カースオブダンジョン~あなたと私の心中旅行~
発見の日
「……うひゃあっ!?」
扉が開かれた瞬間、私は思いっきり叫び声を上げてしまった。
 
「ただのマネキンです。バラバラになってますけど、」
部屋には、胴体がバラバラになったマネキンが散乱していた。まりちゃんはそれらを組み立て、人の形に戻したあとで奥の人一人分が入れそうなスペースに置いた。
どうやらあそこが定位置らしい。
部屋の中は柔道や剣道の道場みたいな作りになっていた。意外と中は広く、ちょっとした稽古なら出来そうな場所だった。
「格闘家の話、でしたよね、」
「ああ、俺が敵対してる組織の中に、格闘家のプレイヤーがいたんだ。同じ格闘家なら、倒すためのヒントを教えてくれるかなと思って、話を聞かせてくれないかな?」
メイド服の似合う小さな少女、こんな姿で、ジョブは格闘家だと言うのが驚きである。
「Tellさんの出会った敵の格闘家というのは、どのような人でしたか?」 
「なんて言うか、イレギュラーな相手だったよ、普通の格闘家って、防具の篭手を武器代わりにしたり、クロー系の武器を装備したりするだろう?」
「はい、それが一般的ですね。」
「でもあいつは、武器も防具も、一切身につけていなかった。剣を相手に、素手で戦ってたんだよ。」
「なるほど……そんな話は私も聞いたことがありません。しかし、一般の格闘家と、戦い方は同じだと思います。懐に潜り込ませない、間合いを取って付かず離れず戦う……」
「なるほど……」
「他にも複雑な要素が必要なのですが、それを説明できる説明体系を持ち合わせていません。
何せ生まれてこの方、12年しか生きていないもので……」
12歳……小学6年生……普通の小6は「説明体系を持ち合わせていない」とか言わないんだよなぁ……
「なのでこればっかりは、戦って覚えるしかありません。1度、手合わせをしてみませんか?」
「いいけど、本気で行ってもいいの?」
「幼い子供だからといって容赦はいりません。本気で来てください」
前に来た時は構えを見せてくれただけで戦うことが出来なかったが、ついにその強さの、ヴェールがはがされる時が来たようだ。
「では、派手に参りましょうか」
まりちゃんは着ていたメイド服を素早く脱ぎ捨て、下に着ていた、カンフーの道着のようなものを露わにした
両腕には金属製の篭手、文字通り鉄拳である。あれで殴られたら一溜りもないだろう。
「フゥゥ…………」
まりちゃんはゆっくりと呼吸を整えると、最初にこの場所へ来た時に、見せてくれたのと同じ構えへと、ゆっくりと移行した。
それに答えるように、Tellさんも剣を構える。こちらもまた、相手に合わせるようにゆっくり低い姿勢を取った。
「はぁっ!!」
「ビュウンッ!!」
先にしかけたのはTellさん、剣の一振をまりちゃんはジャンプでかわす、
「やあっ!!」
「ガキンッ!!」
「ビュンッ!! ヒュンッ!! ガキンッ!!」
足払いにハイキック、多彩な足技を繰り出しつつ、Tellさんの剣は篭手に当てて防御する、
「じゃあ、この剣なら!!」
「ビュンッ!! カンッ!!」
クイックイクイップを剣を振る最中に行うと剣のスピードが急に変わるので、避けるタイミングが掴みづらい、
しかし、まりちゃんは既にそんなことは予測済みだった。Tellさんの剣がグラビティブレードより軽い、ブラックウィンドに変わったのを見越してジャンプし、ブラックウィンドの上に飛び乗ってみせた、
「クッ……!!」
「はっ!!」
またまりちゃんが飛び上がる、
「まだだ!!」
Tellさんはブラックウィンドを捨て、クイックイクイップでフラッシュレイピアに入れ替える、
その一突きを嫌ったのか、まりちゃんの攻撃は逸れ、そのまま、まりちゃんはTellさんの後方に着地した、
「……こ、これは!?」
Tellさんの頬に、三本の引っかき傷が見える……フラッシュレイピアの攻撃をまりちゃんがかわす一瞬、何かがTellさんの頬を掠めたのだ。
「どうでしたか? 格闘家と戦うことで何か学べましたか?」
「何……?」
「私はあなたの戦い方から、『クイックイクイップの使い方』を学びました。」
