洞検知器を使う時間はどうやって稼ぐんだ?」

まりちゃんは袋の中からキレイなフリフリの着いた子供用ドレスを取り出した。

「この子供用ドレスで変装します。そしたらきっとセキュリティは、親に連れられた子供が迷い込んだと思って油断するから、そのすきに天井まで飛び上がって火災報知器の近くでタバコに火をつけます。」

サラッとすごいこと言ってんな、天井まで飛び上がるって、そんなこと出来るんだ。

「そうすればスプリンクラーが作動してお客さんはパニックになるだろうから、それに乗じて探し出します。」

すげぇ作戦だなぁ……

「壁の向こうの通路を見つけたとして、どうやって壁を壊すの?」

「格闘家なので、パンチで壊します。」

だ、大丈夫なのか……? この作戦……

確かにあの鉄の篭手で殴れば、薄い壁なら意外と壊せるかもしれないけど……

「まぁ、そういうことだ、こいつの脱出、見守ってやってくれ、」

「わ、分かった、成功を祈ってるよ、」

「作戦は今日の夜、人が1番集まる時間帯に決行します。」

「分かった、がんばってね、」

おもむろにKILHAさんが服を2着取り出す、高そうな淡い灰色のスーツと、同じく高そうな水色のドレスだった。

「せっかくだから、お前たちにも一芝居打ってもらおう、Tell、KUMI、行けるか?」

「…………え?」

急に振られて2人とも頭が真っ白になった、




VIPルーム前通路、私たちは作戦の準備をしていた。

「大丈夫だよ、似合ってるって、」

「だだだ、だって……このドレス結構胸元空いてて、恥ずかしいんですってば!」

周りの視線が気になる……変じゃないかな……? 怪しまれてないかな……?

「いいか、自然にしているんだ、あれこれ気にしている方が余計にバレやすい、設定では、俺たちは道を間違えた一般客、家族でゲームを楽しんでいる間にいつの間にか迷い込んだだけだ。
セキュリティに怪しまれるかもとか、そういうことを考えていると本当に怪しまれることになる。」

確かにそうなんだけど……自然体でいようとすればするほど、あれこれ気になって仕方が無くなる……

「ちょっとすいません、」

ついにセキュリティの人に呼び止められてしまった。ここから、演技スタートだ。

「皆さんはVIPメンバーではないようですが?」

「あ、あれ? ここ、VIPしか、は、入れ無いん、ですか……?」

「すいません、お恥ずかしながら……道に迷ってしまったようで、」

0点の私の演技をTellさんがカバーしてくれた。

「ここから先はVIPクラスの方しか入れないことになっています。」

「でしたら、一般客用の会場に案内していただけませんか? 先程から、私たちがどこにいるのか分からない状況でして……」

Tellさんはすごく自然に振舞っている。演技まで上手いなんて……

「では、一般客用のギャンブルルームにご案内しましょう、お子さんもご一緒に……」

「ビュンッ!!……ダッ!!」

「あっ!! ちょっとまり!! 入っちゃダメ!!」

どうだろうか? わんぱくな子供をたしなめる母親風の演技だが……?

「奥様、落ち着いてください、すぐに連れ戻しますので、」

『奥様』だそうだ、何とか成功したみたいである。内心はドキドキしっぱなしなのだけれど……

セキュリティスタッフが急ぎ足でまりちゃんを追いかけていく……

がんばってね、まりちゃん……!

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