カースオブダンジョン~あなたと私の心中旅行~

蛇使い座のな~が

このゲームを最後まで

ついに、作戦が始まった。

「ジジジ……ピーピーピー……」

「KUMIさん、 聞こえるか?」

「はい、聞こえてます!」

「よし、全員繋がってるな、チームB、なにか怪しげな船は見られるか?」

「ポンちゃんの映像には、それらしきものは写っていませんわ、」

おかしいな……そろそろ夜になるぞ……? GENNも夜戦を狙っているのか? GENNは暗殺者って訳じゃないから、夜戦も得意ではないはずなのに……

 「いや、いましたわ! 今度は大きな船が一隻……」

「大きな船が!?」

「ええ、あまり良くは見えないですけれど、なんだか……大きさの割にボロっちい船ですわ、」

ボロっちい船か……

「もうすぐ、こちらに来るみたいですわ……かなりスピードはゆっくりみたい……なんだか、幽霊船みたいで気味が悪いですわね……」

幽霊船のような船? なんでわざわざそんなものに乗ってここまで来るのだろうか……?

「ん、あれ? 例の幽霊船が、途中で止まりましたわ……海上に留まっているみたいですわ……」

なんで急に止まったんだ……? 

「ジジジ……ピーピーピー」

「こちらalpha! GENNと思われるプレイヤーを発見!!」

「何だと!?」

そ、そんな!? 船はまだ島に着いていないのに!?

「既に上陸していたということか……alpha! まだこちらの存在には気付かれていないのか?」

「いや、気づかれてる! 俺の後を追ってきている!!」

じゃあ今、alphaさんはGENNから逃走しているのか……

「マップ上の位置はここか、今どんな状況だ?」

「今やつから逃げながらRAYのいる方角に向かっている! クソっ!こんな重装備の癖して、なんて速さだ!!」

「総員!! 俺のいる方角に集まれ!! alpha!何とかここまで逃げ延びてくれ!」

どうする? 私はどうするのが正解だ? 加勢した方がいいのか?

いや、私がチームAならそうすべきだ、でも私はAでもBでもないリベロ……

alphaさんの援軍はほかのメンバーに任せて、私はいつでも攻撃できるように、付かず離れずの位置で……

「急がなきゃ!」

私は急いで、alphaさんの方に向かった。alphaさんがGENNに追われているなら、私もalphaさんを追いかければGENNの背後を取れるはず、

そこから、付かず離れずの位置で、追い続ける、そうすればいざと言う時でも助けに行ける!

「お願い……成功して、 私の作戦……!!」




「KUMIさん……大丈夫かな……」

口をついて出てきたのは、『リベロ』という大役を任された相棒への、心配の言葉だった。

「大丈夫だよ! KUMIちゃんの居場所は、
このマップにちゃんと写ってるし、連絡用のトランシーバーだってあるでしょ?」

「それは……そうだけど……」

「それに、あのギルドのリーダーは、あんたの親友なんでしょ? 親友の采配を疑うつもり?」

「……ああ、そうだな、信じることにしよう。」

地図を確認してみると、KUMIさんは、alphaさんの方に近付いているみたいだった。

君がどんな選択を取ってalphaに近づいたのかは分からない。でも、賢い君のことだ、君の選んだその道は、きっと正解の道なのだろう……




ようやくだ、あと少しで追い付ける……

「キーーン!!!」

2人が交戦しているのを視認できる位置で、私は近くの木に身を隠した。

「カンッ!! カンッ!!」

GENNの甲冑は硬く、alphaさんの攻撃を受けてもダメージはないようだ、

「ゴォォォ!!」

炎属性魔法でも、ダメージを受けている様子はない。

「チッ!!」

またalphaさんは距離を取る……GENNもそれに答えるように近づいてくる。alphaさんはこの状態のまま、ここまで逃げ延びたのか……?

ふと、私が様子を伺うと、alphaさんと目があった、

こちらの存在に気づいてくれたみたいだ。

「おい!! まだ着かねぇのか!?」

「すまん!! もう少し待っていてくれ!! 」

焦るような素振り……私が既にここまで来ていていることを、相手に悟られない様にしてくれているのだろう……

「GENN、てめぇなんだよな……? 俺たちを殺そうとして、ネームレスに依頼したのは……」

「……… 」

「だんまりばっかりで、口を開いたらどうなんだよ!!」

しばらく沈黙があってから、GENNは酷く嗄れた声で言った。

「……貴様に言うことなど何も無い……お前たちはここで死ぬだけだ……」

「…………何故だ? なんのために俺たちを殺そうとするんだ?」

「Tellのためだ……全てはTellのため……あいつに死んでもらうために……貴様らも死ぬ……」

「どういうことだ……? じゃあ何故『Tellの殺し』だけ依頼をしなかったんだ……?」

「…………『他殺』じゃ……意味が無いからだ」

『他殺』じゃ、意味が無い……? どういう意味なんだ?

Tellさんには死んで欲しいけど、あくまで自殺で死んでもらいたいだけであって、殺したくはないってことか……?

「お前たちはみなここで殺される……最初は貴様だ……そして2番目は……」

GENNがゆっくりと後ろを振り返った。

「KUMI、貴様だ……」

『成功して』という願いは、どうやら届かなかったみたいだ。私の作戦は実行にも移せぬまま失敗、すぐに私の存在がGENNにバレてしまった。

しかし、背に腹は変えられない……どうせバレているのなら!!

「なっ!? 待て!! KUMI!!」

私は勇気を出して1歩踏み出し、GENNの前に姿を現した。

「あなたには……誰も殺させません!」

GENNが何を考えてるのかなんて、私には分からないけど、もし本当に、Tellさん以外誰もいなくなっちゃったら、Tellさんは絶望して、自殺をしてしまうだろう。

あの人は、『最後までこのゲームを遊び尽くす』と言っていたんだ。だからあの人には、楽しく遊び尽くしたあとで死んで欲しい……

絶望にくれたまま死んで欲しくなんてない!!

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