「……なるほど、ビーストクローか、装備していた篭手を『クロー系武器』と入れ替えた、だから掠っただけでもこれほどのダメージを与えることができたわけね、」
まりちゃんはただの格闘家では無かった、Tellさんと『同じスキル』を持ったプレイヤーだったわけだ。
この後も2人は稽古を続けた。練習試合とは思えない激しい打ち合いの後、勝負は引き分けとなった。
「このぐらいにしておきましょうか、」
「そうだな、何となく、分かった気がするよ、格闘家の戦い方って奴がね、」
2人の戦い方を見て、私も新しい発見があった。
格闘家は敵との距離が近ければ近いほど強さを発揮できること、
間合いを広げられても、一気に詰める技を持っているから、離れていても油断出来ないこと、
一つ一つの攻撃に注意すれば、必ず隙が生まれて、攻撃するチャンスが巡ってくることなどだ。
「落ち着いて敵の行動を見るのです。『相手を見ることのできるものこそが勝者となる』、私は師匠からそう学びました。」
「へぇ、強いお師匠さんだったんだね、」
格闘家か……まりちゃんを見ていると、格闘家というジョブが思ったより楽しそうに思えてくる。このゲームって転職のシステムあるのかな……?
「なんでまりちゃんは格闘家に? お師匠さんがそうだったから?」
「いえ、師匠は剣士だったので、格闘家のジョブは自分で選びました。わたし、どうやら剣を振るのは向いてないみたいで、
拳で殴る方が上手く戦えるかもって思ってやってみたら、意外と楽しかったので、これにしました。」
へぇ……そうか、人によって得手不得手はあるもんな、私たちは当たり前のように剣やダガーを使ってたけど、その人その人に合った、本当に相性の良い武器があるのかもしれない。
思えばギルドのメンバーにも、弓矢で戦うareaさんがいるし、黒ギルドには鎌を使う敵、AsBemがいる、そういう人は、真に自分に合う武器を見つけた人達なんだろう……
「ところでさ、まりちゃんの師匠ってなんて名前の人?」
「師匠の名前は……JHARIBANと言います。」
扉が開かれた瞬間、私は思いっきり叫び声を上げてしまった。
 
「ただのマネキンです。バラバラになってますけど、」
部屋には、胴体がバラバラになったマネキンが散乱していた。まりちゃんはそれらを組み立て、人の形に戻したあとで奥の人一人分が入れそうなスペースに置いた。
どうやらあそこが定位置らしい。
部屋の中は柔道や剣道の道場みたいな作りになっていた。意外と中は広く、ちょっとした稽古なら出来そうな場所だった。
「格闘家の話、でしたよね、」
「ああ、俺が敵対してる組織の中に、格闘家のプレイヤーがいたんだ。同じ格闘家なら、倒すためのヒントを教えてくれるかなと思って、話を聞かせてくれないかな?」
メイド服の似合う小さな少女、こんな姿で、ジョブは格闘家だと言うのが驚きである。
「Tellさんの出会った敵の格闘家というのは、どのような人でしたか?」 
「なんて言うか、イレギュラーな相手だったよ、普通の格闘家って、防具の篭手を武器代わりにしたり、クロー系の武器を装備したりするだろう?」
「はい、それが一般的ですね。」
「でもあいつは、武器も防具も、一切身につけていなかった。剣を相手に、素手で戦ってたんだよ。」
「なるほど……そんな話は私も聞いたことがありません。しかし、一般の格闘家と、戦い方は同じだと思います。懐に潜り込ませない、間合いを取って付かず離れず戦う……」
「なるほど……」
「他にも複雑な要素が必要なのですが、それを説明できる説明体系を持ち合わせていません。
何せ生まれてこの方、12年しか生きていないもので……」
12歳……小学6年生……普通の小6は「説明体系を持ち合わせていない」とか言わないんだよなぁ……
「なのでこればっかりは、戦って覚えるしかありません。1度、手合わせをしてみませんか?」
「いいけど、本気で行ってもいいの?」
「幼い子供だからといって容赦はいりません。本気で来てください」
前に来た時は構えを見せてくれただけで戦うことが出来なかったが、ついにその強さの、ヴェールがはがされる時が来たようだ。
「では、派手に参りましょうか」
