カースオブダンジョン~あなたと私の心中旅行~

蛇使い座のな~が

セキュリティとの攻防

3度目のカジノ内潜入、いや私としの以外はまだ2度目か、

私、しの、Tellさん、NARIELさん、そしてポンちゃん、Xekioに挑むなら、仲間は多い方がいいだろう。

「ここで、合ってるんですの?」

「ああ、ルシルの情報によると、ここがそうだ。」

Tellさんは再び、メールボックスを開き、ルシルさんからのメールを確認し直した。




「Xekioというプレイヤーなら、そのカジノ施設の役職付きスタッフだったはずだ。肩書きはセキュリティスタッフ長、会うためにはセキュリティルームの窓口まで行く必要があるが、そこまで大事な事案じゃなければXekioは出てこない。1番確実な方法は、セキュリティ問題を起こすことだ。どこかしらに無許可で侵入しようとすればいい」




「ナヴィエが事前に調べた『カジノ内部のプレイヤー調査』によると、この地下に不自然なプレイヤー集団があるらしい。それも両手で数えられるような数じゃない、数百人にも及ぶ。これは間違いなく地下で労働をさせられている奴隷たちだ。」

「じゃあここら辺でなにか怪しい動きをしていれば、」

「確かに、それでもいいかもしれない、でも確実にXekioを呼び込むためにはもっと一大事をやらかす必要がある。みんな、ちょっとこっち寄って、」

全員を1箇所に集めて、Tellさんはビジョンの強化版を放った。

「このまま床をすり抜けて行こう、」

ゆっくりと床に右手を着くと、手が床をすり抜けて行く感覚があった。このまま下へと降りていく……

「ここからみんな静かに、」

周りには作業服のようなものを着た老若男女様々な人物が、何一つ会話を交わすことなく黙々と作業を進めていた。なにかの部品を組み立てているようだ。

「ガガガガ……」

ベルトコンベアだろうか? レールの上に部品が乗せられ、動き続けている。

疲れきった顔をしている労働者たちの横を通り過ぎて、薄暗い通路を通っていく。

「バチバチッ!! ビカァッ!!」

「わっ!?……」

「静かに!……どうやら透明化した人物にも反応するみたいだね、」

現世でいう人感式センサーだろうか? よく見ると魔法石がカプセルの中に入った状態で、監視カメラのように通路に等間隔で設置されている。

あれに何かしらの魔法を封印して、このようなシステムを作り上げたのだろう。監視カメラみたいだし、こちらの監視もされているかもしれない

「ガガッ……」

「業務連絡、業務連絡、侵入者と思しき反応をキャッチ、付近のセキュリティスタッフは組み立て作業室付近の通路へと向かってください」

どうやら気づかれてしまったようだ。

「さて、これだけ大きな問題を起こしたら、Xekioにも来て貰えるかもしれない。」

「ダッダッダッ……」

大勢の足音が聞こえる。前か? 後ろ? いや、これは……

「動くな!! 侵入者に次ぐ、貴様らは既に包囲されている!!」

セキュリティの1人が怒りをぶつけるかのような激しい声で言った。

「やれやれ、さすがはカジノのセキュリティだ、侵入者の対策はバッチリってとこかな。」

Tellさんはこれに淡々と返した。さすがはTellさんだなこんな時でも常に肝が据わっている

「KUMIさん、ゼロリバースを、」

「はい、」

私はみんなに向かってゼロリバースを放った。抵抗する意思はないことを伝えるため、私たちは1度姿を現し、両手を上に挙げた。

「このような違反を起こしたんだ。君たちにはきつい処罰が下る、分かっているな!!」

威嚇するような大声、こちらを許してくれるような気配はない。

「総員!! こいつらを牢獄に連行しろ!!」

「まぁまぁ、今回は目をつぶってあげても良いじゃあないか……彼らは、私に会いたくて来ただけのようだから。」

セキュリティの群れの奥から現れたのは、例によって黒いタキシード風の衣装をまとった大男、Xekioだった。

「ゼ……Xekioスタッフ長!! 先程、お出かけなさったと聞いておりますが、どうしてここに!?」

「たまたまアナウンスが聞こえてね、処罰なら私が代わりに与えておこう。君たちはまたスタッフルームに戻っているといい、」

「はっ……承知致しました、総員!! 戻れ!!」

セキュリティたちは踵を返して、みなそれぞれの来た道を戻って行った

「さて、随分とおいたをしてくれたじゃないか、問題を起こさなければセキュリティ長は出ないだろうという算段かい?」

「ああそのつもりだよ、セキュリティ長のXekioさん、」

Tellさん、よくこんなムキムキ男に挑発をしかけられるよな……

「よし、話なら聞こう、別室に案内するよ、」




私たちが通された部屋は、小さな事務室だった。ふたつの長椅子の間に低いテーブルがあるだけの簡素なものである。

「どうぞ、座って、」

Xekioは紳士的な笑顔でそう促した

「ゼ……Xekioさんは座らないんですか……」

ダメだ私ビビってる……

「僕はいいよ、僕が座ったら壊れちゃうしね、」

確かにこんなちゃっちい椅子だったら、一つや二つ簡単にぶっ壊せるだろう。

「で、何の話をしに来たんだい?」

「お前の想像してる通りの話だよ、」

「そうか、取引、聞いてくれる気になったかい?」 

「いや、そのことなんだが、さすがに無関係の人間を巻き込みたくはない、出来れば違う条件を指定して欲しい、」

「ほう、確かにそれも一理あるな、」

意外と物分りいいなこの人、

「じゃあ君には別の提案をしよう、近々、本部に幽閉している人たちをこちらに移そうと思っている。人を隠しておくには本部よりも『カジノ内の支部』に移しておく方が、より安全だろうと考えてね、」

「カジノ内に、黒ギルドの支部が……?」

「だから、お父さんに会いたければいつでも合わせてあげることができるようになるんだよ、」

「親父に、面会させてもらえるのか?」

「ああ、だが、本当にお父さんを助けたいならば、最初の条件を飲むことだ、」

良かったね、Tellさん、これでもう一度、お父さんに会える……

なんだかんだ言ってお父さんに会わせてくれるなんて、Xekioってもしかしたらいい人なのかもしれない。

「だが、その面会にも一つだけ条件を設けてあるんだ。というのも、私も表向きはセキュリティスタッフなのでね、」

Xekioはおもむろに、壁の方へと歩きだし、両手を後ろに組んだ、

「地下施設への侵入という問題を起こした君たちに、処罰を下さなければならないんだよ。セキュリティの一員としてね、」

「ガチャン……グィィィィン……」

Xekioが壁につけられたレバーを引くと、小さな事務室だったはずの部屋の壁が動き出し、奥に隠された巨大なスペースが姿を現した。

そこはまるで、大きなスタジアムのようだった。

「ここで、軽く戦闘をしよう、私の攻撃に耐えれたら、君たちを逃がしてあげるし、Tellくんも、お父さんとの面会を許そう……」

前言撤回……全然いい人じゃない……

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