カースオブダンジョン~あなたと私の心中旅行~

蛇使い座のな~が

最後の手段

「はぁっ!!」

「キンッ!!カンッ!!キンッ!!」

重厚な甲冑を身につけてもなお、この素早さ、明らかな力の差を感じた。

それでもなお、私が攻撃を辞めなかったのは、どうしてもあの人を守りたかったからだ。

「キーーン!!!」

たまらず少し距離をとる、

「気をつけろよ……やつの甲冑、『呪いの装備』だ」

「呪い……?」

「通常の装備ではありえないほどの性能を持つ、その代わり、1度装備すれば二度と外れない……」

「キーン!!カーン!!」

確かに、このスピードと、防御力、何か特殊な力が働いてなきゃ出せない性能だ。それがこの、『呪いの装備』の力なのだろう……

このままじゃあ、埒が明かない……そうだ、




「呪いの装備は同じ呪われた装備でしか壊せない」




そんなことをネームレスは言っていた、そして、




「アンデッド系統やアストラル系統のモンスターにダメージを多く与えられる、その上基本性能もかなり高いな、しかし……」

「この剣、呪われてる、1度装備したら装備を外せないんだ。」

「じゃあ、それまでは装備しないでストレージに閉まっておきましょう、」




持ってる、同じ呪われた装備を、私は自分のアイテムストレージを漁り、『ソウルスラッシャー』という剣を見つけた。

『この装備品を装備すると呪われます。それでも装備しますか?』

『ソウルスラッシャー』

「適正レベル:28」

私は意を決して、その武器を装備した。

「よし、……これなら、いける!!」

呪いを持って、呪いを制す、不思議と今の私なら、あいつを倒せるような気がしていた。

「やぁっ!!」

「キーン!!カーン!!」

「グッ……!!」

私の体は、まるで私じゃない何かが乗り移ったかのように、恐ろしいほどの速さで動いた。

呪いの装備とはこうも恐ろしいものだったのか、しかし、臆している暇などない、目の前の敵を倒すことだけに集中しよう!




「alpha、それは本当なのか……?」

「ああ、KUMIは確実に、『呪いに蝕まれている』……!!」

「そうか……KUMIにもう、戦いをやめることを、説得するんだ、これ以上戦えばKUMIは破滅してしまう……GENNのように……」

「わかった……」




「KUMI、もうやめるんだ!!」

どれほど戦い続けただろうか、GENNの体にも、少しずつダメージを与えることに成功している。これも、『この呪いの剣』のおかげだろう、

「攻撃を止めろ!!」

なぜ止める必要があるのだろう……この武器のおかげで、GENNを追いつめられていると言うのに……

「このままでは、剣の呪いに潰されるぞ!!」

潰れたって構わない……彼を倒して、Tellさんさえ助けられれば、他に何も……

「はぁっ!!」

GENNの攻撃が来る……

「クローショット!!」

「ギュウウウン!!!」

私の体に、鎖が巻きついた、そのまま私は、闇の中へと引きずり込まれていった。

「逃げるよ、KUMIさん!!」

その先にいたのはTellさんだった、Tellさんは私を抱えたまま、クローショットを使い、木々の間をすり抜けていった。




「……どうやらやつを撒いたみたいだね……」

もう少しで……倒せたというのに………

「KUMIさん、落ち着いて聞いて欲しい……君は今、最悪な状態に陥っている、戦いを続ければ続けるほど、人格が壊れていき……最後にはあのGENNのように、目的のためなら手段を選ばない歪んだ人物になってしまう。」

「そう……なんですか……?」

「それが呪いの武器の力だ……」

でも、これがなければあいつには勝てなかった……実力の差は歴然だった。

「私はあいつを倒すしかないんです。あなたを守るためには……」

「ダメだ!!!」

「……!!」

Tellさんがそんなに怒るところ……初めて見た……

「とにかく、君を本部まで連れて帰る、そこでしっかり休んでくれ……」

そんな……あと少しで倒せそうだったのに……

「なぁ、一旦落ち着けよ……きっと別な方法があるって……」

「別な……方法……?」

「KUMIさんが危険にならない方法だよ、確か呪われた武器なら、同じ呪われた武器に打ち勝てるかもしれない、でもそれは、とてもハイリスクな方法だ、良い作戦とは言えない」

「は、はい……」

「そういう作戦は、『最後の手段』にとって置くものだ、だろ?」

確かに、そうだったかもしれない……あの時の私は冷静じゃなかった。




潰れたって構わない……彼を倒して、Tellさんさえ助けられれば、他に何も……




いや、今ならあの考えは間違ってると言える。Tellさんだけ助けても意味が無い……だって私たちは、『心中』を約束した2人だ……どちらかが助かるだけじゃダメ、2人が助かる方法を探さないと……

「ジジジ……ピーピーピー……」

「こちらアミカ!! みんな大変なの!!」

アミカさんからの着信、本部の通信機からのようだ。

「ネームレスがいつの間にか居なくなってた!!」

「な、なんだって!?」

『ジジジ……ガーガーガー……』

通信機の反応……私たちに渡された8機の通信機のどれとも異なる、9機目の通信機から発信されたものだった。

「ごめんねみんな、状況が変わったんだ。」

「ネームレス!? お前今どこにいるんだ!!」

チームのみんなの困惑した声が聞こえる。

「どこだっていいでしょ、そんなことより、KUMIさんが大変なの、呪いの装備を使ってしまったことは、alphaの通信でみんな知ってるよね?」

「そうなんですか?」

「ああ、君をここまで助けに来れたのは、alphaによる連絡があったからなんだ。」

そうだったんだ、alphaさんにも感謝しなくちゃ、

「一刻を争う緊急事態なの、RAYくんには悪いけど……」

ネームレスは、これまでの掴みどころのない話しぶりから、急に真剣な声遣いになってこう言った。

「ここからは私が指揮を執る、総員、KUMIを守れ」

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