まりちゃんは着ていたメイド服を素早く脱ぎ捨て、下に着ていた、カンフーの道着のようなものを露わにした
両腕には金属製の篭手、文字通り鉄拳である。あれで殴られたら一溜りもないだろう。
「フゥゥ…………」
まりちゃんはゆっくりと呼吸を整えると、最初にこの場所へ来た時に、見せてくれたのと同じ構えへと、ゆっくりと移行した。
それに答えるように、Tellさんも剣を構える。こちらもまた、相手に合わせるようにゆっくり低い姿勢を取った。
「はぁっ!!」
「ビュウンッ!!」
先にしかけたのはTellさん、剣の一振をまりちゃんはジャンプでかわす、
「やあっ!!」
「ガキンッ!!」
「ビュンッ!! ヒュンッ!! ガキンッ!!」
足払いにハイキック、多彩な足技を繰り出しつつ、Tellさんの剣は篭手に当てて防御する、
「じゃあ、この剣なら!!」
「ビュンッ!! カンッ!!」
クイックイクイップを剣を振る最中に行うと剣のスピードが急に変わるので、避けるタイミングが掴みづらい、
しかし、まりちゃんは既にそんなことは予測済みだった。Tellさんの剣がグラビティブレードより軽い、ブラックウィンドに変わったのを見越してジャンプし、ブラックウィンドの上に飛び乗ってみせた、
「クッ……!!」
「はっ!!」
またまりちゃんが飛び上がる、
「まだだ!!」
Tellさんはブラックウィンドを捨て、クイックイクイップでフラッシュレイピアに入れ替える、
その一突きを嫌ったのか、まりちゃんの攻撃は逸れ、そのまま、まりちゃんはTellさんの後方に着地した、
「……こ、これは!?」
Tellさんの頬に、三本の引っかき傷が見える……フラッシュレイピアの攻撃をまりちゃんがかわす一瞬、何かがTellさんの頬を掠めたのだ。
「どうでしたか? 格闘家と戦うことで何か学べましたか?」
「何……?」
「私はあなたの戦い方から、『クイックイクイップの使い方』を学びました。」
「……なるほど、ビーストクローか、装備していた篭手を『クロー系武器』と入れ替えた、だから掠っただけでもこれほどのダメージを与えることができたわけね、」
まりちゃんはただの格闘家では無かった、Tellさんと『同じスキル』を持ったプレイヤーだったわけだ。
この後も2人は稽古を続けた。練習試合とは思えない激しい打ち合いの後、勝負は引き分けとなった。
「このぐらいにしておきましょうか、」
「そうだな、何となく、分かった気がするよ、格闘家の戦い方って奴がね、」
2人の戦い方を見て、私も新しい発見があった。
格闘家は敵との距離が近ければ近いほど強さを発揮できること、
間合いを広げられても、一気に詰める技を持っているから、離れていても油断出来ないこと、
一つ一つの攻撃に注意すれば、必ず隙が生まれて、攻撃するチャンスが巡ってくることなどだ。
「落ち着いて敵の行動を見るのです。『相手を見ることのできるものこそが勝者となる』、私は師匠からそう学びました。」
「へぇ、強いお師匠さんだったんだね、」
格闘家か……まりちゃんを見ていると、格闘家というジョブが思ったより楽しそうに思えてくる。このゲームって転職のシステムあるのかな……?
「なんでまりちゃんは格闘家に? お師匠さんがそうだったから?」
「いえ、師匠は剣士だったので、格闘家のジョブは自分で選びました。わたし、どうやら剣を振るのは向いてないみたいで、
拳で殴る方が上手く戦えるかもって思ってやってみたら、意外と楽しかったので、これにしました。」
へぇ……そうか、人によって得手不得手はあるもんな、私たちは当たり前のように剣やダガーを使ってたけど、その人その人に合った、本当に相性の良い武器があるのかもしれない。
思えばギルドのメンバーにも、弓矢で戦うareaさんがいるし、黒ギルドには鎌を使う敵、AsBemがいる、そういう人は、真に自分に合う武器を見つけた人達なんだろう……
「ところでさ、まりちゃんの師匠ってなんて名前の人?」
「師匠の名前は……JHARIBANと言います。」
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