カースオブダンジョン~あなたと私の心中旅行~
疑念の中で
「なぜ、お前がそのことを知っている?」
「教えてくれた奴がいた、まぁ、誰とは言わないが、」
「どこまで聞いた?」
「『Tellという男が命を狙いに来るかもしれない』という事だけだ。」
命を……狙いに……
「具体的に言うと取り引きをしたいんだよ。内容はこうだ『シェルター内のある男の身柄と引き換えに、君のお父さんを解放する』」
確かに、命を狙われていると勘違いされてもおかしくない内容だ。
でもTellさんはまだ、この取引に乗ったわけじゃない、
「確かに、そんな話をされたが、俺はそんな取引に応じる気なんてない。ただ、その事について、どうも俺にはひっかかる点があるんだ。」
「『引っかかる点』だと?」
「ああ、シェルター内は閉鎖的で、外部との関わりをあまり持たない。そんなお前がどうして、『黒ギルド』なんていうこの世界とは関係の無い組織に、付け狙われているのかだ、」
「ほう、彼らは黒ギルドというのか……」
KILHAはゆっくりと椅子から立ち上がった。
「昔、野暮用で外の街に行く機会があってな、黒ギルドの人物とはそこで知り合った。」
「どうしたんだ? あんた、」
「ん? ……俺に言っているのか?」
「ああ、あんたから死相が見えてな、ついうっかり声をかけてしまった。」
やつは落ち着いた声をしていた。全身を真っ黒い鎧兜に包んでいたと思う。
「死相……?」
「ああ、今もはっきり見える。そうだなぁ……あんたには何か、戦うための武器が必要だなぁ……じゃないと死んじゃうよ、」
やつにそう言われて驚いた。その時の俺は闘技場で負け続きで、そろそろ殺されるかもしれないと思い、逃げるための策を講じていたところだったからだ。
「逃げようったって無駄だね。あんたは戦う運命にある。ほら、これをやるよ、」
「そんなやり取りが、出先の街で何度かあった。『気に食わない箇所があったら改造してやる』と言ってたんでな、何度もモンスター相手に使っては、より俺の使い易いように改造してもらった。」
腕のいい若き鍛冶師って、黒ギルドのメンバーの事だったんだ……
「そうして出来上がったのが、さっきあんたがブチ折った剣だよ。」
「そうだったんですか……」
「…………なぁ、その折れた剣、今持ってるか、」
「どうした、Tell?」
「確かめたいことがある。」
すると、KILHAは奥から例の剣の柄の部分を持ってきた。
「よく見せてくれ、」
KILHAの剣を見た途端、Tellさんは驚いたような顔をした。私だって驚いた。なんたってその剣の柄の部分には、
……『JHARIBAN』の名が、刻まれていたからだ。
「やっぱり……そうだったのか……」
「じゃあ、黒ギルドは、その時からKILHAのことを……」
「狙っていた……ってことですか?」
「だがまぁ、もうすぎた話だ。」
KILHAはまた、椅子に深く腰掛けた。
「どういうことだ?」
「俺は殴り合いでは戦わん。もう戦闘からは引退するしかない、なんせ剣が無いんでな。」
「そうなんですか?」
「ああ、これからは、まりに戦闘を任せる。」
えっ!? まりちゃんに!?
「こいつは元々戦闘の才能があってな、こんなちんちくりんな見た目だが、ジョブは格闘家だ。俺の苦手とする殴り合いでの肉弾戦を軽々とこなしてみせる。」
「で、できるの? まりちゃん……」
「できます。やってみますか?」
「ギロリ……」
まりちゃんは睨みをギロリと効かせ、重心を低くし、いかにも格闘家って感じの構えに一瞬で移行した。
「ううん、……やめとく」
「そうですか。」
びっくりした……あの無機質な目で睨まれたらさすがにビビる……
「そういうわけだ。黒ギルドとか言うその組織が俺を攫いに来たら、こいつに俺を守らせる。それに言っとくが、あんたのことも信用した訳じゃあない。日本刀の弱点を知ってるぐらいの強者だからな、敵に回ったら危険だ。念の為の対策を用意しておく」
「その方がいいだろう。」
結局KILHAさん、敵なのか、味方なのか、分からなかったな。
「もう話は終わりか?」
「ああ、俺達は帰らせてもらうよ。君たちに被害を与えるつもりは無いってことだけ、覚えててもらいたいかな。」
「信じよう、今はな、」
こうして私たちは、KILHAの隠れ家を後にした。
「やはり、彼は危険だな。」
「そうなんですか? Tellさん、」
話を聞く限りでは、そこまで黒ギルドと密接に関わっているわけではなさそうだったが……
「黒ギルドから、新しい剣を手渡された時に、そっち側に着く可能性が考えられる。」
そっか、JHARIBANさんも、あっちに囚われてるんだっけか、
じゃあいつでも黒ギルドはあの剣を複製して、KILHAさんに手渡すことが出来るわけだ。
「でも、本当にどうするの? Tell君のお父さん、 」
「…………」
「Tellさん……どうしたんですか?」
突然Tellさんは、地面を見つめたまま黙り込んでしまった。
「KILHAって人とさ、Tell君はなんの関係も無いんでしょ? だったら、取引に応じてもあまりデメリット無いんじゃないの?」
すごいこと言うな……しの……
「Tell君の中でどっちが強い? お父さんを助けたいのと、無関係な人を巻き込みたくないのだったら、」
少し考えてからTellさんはこう言った。
「助けたいよ、でも、俺あんな事言っちゃったから……」
