カースオブダンジョン~あなたと私の心中旅行~

蛇使い座のな~が

牢獄の中で

そうか……Tellさん……




「くたばってくれ!! 親父ィ!!」




お父さんに面と向かって、『くたばってくれ』なんて、言っちゃったから……

「俺が助けに行ったって、親父は喜ばないんじゃないかな……」

「そんなことないよ、助けに来てくれれば、誰に助けられたって嬉しいさ、」

「それが……『殺す』と言われた相手でもか……?」

「そ、それは……」

しのが何か言いかける前にTellさんが続けた。

「俺なんかに、親父を助ける資格なんてないよ。それに……そもそもあいつは、俺たちの仲間を消そうとした相手だ、助けちゃいけない」

「でも本当は助けたいんじゃないの?」

「そりゃそうだよ。親父なんだから……」

仮にも、自分をここまで育ててくれた肉親、いくら憎くても、裏切る訳にはいかないか……

「そもそもさ、KILHAってなんで黒ギルドにスカウトされてるの?」

「さぁ……?」

あまり関係の無い人を巻き込みたくはないが、なぜKILHAなのかはたしかに気になる。

「KILHAを仲間に入れる代わりに、俺の親父を返してくれるんだもんな、そこまでして引き入れたい重要人物ってこと?」

結局分からないことだらけだな。どうするのが正解なんだろう……

「Xekio……あいつに直接聞いてみるか、何が狙いなんだって……」

「分かった。昨日、Xekioと出会った場所まで案内するよ。」




ここ数日間、彼らの姿を見ていない。私はきっといつか死んでしまうだろう。

「飯だ、食え、」

時々監視員が食事を運んでくるが、それ以外に人の声を聞かない。

私の隣の部屋にも、何者かが閉じ込められている。だが私と彼との間には分厚い石の壁があり、話すことは出来ない。

「ギィィィ………」

彼はよく監視員の手によって別の場所に連れて行かれる。連れていかれた先で何が行われているか、私には分からない。

「知りてぇか? お隣さんがどんなやつか、」

冷やかしに来たのは例の男だった。今日も相変わらず、薄気味悪い笑みを浮かべてこちらを見ている。

例の男は、こちらが『知りたい』という前に、隣の男について語り始めた。

「あいつは、ここに連れてこられる前は鍛治職人でな、名前は確か……JHARIBANと言ったかな、」

「鍛治職人……?」

「ああ、腕の立つ鍛治職人だよ。いくつか剣を制作してもらう代わりに、生かしておいてやってるんだ。でもまぁ、もうちょいしたら用済みかな?」

「用済みになったら……どうなるんだ?」

「聞かなくても分かんだろ?」

彼もまた、私と同じ運命ということか……

「じゃあな、俺はまだまだ仕事があるんで」

そう言って男は去っていった。 再び静寂が空気を支配する。




また幾時間かたった。隣の部屋の男が戻ってきたようだ。

「ギィィィ……」

扉が軋む音がする。静寂の中に嫌に大きく響いている。

「ガリガリ……ガリガリ……」

壁を引っ掻くような音、隣の部屋の男が壁に何かしているのは分かるが、何をしているかは全く分からない。

「ガリガリ……ガコッ! カランコロンッ……」

壁の中のひとつの石が取り外され、小さな石の欠片がこちら側に落ちた……もしかして、隣の男、JHARIBANがやったのだろうか……

「スッ……パサッ……」

穴から1枚の紙が落ちてきた。恐らくJHARIBANがこちらに向けて書いた手紙だろう。彼は私に何を伝えようとしているのだろう……恐る恐る、折りたたまれた紙を開いてみる……




「ここで、例の黒ギルドの1人と?」

「うん、あそこの壁に寄りかかって立っていたんだけど、あれ以来、会わないね、Xekioに、」

Xekioはとても屈強そうな男だった。黒い衣装を見にまとい、紳士を気取っていた男だったが、なんせ黒ギルドの一員だ、性格も紳士的だとは限らない、

「仕方ない、1度隠れ家に戻ってみよう。」

私たちはそのまま暗殺者たちの隠れ家に戻った。




「よう、おかえり、会えたか? KILHAに、」

「会えたよ。とても黒ギルドに肩入れするような悪人には見えなかった。恐らく仲間に引き入れたい理由があるんだろう、それが何かは分からないけど、」

でも、KILHAさんJHARIBANさんの剣を持っていたんだよな……KILHAさんから見れば、彼らに剣を提供してもらった恩義があるわけだ。

しかもその剣も、Tellさんが折ってしまった。もう一度その剣を手に入れるためには、黒ギルドとコンタクトを取るしかない。

「で、結局あんたはどうする気なんだ?」

「分からない、関係の無い人は巻き込みたくないし、黒ギルドを手助けするようなこともしたくない。」

確かに、自分の友達であるRAYさんの、敵対勢力なわけだからな。

「それに、親父のことも、正直助けていいのか分からない。やつは俺の仲間を傷つけようとした男だ、許す訳にも行かない」

「じゃあ、取引には乗らないんだな?」

「でも……1度話してみたい気もある。親父に、なんであんなことをしたのか、どうしてそんなに考えが歪んだのか、聞きたいことは山ほどある。」

「なるほどな……」

複雑な心境だろう、実のお父さんが敵になってしまったのだから。

「だから……正直分かんない……自分でもどうしたらいいか……」

「お父さんに、お話を聞きたいんでしたよね?」

薬品ビンを片手に持ちながらPhoviaさんが出てきた。

「でしたら、捕まっているという敵のアジトに、そのまま乗り込んでみては?」

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