「教えてくれた奴がいた、まぁ、誰とは言わないが、」
「どこまで聞いた?」
「『Tellという男が命を狙いに来るかもしれない』という事だけだ。」
命を……狙いに……
「具体的に言うと取り引きをしたいんだよ。内容はこうだ『シェルター内のある男の身柄と引き換えに、君のお父さんを解放する』」
確かに、命を狙われていると勘違いされてもおかしくない内容だ。
でもTellさんはまだ、この取引に乗ったわけじゃない、
「確かに、そんな話をされたが、俺はそんな取引に応じる気なんてない。ただ、その事について、どうも俺にはひっかかる点があるんだ。」
「『引っかかる点』だと?」
「ああ、シェルター内は閉鎖的で、外部との関わりをあまり持たない。そんなお前がどうして、『黒ギルド』なんていうこの世界とは関係の無い組織に、付け狙われているのかだ、」
「ほう、彼らは黒ギルドというのか……」
KILHAはゆっくりと椅子から立ち上がった。
「昔、野暮用で外の街に行く機会があってな、黒ギルドの人物とはそこで知り合った。」
「どうしたんだ? あんた、」
「ん? ……俺に言っているのか?」
「ああ、あんたから死相が見えてな、ついうっかり声をかけてしまった。」
やつは落ち着いた声をしていた。全身を真っ黒い鎧兜に包んでいたと思う。
「死相……?」
「ああ、今もはっきり見える。そうだなぁ……あんたには何か、戦うための武器が必要だなぁ……じゃないと死んじゃうよ、」
やつにそう言われて驚いた。その時の俺は闘技場で負け続きで、そろそろ殺されるかもしれないと思い、逃げるための策を講じていたところだったからだ。
「逃げようったって無駄だね。あんたは戦う運命にある。ほら、これをやるよ、」
「そんなやり取りが、出先の街で何度かあった。『気に食わない箇所があったら改造してやる』と言ってたんでな、何度もモンスター相手に使っては、より俺の使い易いように改造してもらった。」
腕のいい若き鍛冶師って、黒ギルドのメンバーの事だったんだ……
「そうして出来上がったのが、さっきあんたがブチ折った剣だよ。」
「そうだったんですか……」
「…………なぁ、その折れた剣、今持ってるか、」
「どうした、Tell?」
「確かめたいことがある。」
すると、KILHAは奥から例の剣の柄の部分を持ってきた。
「よく見せてくれ、」
KILHAの剣を見た途端、Tellさんは驚いたような顔をした。私だって驚いた。なんたってその剣の柄の部分には、
……『JHARIBAN』の名が、刻まれていたからだ。
「やっぱり……そうだったのか……」
「じゃあ、黒ギルドは、その時からKILHAのことを……」
「狙っていた……ってことですか?」
「だがまぁ、もうすぎた話だ。」
KILHAはまた、椅子に深く腰掛けた。
「どういうことだ?」
「俺は殴り合いでは戦わん。もう戦闘からは引退するしかない、なんせ剣が無いんでな。」
「そうなんですか?」
「ああ、これからは、まりに戦闘を任せる。」
えっ!? まりちゃんに!?
「こいつは元々戦闘の才能があってな、こんなちんちくりんな見た目だが、ジョブは格闘家だ。俺の苦手とする殴り合いでの肉弾戦を軽々とこなしてみせる。」
「で、できるの? まりちゃん……」
「できます。やってみますか?」
「ギロリ……」
まりちゃんは睨みをギロリと効かせ、重心を低くし、いかにも格闘家って感じの構えに一瞬で移行した。
「ううん、……やめとく」
「そうですか。」
びっくりした……あの無機質な目で睨まれたらさすがにビビる……
「そういうわけだ。黒ギルドとか言うその組織が俺を攫いに来たら、こいつに俺を守らせる。それに言っとくが、あんたのことも信用した訳じゃあない。日本刀の弱点を知ってるぐらいの強者だからな、敵に回ったら危険だ。念の為の対策を用意しておく」
「その方がいいだろう。」
結局KILHAさん、敵なのか、味方なのか、分からなかったな。
「もう話は終わりか?」
「ああ、俺達は帰らせてもらうよ。君たちに被害を与えるつもりは無いってことだけ、覚えててもらいたいかな。」
「信じよう、今はな、」
こうして私たちは、KILHAの隠れ家を後にした。
「やはり、彼は危険だな。」
「そうなんですか? Tellさん、」
話を聞く限りでは、そこまで黒ギルドと密接に関わっているわけではなさそうだったが……
「黒ギルドから、新しい剣を手渡された時に、そっち側に着く可能性が考えられる。」
そっか、JHARIBANさんも、あっちに囚われてるんだっけか、
じゃあいつでも黒ギルドはあの剣を複製して、KILHAさんに手渡すことが出来るわけだ。
「でも、本当にどうするの? Tell君のお父さん、 」
「…………」
「Tellさん……どうしたんですか?」
突然Tellさんは、地面を見つめたまま黙り込んでしまった。
「KILHAって人とさ、Tell君はなんの関係も無いんでしょ? だったら、取引に応じてもあまりデメリット無いんじゃないの?」
すごいこと言うな……しの……
「Tell君の中でどっちが強い? お父さんを助けたいのと、無関係な人を巻き込みたくないのだったら、」
少し考えてからTellさんはこう言った。
「助けたいよ、でも、俺あんな事言っちゃったから……」
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